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16/3/19

我儘になる勇気

Image by Olia Gozha

私はちゃんとした人生を歩まなきゃいけない!

そんなあなたは、もっと我儘(わがまま)になるべき。


自分勝手とわがままの違いを理解し、自分に嘘をつかないという意味の「わがまま」を実践すれば、あなたのやりたい事は全て周りから理解され、わがままでいられる環境を手に入れる事が出来るのです。




そうです。あれのパクリです。


このストーリーは、わがままに生きる達人と、その生き方に憧れた青年の話。

青年は彼の生き様に共感し、わがままに生きることを実践した。

生活の為、生きる為だけに勤めていた会社を辞める決心をしたのだ。

これからは自分にわがままに生きる。

生きる為に生きるのではなく、何のために生きていくのかを自分に問う為に。



ところが・・・


青年「冗談じゃない!」



達人「どうしたのですか?」



青年「あなたがわがままに生きろというから、私はわがままになったんだ。自分に嘘を付かず、気の向くままにやりたい事をやった。その結果どえらい目に会いましたよ!」



達人「ほう。と言いますと?」



青年「先ずは会社を辞めました。素直に辞めたかったからね。辞める理由もわがままですよ。その仕事が前からつまらないと思ってた。だから辞めた。周りからは考え方が甘いと言われ、両親にも呆れられました。でもね、自分に嘘を付かずキッパリ辞めたんです!」



達人「それはおめでとう。それの何が大変なんですか?」



青年「大変ですよ!てか、どえらい目に会いましたって言ってるでしょーよ!先ずは世間の目です。いい歳して無職なんて恥ずかしくて言えない。常に肩身の狭い思いをしてきました。収入は今までの貯蓄と退職金でやりくりしなきゃいけない。毎日節約、節約でストレスです。そして何より…」



達人「何より?」



青年「何より、結局わがままに自分のやりたい仕事なんて出来ない現実です!ぼくは芸能界に興味があってTV局で働きたいと思ってるけど、そんなもん無理に決まってるし。かと言って他に何が出来るかなんて考えても、何も出来ないんですよ私なんか!わがままに生きるとは、自己嫌悪との戦いしか有りませんでしたよ!」



達人「なるほど」



青年「なるほどじゃねーし。ナニ嫌われる勇気の哲学者みたいな事言ってんですか。あなたが言うわがままに生きるって、全くもって現実的じゃないんです。認めて下さい!」



達人「いや、認めない」



青年「なん…だと?人の人生めちゃめちゃにしといて、認めねーとはどういう了見だ!」



達人「だって、あなたの人生なんてぼくの知ったこっちゃ無いんでね」



青年「なん…だと?パート2!!私はあなたの「我儘に生きる勇気」ってのを読んでめっちゃ憧れたんですよ!なのに実践したらこうですよ。どーしてくれるんですか!」



達人「まず、あなたが何を選ぶかはあなたの自由で、ぼくが決める事では無い。わがままな生き方も、きっかけはぼくかも知れませんが選んだのはあなたです



青年「ははーん。逃げですね。それは逃げですよ!逃げちゃダメだって碇シンジ君も言ってるでしょう!ただの責任逃れじゃないですか!?」



達人「いいえ。ぼくは今までずっとわがままに生きて来ましたが、それを後悔したことは一度も有りません。つまりわがままに生きれば後悔しない人生を送れると信じて疑いません。だからみんなもそうすればいいのに。と、本気で思ってます」



青年「例えそうだとしても、私は後悔してますよ」



達人「それは、あなたがわがままを勘違いしてるからですよ」



青年「勘違い?勘違いって何んですか。わがままに勘違いも何もないでしょう?」



達人「あなたが選んできたことは、わがままでは無く身勝手な行動と他人軸の考え方です。つまり、全然わがままに生きてないって事ですよ」



青年「なん…だと!!!パートすりいぃぃー!自分に嘘を付かず、きっちりわがままに選んだって言ってるじゃないですかぁ!そうやってはぐらかすつもりでしょ?理論的な話と、ああ言えばこう言うみたいのは違いますよ!」



達人「では質問です。あなたは何故、会社を辞める事にわがままというものを当てはめたのですか?」



青年「は?仕事が嫌で会社を辞めたんですよ?わがまま以外の何物でも無いでしょう?」



達人「では、仕事が嫌なら何故今まで辞めなかったのですか?私のわがままに生きろという話を聞いて、その瞬間に仕事が嫌になったわけでは無いでしょう?」



青年「辞めたら生活が出来なくなるからですよ。それにもうこの歳で他の仕事なんて選べませんしね。だからこそあなたの言う、わがままになれば何とかなると思ったんです!ぼくも幸せになりたいですからね!」



