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16/4/9

ハゲ頭おじさんの、受験票

Image by Olia Gozha

ハゲ頭おじさんの、受験票

 

 私の亡き父は、大正生まれの戦中派で頑固者だった。それで、よく衝突したが、子供を大切にしたことは認めないわけにはいかない。

 

小さい頃は、だれでも世界は単純にみえる。子供が笑うと親が喜び、テストで良い点数をとると、また喜んでくれる。私が棒術やヌンチャク技を見せると、小さな子どもたちは単純に「カッコイイ!」と喜んでくれる。(https://youtu.be/QhLnsIohW5s)                    

私の塾生の1人が、AKBを見てつぶやいた。                     「先生、あの子たち大丈夫ですかね。一番学べる時期に踊ってばかりいて」    

大丈夫なわけがない。芸能人の晩年は、たいてい悲惨だ。大人になると、子供のように「カッコイイ!」だけでは、済まない。

 

中学校くらいになると、先生方は「クラブと勉強の両立だ」と生徒をけしかける。単純に信じると、クラブも勉強も中途半端になって、卒業後に、派遣かブリーターになって老後が大変なことになる。                                     女子は                                              

「月給30万円は欲しい」

と言う。正社員で、初任給がそんなに恵まれる子はどれだけいるのだろう。名前を言って分かるような会社に就職しているのは、どれくらいいるのだろう。          自分を待っている未来が、結婚もできないし、生活も厳しいと分かっていても、勉強そっちのけでテニスや野球に興じるだろうか。                       

私は思うのだ。                                     

「あの子たち大丈夫ですかね。一番学べる時期にテニスばかりしていて」。

 

AKBとクラブのどこが違うのだろう。

「クラブ活動は、人格形成に必要だ。おまえは、何を言っているのだ!」

  と言われる人が、時々みえる。

でも、アメリカの中学校で指導していた私は思う。

「クラブのないアメリカの生徒は、みんな人格崩壊なの?」。

人格形成に、クラブ活動はまったく関係がない。

 

破産寸前までいき、銀行に頭を下げまくった人でないとお金の有難さは分からない。

「お金がすべてではない」

 と言う人は、借金地獄で地面を這いずり回ったことがないから、そんな能天気なことが言える。 

 受験勉強も

「勉強が全てではない」

 と言う人は、病院送りになるまで真剣に受験に向き合ったことがないことがないから、そんな甘いことが言える。

 そういう甘い人は、受験の場に入ってこない方がいい。

「テニスに忙しくて勉強する時間がありませんでした」

 と、言ったら、「くだらぬ言い訳」とぶった斬られて終わりだ。

そんな学生が欲しい一流校はないし、そんな人を雇いたい会社は、ない。

 

  若者のテレビ離れが進んでいる。不倫、麻薬、賭博などに溺れたアスリートや芸能人をすぐに復帰させて金儲けをさせる。それを面白がって企画するテレビマン。

ある理系女子が、涙の賭博謝罪会見を見ていて、言った。

「先生、運動ばっかりやってると、脳の成長が阻害されるのかな?」

「そんなこと言ってはダメだよ。人は失敗から学んで成長するのだから」

  私は平均的な人の、2倍か3倍失敗していると思う。受け取った「不合格通知」の数なら、たいていの人に負けない。塾生の子たちのように、簡単にぶった斬ることはできない。でも、

「人生って、そんなにシンプルじゃないよ」

 

  私がハゲ頭の写真がついた京大の受験票を塾生に見せると、塾生の子はみんな

笑う。しかし、授業が始まると -- -- 。

2016年度(7名)
 京都大学「医学部」、京都大学「理学部」、大阪大学「人間科学部」、名古屋大学「経済学部」、名古屋市立大学「医学部」、神戸大学「経済学部」、御茶ノ水大学「理学部」
2015年度(6名)
 京都大学「経済学部」、京都大学「総合人間学部」、東京医科歯科大学、大阪大学「外国語学部」、東工大、名市大「薬学部」。

 

  今、私は昭和生まれの戦後派の頑固者で周囲の人と衝突するような頑固者になりつつある。ハゲ頭も、やっていることも亡き父と同じだ。

 


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