早いもので、もう4月になった。
就職活動を終えた新社会人と、これから就職活動を迎える就活生。
街中にあふれる彼らの姿を見て、自分にも就職活動に打ち込んだ時代があったのだとしみじみ思った。
僕は、関西の立命館大学出身。
関西の名門私立大学群である、「関関同立」の一角として知られる。
関東の方には、関西の「MARCH」と言えば分かりやすいだろうか。
自分で言うのは何なのだが、僕はこの大学で優秀な方だと勝手に思い込んでいた。
元引きこもりでゲーム大好きのクズ人間にもかかわらず、努力と根性でGPA(成績評価値)では4.8を叩き出す。
学内のエラい人から表彰された。お金も40万円ぐらいもらった。
さらに、外国人とダベっているうちに英語やらフランス語やらも身につけ、「なんかスゴい人」扱いされることもしばしば。
黎明期から関わったサークル活動も、そこそこ順調だった。
「俺って、、、結構出来る方じゃね??」
そんな世間知らずのイタい妄想を抱いた僕は、3年生の夏に、某総合商社のインターンシップに行った。
書類を通過し、グループディスカッションも難なくクリア。
ただ、最終面接で、40代ぐらいのイカつい社員さんに、自分の薄っぺらさを看破された。
最終面接で隣に座ったのは、大阪大学の田中くん(仮名)。
絵に描いたような「優秀な法学部の学生」って感じの彼は、自分の夢や意見を論理的、かつ活き活きと話す姿が印象的だった。
帰り道。
タケ「いや〜、田中くん、ほんまスゴいな…。あんなに論理的に話す学生、初めて見たわ…」
田中くん「いやいや、僕みたいなロジカルすぎるタイプ、総合商社では嫌われるやろな。あくまで今回は力試しやで」
タケ「ふーん(ロジカルって何やねん、日本語使えよ)。どっか行きたい業界、あんの?」
田中くん「うん。僕はコンサルになりたいねん」
タケ「こ、コンサル…?なにそれ。。。」
コンサル。
(これはサル)
初めて聞く言葉だった。
田中くん「ハハ。まぁ、今度東京で大手のコンサルティングファームがインターンやるねん。一緒に受けようや」
タケ「は、はぁ…」
正直脳みそが全く追いついてなかったが、田中くんに付いて行きたい一心で、そのインターンにエントリーした。
余談だが、この田中くんは現在、大手ファームで敏腕コンサルタントとしてバリバリ活躍中である。
厳しい書類審査とWebテストをクリアした後。
東京にて、グループディスカッションを迎えた。
タケ「まぁ何とかなるやろ。総合商社のグループディスカッションも余裕やったし」
人生初の東京ということもあり、浮かれた気持ちで臨んだグループディスカッション。
衝撃だった。
全く付いていけない。
周りの学生は、こんな感じの構成だった。
①東大法学部大学院の女性。美人。仕切り役
②ICUの男性。超イケメン。金持ちオーラが半端ない
③法政大学の男性。田中くんに雰囲気がクリソツ
④東大医学部の女性。控えめだが頭はキレた
「まずは前提条件から想定しましょう」
「打ち手を3分でブレストしましょう」
「出た打ち手それぞれのメリット・デメリットを挙げ、比較検討しましょう」
もう、何というか、頭の回転の違いどころの話じゃない。
何だこいつら。バケモンか。
てか何話してんのこいつら。3Cって何?ミーシーって何?
