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16/3/26

英語も出来なかったぼくが世界を旅しそのなかで教わった今後の人生を生きる上で大切なこと

Image by Olia Gozha

“人生とは旅であり、旅とは人生である”


数年前、ぼくはアジアをひとりで旅をしました。期間は一か月。それほど長期ではありません。しかし、この一つの旅でぼくは今後生きる上でとても大事なことを学ぶことになります。



そもそもぼくが旅に憧れを抱いたきっかけは、大沢たかおさんが主演のノンフィクションドラマ「深夜特急」によるものでした。27歳の男が日本での仕事を全て放擲し、一人旅に出る。ぼくはそれをきっかけに「深夜特急」の原作者である沢木耕太郎さんという作家さんが好きになり、いつかはぼくも沢木耕太郎さんと同じように旅をしたい・・・そう思うようになりました。


偶然にも、深夜特急に憧れたぼくは沢木耕太郎と同じくらいの年齢で旅にでることになります。


奇しくも「UNKO HOTEL(う○こホテル)」に泊まることになったぼく


旅のはじめの目的地はタイ。カオサン通りというバックパッカーが集まる聖地でした。それ以外はその場の思いつきで決めていけば良い。そんな軽い気持ちで旅に出ました。ところが、深夜の便でタイに着いたぼくは、早速旅にうちのめされることになります。


それはまだ入国さえ許されていない、イミグレーションでの出来事でした。

入国審査官「○▼■×○▼■×○▼■×○▼■×パスポート○▼■×」

ぼく「・・・(パスポートを差し出す)」

入国審査官「○▼■×」

ぼく「Sightseeing(観光)」

入国審査官「○▼■×」

ぼく「・・・???ん?何?」

入国審査官「○▼■×」


言葉もわからないぼくは、彼が何を言っているのかわかりませんでした。何やらイミグレーションカードに記載されたある場所を指しており、それはつまり「滞在場所」でした。ぼくは滞在場所も決めずに出国してしまったため「滞在場所」を空欄にしていました。


ぼくは慌てて、「none」と書き足しました。するとその入国審査官が渋い顔をします。これではダメだと言っているようでした。ぼくは必死で入国審査官を説得にかかります。

ぼく「「I」はね・・・え〜っと・・・「STAY」する場所が決まって「NOTHING」。」

入国審査官「(渋い顔で)○▼■×(書けというしぐさ)」

ぼく「だから「I」は・・・「STAY」が「NONE(なん)」なんだ。頼むからわかって。」

入国審査官「○▼■×(渋い顔&困った顔)」


ぼくは絶望に打ち拉がれました。もしかしてこのまま強制送還されてしまうのだろうか。そんな思いがふと頭をよぎりました。そのやりとりはどれくらい続いたのでしょうか。気がつくと後ろに列をなしている人たち。明らかにぼくを白い目でみてきます。


入国審査官ももうお手上げ状態。いつ警備員がきてもおかしくない状態でした。そんな状況に、ぼくは旅さえ出来ずに帰国するのか・・・。そう思っていました。


すると隣のレーンで手続きをした日本人女性がぼくにこういいました。


日本人女性「そこ、適当に書いとけば通りますよ。」

打ちひしがれているぼく「・・・え・・・本当ですか!ありがとうございます!(キラキラ!)」


すかさずぼくは、適当なホテル名を書こうとしました・・・がホテル名が思い浮かびません。そこで、ぼくはもよおしていたこともあって「UNKO HOTEL(うんこホテル)」と書きました。そう、早くうんこがしたかったのです。



それをみた入国審査官は満足げな笑みをたたえ「OK,GO」と二言。ぼくは「UNKO HOTEL(うんこホテル)」に泊まることになりました。言葉が通じないということは、ある意味「自由」であることをぼくはそこで初めて実感することとなります。


ハイウェイで180キロ飛ばすナイスガイ


続いての試練はすぐに訪れました。無事入国審査を終え、うんこも出し終えたぼくは深夜の空港から街へ出ようとバス停と思われる場所へ向かいました。しかし今の時間は出ていないといいます。・・・まさか・・・ぼくがうんこをしている間に最終便がいってしまったのか・・・そう思い、時刻表を見てみるともうとっくに今日のバスは終わっているようでした。


