top of page

16/5/2

アニメが人を変えることもあるかもしれないという話。

Image by Olia Gozha

去年の今頃の話になります。僕は挫折してうちのめされていました。


そこからなんやなんや1年間、一歩一歩を踏み出して、挫折からは完全に立ち直りました。


振り返るといろいろな要因があって、その一つ一つに感謝をしたいのですが、ふと、立ち直るきっかけのひとつに、あるアニメがあったことを思い出しました。


普段なら、なんとなく流す話ではあるのですが、「何がきっかけになるか、わからない。」という教訓?も込めて、この話を書くことにしました。


少し長いですが、どうぞお付き合いくださいませ。




去年の3月、僕は失業しました。


とある携帯会社の販売員をやっていたのですが、その毎日は苦痛でした。


数字に追われる毎日の中、結果が出せないのでパワハラ上司に何も言えず、「せいいっぱいやる」以外は何も出来ず、その「せいいっぱい」ではなんの結果も出ず、状況を打開する策など何もない状況です。


それでも、頑張れば報われる筈・・・と考えて、がむしゃらでした。いつかきっと結果はついてくる筈、と。無策に突っ走ることで、何か変わると思っていました。


その時僕は、「コーチングコーチ」になるのが夢で、2015年の初めには、毎月、コーチになる資格になるためのクラスを受けに行き、毎日、隙間時間があれば、すべてをコーチングの練習に費やしました。


「あなたがあなたのヒーローになる」とキャッチコピーを掲げたコーチ志望の携帯販売員は、自分が自分自身のヒーローにすらなれていないことにも気付かずに、ただひたすら、脇目も振らずに突っ走っていました。


赤信号は、きっとたくさんありました。でも、全部無視して走りました。結果、大事故を起こすことになります。業界では絶対タブーとなっておるヒューマンエラーを起こして、出入りしていた店舗から出禁を食らうことになったのです。


コーチングどころじゃなくなり、その時約束していたコーチング練習のお願いは、全部キャンセルしました。余裕もなく、何十件もの約束をただひたすら断るのに、恐らく不快な思いをさせてしまった人もいるかもしれません。


「これからだったのに・・・。」そう思うと悔しくてたまらなかったのですが、それどころではありません。


まずは、自分自身を立て直さなければ。立ち直して、コーチングの勉強はすぐ再開するつもりでしたが、思ったよりショックは大きかったのか、立て直すどころか、立ち直ることすら出来ていない自分がそこにいました。



そこから立ち直るために、僕は「深夜勤のアルバイトをする」という選択をしました。


何年前か、僕はある牛丼チェーンで深夜勤のアルバイトをしていて、慣れ親しんだ職種なので、さしあたって失敗のショックを癒やすには、最適な場所である確信があったのです。


「いつまでも、フリーターではいられない」と、その牛丼チェーンを飛び出して社会に出て行ったのに、またそこに逆戻り・・・というのは悔しくもありましたが、さしあたっては、「ベテランで、仕事ができて、重用される」という立場は、狙い通り、僕の心を癒やしてくれました。



1ヶ月も経てば、日常生活を送るのに、挫折の痛みに苦しめられることはなくなりました。しかし、その日暮らしの毎日を送るだけで、前に進むことを考えるとパニック発作を起す・・・ということが続きました。


身の回りに仲間も友人も一人もいない状態。いないと言ったら嘘になります。その時、助けを求めていれば、手を差し伸べてくれる人はきっといたはずです。実際、僕が立ち直ったのは、仲間の力が大きいのです。しかし、その時の僕にとっては、助けを求められる相手など周りにおらず、僕は孤独でした。


その時、心の拠り所はアニメだけ。仕事はもちろん一生懸命でしたが、仕事時間外の殆どをアニメに費やしており、それはそれ楽しいのですが、何も変化も進歩もない、無味乾燥な毎日を過ごしました。


ちょうどその頃放映を開始したのが、「響けユーフォニアム」です。


「涼宮ハルヒの憂鬱」をヒットさせた京都アニメーションによるアニメ化で、毎度毎度賛否両論はあるものの、アニメオタクであれば、京アニ作品は、見ないわけにはいかないもののひとつです。(あえて見ないという人もきっといるけれど。)