完膚なきまでに打ちのめされた。
思えば、これが東京での就活における、一度目のフルボッコだった。
「ぐはぁ!!!」
帰り道。
タケ「はぁ〜ぁ。皆さんすごいっすね…」
③の男性「そんなことないよ。タケくんも最後、自分の意見を述べて議論の方向性変えたじゃん」
①の女性「そうそう。バリュー出てたよ」
タケ「そ、そうなんすか…(バリューって何やねん。日本語話せよもう!!)」
②の男性「そういや、明日はマッキンのインターンのES締め切りだね」
④の女性「そうなの?急がなきゃ。ゴールドマン・サックスも後少しよね」
タケ「あ、あの…(勇気を出して聞いてみよう)ま、マッキンって何すか?ゴールドマンうんたらって何すか?」
①②③④「えっ?!?!?!?!?!?!?!?!」
あの時の一同の「ポカーン」って顔は、一生忘れないだろう。
( ゚д゚)ポカーン←まさしくこんな感じだった。
(ナニイッテンノコイツ…)
僕は、業界最大手と言っても過言ではないマッキンゼーや、投資銀行最大手のゴールドマン・サックスすら知らず、コンサルのインターンを受けたのである。
あぁ、なんて情けない…。
その後、何故かグループディスカッションを通過、最終面接に。
最終面接では「いや〜、コンサルって何のことかさっぱりっすね正直。色々勉強したんですけど」
「なんでみんなルー大柴みたいになるんですかね」と言った。
超絶仕事が出来そうな面接官に爆笑された。
面接官にただ爆笑されただけの最終面接も何故か突破した僕は、晴れてインターンに参加。
だが、ここでも再びフルボッコにされた。
晴れて二度目のフルボッコ。
「ぐ、ぐはぁ!!!!!」
インターン本番で出会った学生は、グループディスカッションの時以上に優秀どころが集まっていた。
問題を華麗に構造化し、持参した方眼紙上に一瞬にして落としこむ、官僚志望の京大院生。
アメリカの超名門大学でエリートと凌ぎを削ってきたナイスガイ。
経済学的な観点から、要所要所で周りを唸らす意見を口にするインテリ女性。
日・英・独の三ヶ国語を操るだけでなく、バスケットでも結果を残した文武両道の国立大生。
グループディスカッションのときに出会った、頭のキレるICUの超イケメン。
そして、彼らの話についていくことすら出来ぬ、私、タケ。
あのグループディスカッションから1ヶ月ほど後の、夏の終わりの日のこと。
つまり僕は、2ヶ月間で2回もコンサルでの就活でフルボッコにされたのだ。
情けない僕は、他のところに「バリュー」を見出すことにした。
議論が白熱した時にみんなをなだめたり、地道な情報収集を帰宅して徹夜で行ったり、「疲れただろうな」って時にリポビタンを差し入れたり。
いないよりはマシだっただろうが、肝心の議論の大筋に全く絡むことは出来ず、インターンが終了してしまった。
「ケーススタディ」やら「フェルミ推定」やら「ロジカルシンキング」について書かれた書籍を読み込んだが、全く意味はなかった。
「あぁ、俺には向いてないんだな」
「こいつらには逆立ちしても勝てねぇ」
こうしみじみと思い、心の傷を抱えながら別の業界を見ることにした。
「あんた、まだ3年の夏やで。早すぎちゃう?」
東京でのインターンに参加する為、ゼミを休みがちだった僕に、教授は良くこう言ったものだ。
3年の夏から動いていたのは、学部で僕ぐらい。
さらに、コンサルの「コ」の字も知らない学生が大半とくれば、僕の異質さは想像以上に目立ったのだろう。
だが、僕は思った。
(いやいや、東京の奴らはもうとっくに動いてるし、とっくに内定もろてる奴もおるで…)
危機感を募らせた僕は、教授の忠告を右から左に受け流し(ネタが古いですね)。
早めに行動することを心がけ、2月の時点で誰もが知る大企業から内定を貰った。
その後紆余曲折があり、結局僕は大手のコンサルティングファームに入り直すことになる。
あんなに打ちのめされ、「一生関わることはなかろう」と考えた業界に入ったのは、なんとも数奇な運命である。
ちなみに、一応難関とされるコンサルティングファームに入社したのは、学部内でおそらく僕だけである。
まとめ。
僕は、関西の大学で自分を知らず、調子に乗っていた。
だが、挑戦した結果、東京での就職活動でフルボッコにされた。
だが…何と言うか。
僕自身、フルボッコにされて本当に良かったと、今では心底思っている。
なぜなら、学校でのお勉強は、社会に出たらほとんど役に立たないと身を持って理解したからだ。
就職活動で出会った優秀な学生のほとんどは、何かしらの目標を掲げていた。
そして、その目標を達成するために就職活動を選択し、その就職活動に成功するために勉強や行動を行っていた。
「なんとなく」勉強し、半ば「勉強のために勉強していた」僕とは大違い。
しかもそのお勉強も、優秀な東大生やら京大生、ハーバード大生なんかに比べたら、低次元にもほどがある。
そりゃ、就活でフルボッコになるのも当然だ。
野球の練習ばかりしている草野球チームが、サッカーで世界最強のバルセロナと戦うようなもんである。
繰り返す。
学校のお勉強は、社会に出たらほとんど役に立たない。
正直なところ、就職活動にすらあんまり役に立たない。
そんな無意味な勉強をする暇があれば、「自分は何をしたいのか?」をじっくりと探す方がはるかに有益だ。
学生生活は、長いようで実に短い。
学外を飛び出し、地域を飛び出し、さらには日本を飛び出して色々なチャレンジをしてみよう。
不安はあるかも知れない。周りからの反発もあるだろう。
僕のように、ボコボコにされて恥をかくなんてこともあるだろう。
しかし、そのチャレンジで得た経験は、将来きっと、役に立つ。
そう、インターンでフルボッコに遭った僕が、巡り巡って大手コンサルティングファームにて勤務できたように。