そこでぼくはどうしようとおもっていたところ、ある男に話しかけられます。

ナイスガイ「HEY!UNKO BOY!スッキリしたかい?」

ぼく「脱糞だ(だっふんだ)!とってもスッキリしたよ!よくしっているNE!ナイスガイ!」


・・・すいません、そうでありませんでした。実際は、下記のような会話です。

ナイスガイ「○▼■×タクシー○▼■×(どうしたの?タクシーのっていかない?)」

ぼく「タクシー?イエス!」


連れて行かれるぼく。言葉がわからないためカッコ内はおそらくそう言っているであろう

言葉です。

ナイスガイ「○▼■×(さあノリな!行き先はどこだい!)」

ぼく「え〜〜とカオサン、カオサン、カオサン!」


ぼくは生まれたての赤子のように自分の行きたい場所を連呼します。するとナイスガイはOKわかったよ!とひと言。聞き分けのいいヤツでした。


しかし一歩空港から出るとそれは悲劇に変わりました。ナイスガイはその握るハンドルの車をガンガンに飛ばします。メーターを確認したのですが180キロ近く出ていました。どんどん車を追い抜いていきます。


さらに前方の車を見ると右にウインカーを出しているのに、なぜか左に曲がっていきます。これはいったいどういうことか。しかしそこはナイスガイ。それを先読みしひょうひょうと交わしていきます。


このナイスガイ、なかなか出来る・・・と思い安心していたところぼくのそんな表情を見てサービス精神が働いたのか、今度は間一髪のところで交わしはじめます。「グッド!」とぼくが親指を立てるとさらに調子に乗り車は加速していきます。


キキキ!っときいたこともないレース仕様の車輪の音はけたたましくハイウェイに響き渡り、気がつくと40分ほどで目的地周辺に到着。冷や汗ものでした。さっき出し切ったはずのうんこがまたそこまででかかっている気がしました。

ナイスガイ「ところで今日はどこに泊まるんだい!?」

ぼく「NOTHING・・・NO HOTEL・・・。」

ナイスガイ「なんだって!泊まるところがない!?OKオレが紹介してあげるよ!」


そういうとぐるりと周辺を一周し近くにとめ、何やら建物の中に入っていきます。ぼくはここで迷いました。もしかしたら騙されるのかも知れない・・・。海外は怖いところという何の根拠もない恐怖を抱いていたぼくは密かにそう感じていました。



しかし、幸運なことに何も無くナイスガイにより1日目に泊まる宿もぼくは手にいれることが出来ました。


人生とは旅であり、旅とは人生である


「人生とは旅であり、旅とは人生である」昔からよく言う言葉です。


一ヶ月間の旅を通してぼくはものすごい充実感を味わうことが出来ました。大げさにきこえるかもしれませんが「生きている実感」を日々感じていました。それは朝起きて、今日はどこへいこう、なにをしよう、からはじまり、日々起きる予測不能なトラブルにいたるまで・・・全てがぼくにとって必要な経験であり大事なことでした。



電話もかけられない、乗り物の乗り方もわからない、言葉もわからない、話すことも出来ない、お金の価値がわからないのでお金の使い方もわからない・・・そんな中そのそれぞれをひとつひとつ経験として積み上げていきました。


そして旅の中で旅を通して旅の対処法をひとは学んでいきます。


例えばものの価値の測り方はこうです。

ぼく「ぼく:これ$になおすといくら?」

店員「1ドルだよ。」


アジアの場合ほとんどがこの会話で成り立ちます。そしてこのやりとりによってそこに書かれている数字と見比べることでそれがいったいどんな価値を持つのか、おおよその通貨の価値基準を知ることが出来ます。



旅は人生に似ている・・・よく聞かれる話ですが本当にそうだなと思います。


ひとは旅を通して実にたくさんのことを学びます。ぼくはこの旅を通して人並みかもしれませんが、人が生きるということは一体なんなのか、人が生きるとは一体どういうことなのかを少しばかり学んだ気がします。