端的に言うと、落ちぶれた吹奏楽部が全国1位を目指す・・・といった物語で、高校生たちが、時にぶつかり、時に認めあいながら切磋琢磨していくという、王道的な内容です。


青春真っ盛りのその姿は、眩しくもあり、アニメを観て感動しながらも、僕は心を抉られていました。


アニメ自体は面白かった。でも、辛かったのです。


面白いので見る。見るけど、前へ進むことにから逃げ続けている自分を直視してしまい、心を抉られる。


「楽しければいい」という部員と、「真剣に吹奏楽をやりたい」という部員が対立するシーンがあるのですが、そのシーンを見て、真剣な方の部員に共感する自分、そして、共感しながらも、そういった真剣さから逃げている自分、そんな自己矛盾に、心はかき乱されました。


吹奏楽ではないですが、自身も音楽をやっていた経験があるので、楽器の楽しさは、そういった真剣さの先にしかないことを、知っていました。


逃げた先がアニメだった筈が、結局前に進むしかないことを、アニメから、思い知らされた。というわけです。


結局、「僕は何をやってるんだろう?」という想いは日に日に強くなり、逃げることを辞めた・・・というまではいかないまでも、一歩一歩、少しずつ、前に進み出しました。時に、勇気を振るったこともありました。


それから、なんやかんやいろいろあり、今では前向きな気持ちも取り戻し、夢も希望も持ち、仲間に恵まれ、婚約者もいます。


「あの時このアニメを見てなかったら・・・。」とまでは言いません。


アニメを見ていて湧いてきた気持ちは、自分の元々ある本音を、体現していただけに、過ぎない可能性もあります。


しかし、僕は去年、挫折したタイミングで響けユーフォニアムを観て、触発されて一歩を踏み出した、それは紛れもない事実です。


今の僕は逃げていませんが、今も僕はアニメを観ます。当時のような敗北感はもうないため、今、観ているアニメに触発されて何かが変わるということは、きっとないでしょう。


ですが、アニメ・・・アニメだけではなく、正直なんでもいいのですが。


フィクションの物語に触発されて奮起したり、何かが救われる・・・ということもあるのだということ。


そのことに、何かを感じる人が一人でもいたら、と思い、このエピソードを綴ってみました。

←前の物語
つづきの物語→

PODCAST

​あなたも物語を
話してみませんか?

Image by Jukka Aalho

高校進学を言葉がさっぱりわからない国でしてみたら思ってたよりも遥かに波乱万丈な3年間になった話【その0:プロローグ】

2009年末、当時中学3年生。受験シーズンも真っ只中に差し掛かったというとき、私は父の母国であるスペインに旅立つことを決意しました。理由は語...

paperboy&co.創業記 VOL.1: ペパボ創業からバイアウトまで

12年前、22歳の時に福岡の片田舎で、ペパボことpaperboy&co.を立ち上げた。その時は別に会社を大きくしたいとか全く考えてな...

社長が逮捕されて上場廃止になっても会社はつぶれず、意志は継続するという話(1)

※諸説、色々あると思いますが、1平社員の目から見たお話として御覧ください。(2014/8/20 宝島社より書籍化されました!ありがとうござい...

【バカヤン】もし元とび職の不良が世界の名門大学に入学したら・・・こうなった。カルフォルニア大学バークレー校、通称UCバークレーでの「ぼくのやったこと」

初めて警察に捕まったのは13歳の時だった。神奈川県川崎市の宮前警察署に連行され、やたら長い調書をとった。「朝起きたところから捕まるまでの過程...

ハイスクール・ドロップアウト・トラベリング 高校さぼって旅にでた。

旅、前日なんでもない日常のなんでもないある日。寝る前、明日の朝に旅立つことを決めた。高校2年生の梅雨の季節。明日、突然いなくなる。親も先生も...

急に旦那が死ぬことになった!その時の私の心情と行動のまとめ1(発生事実・前編)

暗い話ですいません。最初に謝っておきます。暗い話です。嫌な話です。ですが死は誰にでも訪れ、それはどのタイミングでやってくるのかわかりません。...

bottom of page