達人「という事は、あなたは仕事を辞める理由をわがままにすり替えただけって事です。あなたが会社を辞めた理由はひとつです。辞めたくて辞めた。それだけです。つまりわがままだから辞めた訳じゃ無いんです」



青年「それはやはり屁理屈ですよ!辞めたくて辞めるのはわがままじゃないですか」



達人「では、質問を変えましょう」



青年「ちょっと待った!辞めたくて辞めるのはわがままじゃないんですか?ちゃんと答えて下さい!」



達人「あなたは今、わがままが悪い事として、つまり前提が〈わがまま=悪〉として話されてますよね?ぼくは〈わがまま=善〉として話を進めなければなりません。そこをフラットにする必要があるんです」



青年「なるほど。もちろんぼくはわがまま=悪だと認識したからこそ、ここに来たんですから」



達人「ありがとうございます。では質問です」



青年「はい」






達人「子供が欲しいおもちゃをねだるのはわがままですか?」



青年「そうですね、条件によると思います。そのおもちゃが高くて買えないものなら親の都合でわがままと思うかも知れませんが、買ったばかりのおもちゃに飽きてすぐに次のおもちゃをねだってるなら、わがままだと思います」



達人「なるほど。では、子供の目線から見ればどうでしょう?高いおもちゃをねだる時と、飽きてすぐに違うおもちゃをねだる時は、違う感覚でしょうか?」




青年「同じだと思います。子供にとってはどちらも欲しいおもちゃですからね」



達人「ぼくもそう思います。つまり子供にとっては、おもちゃをねだる事はわがままだと認識してません。そのおもちゃが手に入ればいい訳ですから。親が金持ちなら手に入るし、子供に甘い親でも手に入る訳です」



青年「それがどうしたんですか?」



達人「もし、このおもちゃは高いけどねだれば買って貰えるかもしれない。または、この前買って貰ったばかりだけど、ねだればまた買って貰えるかもしれない。と理解してねだってるなら、それはわがままを言ってると自覚出来てるって事です」



青年「そうですね。それはかなりのクソガキですね」



達人「ええ。クソガキですよ。でも彼がもし、わがまま=悪だと認識してれば言わない可能性もありますよね?」



青年「よくできた子供です」



達人「まあ、親御さんにとっては都合のいい子供でしょうね。しかしわがままを言えば買ってもっらえるかもしれない、いや、ねだれば絶対買ってもらえると信じて疑わない子供だったらどうですか?」



青年「金持ちで甘い親なら買ってもらえる可能性は高いでしょうね。というか、手に入れますよ。そのクソガキは」



達人「はい。その通りです。そのおもちゃが手に入った子供はどんな気持ちでしょうか?」



青年「うぉおおお!やったー!ですよ。欲しいおもちゃが手に入るんですから」



達人「じゃあその子供は、わがままを言ったおかげで幸せになったんですよね。それでもわがまま=悪だと思いますか?」



青年「その子供にとってはいい事かも知れませんが、親にとっては困った子供でしょう!」



達人「お金が無くて、子供に厳しい親にとってはね。そうではない親にとっては良くも悪くもない。むしろ子供が喜んでる姿を見れて幸せな気持ちじゃないですか?」



青年「つまり子供が、自分がわがままだと認識してようがしまいが、おもちゃをねだる事で条件によってはお互いに幸せになれると。そう言いたいんですね?」



達人「そういう事です。わがまま=悪だと思い込むと、お互いに幸せになるチャンスを逃す可能性があるんです



青年「じゃあみんなわがままになったら、買って貰えてハッピーな子供と、買って貰えない悲劇の子供が出てくるじゃないですか!それは不公平でしょ?」



達人「不公平ですよ。世の中は」



青年「買って貰えない子供は、落ち込むし、妬むし、グレてヤンキーになるかもしれないんですよ!?」



達人「落ち込むし、妬むし、グレてヤンキーになるかもしれませんね」



青年「それで良いんですか?!」



達人「それがいけないんですか?」



青年「良くはないでしょう!」





達人「子供が落ち込んだり、妬んだり、グレてヤンキーになる事は、その子供がその後の人生をどう送るかによって良かった、悪かったになります。あなたが今どうジャッジしてるかは別として、それはわがまま=悪という事では無いんです」



青年「それは、そうですが…」




達人「わがままを言わない子供は居ません。それは誰に遠慮するでもなく、相手の条件も関係なく、ただ純粋に自分の幸せを掴みとろうとしてるだけなんですよ。しかし、大人になると良い悪いで物事を判断し始めます。それは得てして他人の目や常識的、社会的立場を天秤にかけるからです。わがままになると誰かが不幸になる、自分が傷付くかもしれないという恐怖が、大人がわがままになれない理由です