そしてぼくはこの旅を通して、幸運なことに世界を知ることができました。ひとつの旅を通して様々な人と出逢い、様々な価値観にふれ、様々な文化や風習の中で自らの体験を通して世界を学ぶことができました。


目的地・・・旅では目的地が必要です。目的地のない旅はどこにもたどりつくことができません。しかし不思議なことに目的地を定め、自分が行きたい場所がどこなのか、一体何をしたいのか、具体的に語ることで周りがサポートしてくれます。



タイ、カオサン、ルアンパバーン、アンコールワット、サンライズ、カンボジア、シェムリアップ、インド、ガンガー、コルカタ、バラナシ・・・


はじめははっきりとしなくても、自らが語り、話をきき、道を選ぶことで、抽象的なものがどんどん具体的になっていきます。そして例え言葉が通じなくても行き先だけ自分がしっかりと答えることができればどんな場所にでもいって来れます。


今まで感じたことが無かったのですが「言葉」は「魔法」のようなものでした。行き先をはっきりと伝えれば世界中に行けない場所はありませんでした。



また、ひとはどんなにひとりになろうが他人(ひと)のサポートは欠かせません。いつ、どこで、なにをしようが必ずひととかかわり合います。そしてひとはぼくたちのみえないところで密接に繋がっており、決して切り離すことは出来ません。


不思議なことに、ひとりで旅をしたいと思い日本を飛び出したのに、ひとりで旅をすればするほど、人と関わりたくなりました。人が恋しくなりました。そして、人と歩いていきたくなりました。「ありがとう」や「こんにちは」。日常に溢れ些細に思えるそんな言葉にどれだけすくわれたか。ひとは決してひとりでは生きていけないということを実感しました。また日本にいる時、自分はどれだけ周りに助けられていたのかも実感しました。


ぼくはただ、ここに今生きているだけで、そこにいるだけで多くのひとに支えられていました。


そんな当たり前のことに気がつきました。


人生とは旅であり、旅とは人生である・・・


旅に埋もれてしまっている人、行き先を見失いただ放浪するだけの人、寂しさの果てに薬に溺れた人、放浪の果てに帰る場所を無くした人。この旅で本当にたくさんの人と出逢いました。


ふと、帰りの機内で、目が覚めると、そこには今までみたこともないほど綺麗な満天の星が瞬いていました。ぼくはその満天の星空をしばらくぼうっとみていて、物思いにふけっていました。



この旅で出逢った人たち・・・訪れた一つ一つの場所・・・すると不思議なことに大粒の涙が流れてきました。ぼくは一人じゃない。こんなにも多くのひとが支えてくれる・・・多くのひとの支えなしでは、ぼくは生きていけない。ただただ、感謝の気持ちが沸き起こってきました。


ぼくは旅を振り返り、ぼくにはなんにもなかったがなんでもあった。そんな気持ちになりました。


どこからきて、どこへ向かうのか


どこからきて、どこへむかうのか・・・それが旅の全てです。時に道に迷うこともある。時に道を見失うこともある。でもそんな時はそっと訪ねればいい。道がわからなければきけば良い。道を知っている人にきけばいい。そして、道を間違ったら戻ればいい・・・


ひととひとが繋がり合い、お互いに足りないものを補い合い助け合うことによってどんな場所でも生きていける。大丈夫。人生は思っているほど冷たくない。そんなことを身にしみて経験しました。



世界には多様な価値観があり、今いる世界が世界の全てではありません。迷ったらそっとそれを思い出せばいい。あなたがいるところだけが世界ではない。そんなことをぼくは旅に教わった気がします。


最後に、僕が旅をしている時、旅先での出来事です。ぼくが道に迷い、道を探しあぐねていると、ふとどこからか聞き覚えのあるメロディが流れてきました。


一本のギターから奏でられたその音楽は、深くぼくの心にしみいり、疲れたぼくの身体にゆっくりと浸透していきました。


『Let it be Let it be』


なすがままに、なすがままに。



ぼく「最後まで読んで頂きありがとうございました。」

====

僕は今、旅で学んだことを活かし「なすがままに」仕事をする生活を続けています。

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