ある日の、理系女子との会話(1)
「先生、私の同級生でアレやりまくっている人いるけど、どう思います?」
「なんで、私にそんなことを聞くの?」
「だって、学校の先生は恥ずかしがっているのか知らないけど、適当な返事する」
「聞く人まちがってるよ。私はバツイチって知ってるでしょ?」
「いや、先生はウソを言わないから」
「私は微積分は得意でも、男女関係は不得意だって」
「じゃ、この数列だけど、係数が数字じゃなくて文字だとどうなるの?」
「あぁ、漸化式ね。それ、入試によく出る。それは、両辺にnをかけてみ」
「ちょっと、待って。やってみる」
「でさ、先生。尿道と産道と肛門って、近いじゃん。やると感染とか大丈夫なのかな?」
「医学部志望なら、話しても大丈夫だろうけど、こんな会話人に聞かせられないよ」
「大丈夫、私には普通トークだから」
「で、こっちの確率と数列の絡んだ問題は大丈夫なん?」
「あ、これ?これは、等比数列に持ち込めばいいヤツでしょ?」
「分かってるね」
「そりゃ、この間の模試で校内7番だったし」
「え?それって、京大大丈夫かもってことじゃん」
「そう?頑張る!」
「じゃ、集中していこ」
「先生、このあいだ告られた」
「またか」
「冗談じゃないよね」
「ちょっと、そんな断り方をしたら刺されるよ・・・」
「そうなんですか。めんどうくさいし」
「アカン。ちょっと、この英作文書いてみ」
「えー?これ、京大の過去問じゃん」
「キミなら、できる」
「書くからさ、先生はなんで、そんなに女嫌いなの?」
「書いたら教える」
「はい、コレ。で?」
「淋しさより、自由を選んだからかな」
「ふーん・・・」
「会った相手が悪かったとは、思わんの?」
「ほっといて」
「これ、いいけどココ三単現の S」
「あっ、マズイ」
「そうなん。京大医学部合格した子でも、そんなミスするけどね」
「安心します」
「これで、京大受かるでしょうかね?」
「ボクの見るところ、数学は大丈夫だけど、英語はイマイチ危ないかな」
「英語って、先生はどうされたのですか?」
「考えられることは全て。持てる時間とお金は全て。そんな感じ」
「うーん・・・・」
「先生は、高校時代の思い出とかある?」
「そりゃ、あるさ。勉強、勉強の」
「やっぱり」
「何がやっぱりだよ」
「私、もしかしたら先生と同類かも」
「前から、そう思ってた」
「でも、そういう姿勢って、研究者としては大成する素質あると思うよ」
「そうですか?」
「女子度はゼロだけど」
「ひどいです。私は女らしいでしょ?」
「それは、ない」
「褒めているんだよ」
「そうですか」
「確かに、生物は興味ある」
「生物と無生物の境界さえハッキリしていないからね」
「原子が勝手に動いてラセン階段を作るって、説明になってない」
「なんの力も加わらないのに、動くはずがない」
「だとすると、どこからその力が?」
「研究すれば?」
「面白そう!まず、大学合格しないと」
「そうだよ」
「でも、倒れないようにね」
「ありがとうございます。でも、大丈夫です」
「みんな彼氏がどうしたとか言ってるけど、私はあまり興味が持てません」
「それは、それで問題だけどね」
「でも、先生、多くの流行歌が愛たら恋たら、おかしいでしょ」
「私もそう思うけど」
「遺伝子が子孫を残せって言ってるだけじゃん」
「ちょっと、それを言ったらお終いでしょ」
「そうなんですけどね」
「踊る阿呆に、見る阿呆だよ」
「男子って、条件反射なんですか?」
「そんな簡単じゃないよ」
「でも、彼氏が何の反応もしなかったら、ショックでしょ」
「でも、毛の処理とかめんどうだからなぁ」
「はい、もうやめようね」
「先生、立体に垂線をおろす条件なんだっけ?」
「それは、二つの内積・・・」
「あ、ちょっと待って」
「さすがに賢いねぇ」
「できた。じゃ、ここ見て下さい。何が間違いでしょうか」
「あぁ、これは置き換えした時の積分範囲の変化を忘れてる。らしくない」
「もったいないなぁ」
「なにが?」
「黙っていればベッピンサンなのに」
「そうなんですか?」
「これから、お年頃なんだからフリフリの服着てさ」
「それ、ムリ」
「なんで?」
「他人と同居するなんて、想像できない」
「先生もそうだけど、いろいろあったからね。キミはこれからだよ」
「物理の世界の壮大さに比べたら、人間関係なんかどうでもいいし」
「こりゃ、ダメだ」