青年「誰かを不幸にしたり、自分が傷付くのは嫌じゃないですか!だったらわがままなんてならない方がいい。現実に私は傷付いてるんですから!」



青年は声を荒げ、少し涙ぐんでいた。

それは、思うようにならなかった事への怒りと、選択を間違えた事への後悔からか。



達人「では、あなたがわがままにならずそのまま嫌な仕事を続ていれば、誰も不幸にならず、あなたは傷付かないのですか?」




青年は押し黙っていた。


そんな訳無いだろ!と、言ってしまいそうになった。それは同時に自分が言ってる事を否定する事になるからだ。自分がわがままになろうが、なるまいが、誰かの不幸も自分が傷付く事も無くならない事を理解していた。



達人「あなたが今の仕事が嫌で会社を辞めたなら、嫌な仕事をしなくてよくなったという元の状態に戻っただけです。幸せになった訳ではありません。他にやりたい事があって、その為に仕事を辞める。その結果会社に迷惑を掛けたり周りの人に心配を掛けるなら、それはわがままです。自分の幸せを純粋に求めた訳ですからね。しかし、辞めた後どう生きるかも決めず、TV局に入る為の努力は何も考えず諦め、世間の目や体裁を気にして、あげく私のせいにするのはただの身勝手な考え方だとぼくは思います」



青年「つまり、私がした事はわがままではなく、単なる身勝手だという事ですか」



達人「あなたが今の心境のまま生きていくのであればそうです。しかし、今までの生き方から一歩前に進んだ事は確かです。わがままの捉え方を少し間違えたものの、フラットな状態には戻れたのですから」



青年「でも、わがままに生きるのはもう怖いです」



達人「わがままに生きる事の本当の意味を知ると、初めに立ち塞がるのは恐怖です。恐怖は全て自分の外から来るもので、立ち向かうしか方法はありません。つまり勇気です。これが子供のわがままと大人のわがままの違いです」



青年「じゃあどうすればいいんですか?私は」



達人「また他人に答えを求めるんですか?今度は勇気を出せと言われたから出しますか?それは同じ結果しか生みません。わがままに生きるには勇気が必要になります。これは間違いない事です。覚悟という言葉にも置き換えられるでしょう。しかしそれは、あなたのわがままが何なのかを、あなた自身が理解して初めて現れる壁なのです」



青年「私の中のわがままですか・・・」



達人「そうです。会社を辞める事がわがままだったのなら、少なからず勇気も必要だったでしょう。そして辞めた後の開放感は、純粋にあなたの求めた幸福だったかも知れません。しかし、当たり前ですがそれで人生が全て上手くいく訳でも、終わる訳でも無いんです。ずっと続くんですよ。わがままに生きるとはその生き方の事であり、行為を言うのではありません。子供のように純粋に幸せを求めれば、それが手に入るかも知れないし、入らずに落ち込むかもしれない。でもわがままにならなければ絶対に手に入る事は無いんです」



青年「だから、勇気が必要なんですね。ぼくにそんな勇気が持てるでしょうか」



達人「さっきも言いましたが、あなたは既に一歩踏み出してる。それは勇気だとぼくは思います。私が言うわがままな生き方にあなたは少なからず共感した。憧れた。だから勇気が持てた。ならば、今度はあなた自身に共感し、憧れるようなわがままを探して下さい。それが勇気に変わると私は信じています」







青年は肩を落としたまま去って行きました。


わがままに生きるという事は、今までの生き方を変えるという事です。


それは、今までの自分を否定する行為になると感じる事もあります。


でも、それは勘違いです。


何が正しくて、何が間違いなのか?


人生に正解を求めて人は生きようとします。


しかし、正解なんてものは無いんです。


振り返った時に、良かったと感じるか、悪かったと感じるかだけの事。


純粋に幸せを求める人生は、振り返った時に後悔するでしょうか?



ぼくはしない。



大袈裟に言えば、人は死という制限時間の存在を理解した時、初めてわがままになれるのかもしれません。



わがままに生きるとは勇気を持ってそれを受け入れ、あなたと関わりを持つ人にあなたのわがままを伝えていく生き方です。


あなたのわがままを受け入れてくれない人が居るならば、受け入れてくれる人も必ず居ます。その人があなたをわがままで居させてくれる人。そういう人に囲まれて生きる。そんな環境を作る事は実は難しい事ではありません。


あなたがわがままに生きる勇気を持てれば。


※このストーリーは半分以上フィクションです。

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