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16/4/9

運命

Image by Olia Gozha

公認会計士の資格を取ってからというものの


所謂お食事会と称する 結婚目当ての女が群がるコンパに良く呼ばれるようになった


『いつもみたいにお前の同僚って設定にしてくれよ 頼むよ、な?』


なんていう本当はボーリング場のバイトの分際の悪友が 俺の立場を利用して甘い蜜を吸うためだ



まあ俺も悪い気はしない


悪友とはいつも持ちつ持たれつの関係で今まで来た




今夜は恵比寿にある やたらとピンクのブタの置物があちこちに鎮座しているレストランの個室で


悪友がどこからか見つけてきた 保育士の2人組と会う事になっている



先に着いた俺たちはビールを飲んで待つことにした



2杯目を注文しても まだ保育士たちは姿を見せない



それも当然だ


俺たちがレストランに着いたのは待ち合わせから 1時間も早いからだ




『最後お会計割り勘すれば 俺たちの方が得じゃんね へへ』



まったくどこまでもゲスな友人だ



割り勘とか言っときながら大抵の勘定は俺が持っている




『保育士だから俺、今日は甘えん坊キャラでいくわ


母性本能くすぐれば余裕っしょ』



ゲスな友人は もうほろ酔いモードで饒舌になっている






お席はこちらです




黒服に案内されて 似たような恰好をした2人組が現れた



『ごめんなさーい お待たせしました?』




『いやいや全然、俺達も今ついたところっすから』


後ろ手で飲み干したジョッキを黒服に押し付けながら



手際よく 奥の席に女の子を誘導する友人




飲み物何にする?


俺たちはビール



勝手に俺の飲み物まで注文する友人


2人組はメニューを覗き込んでいるが


友人は 


『シュワシュワしちゃう?せっかくだからいいじゃん


ブブっちゃお』



なんて調子のいいこと言いながら ヴーヴを入れた



『マサト、この子が 美穂ちゃん、でこの子が祥子ちゃんね


俺はご存知 タケル、こいつは同僚のマサトね


今夜は盛り上がっちゃいましょー』


やれやれ


俺は顔を上げた


あっ

思わず唾を飲み込んでしまった


目の前に座っていたのは 化粧はしているが 間違いない


中学の時にがり勉だった俺をずっと虐めてきた 美穂と祥子だった



『あは、 初めまして イケメンさんですね』




冗談じゃない 気が付かれたら終わりだ


俺はタケルをちょっと作戦会議!


といって廊下に連れ出した



『おい ちょっと頼みがある 俺の出身は兵庫県ってことにしてくれ


事情は後で説明する


好きな方行っていいから いいな


それから俺の苗字も 宮下 にしてくれ 


間違えんなよ!』


手短に説明をして席に戻る



中学の時は眼鏡だった 今はコンタクト

ばれないでくれ


祈る気持ちで席に戻ると既にシャンパンが置かれていた


もう飲ませて ばれないうちに帰るしかない



あの時の美穂と祥子はまさに鬼だった


雑巾を絞った水を飲ませてきたリ


制服をびりびりに破られたり


思い出すだけで震えが来る



まてよ こんなにいい復讐のチャンスはない


俺は勢いよく栓を抜いた



『とりあ 乾杯しよー 』


カチャン


グラスのぶつかる音が響き 


その後は保育園と幼稚園の違い という


どうでもいい話題で場を繋いだ


『明日は週末、今日は素敵な夜にしたいから


お店で一番いいお酒 空けちゃお?』




『えーいいんですかー? 』


黄色い声を上げる 美穂と祥子は 俺が 俺だという事は


全く気が付いていない


タケルは もぞもぞしながら


『 なら次回は俺が持つから 』


とビビってる


『ああ、 鳥貴族でな』


だからお前も好きなだけ飲めよ



自分自身も見たことが無いような酒がポンポンと空いて


夜はふける



二人が俺達にもたれかかってくる頃になってくると


俺は再びタケルを連れ出した



作戦会議!



廊下にタケルの分の鞄も持って出る


『タケル、お前100メートル何秒で走れる?』


『あ?足よりも手の方が早いぜ 俺 祥子ちゃん持って帰るわ』


『おい、駅まで競争だ』


状況を察したタケルは 絶句した



二人ともエア電話をしながら店の外に出るや否や


恵比寿駅まで疾走した



駅に着くと息を切らしながら


タケルがつかみかかってくる


『どういうつもりだよ!』


俺はタクシーを止めながら言った


『運命だ。』

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