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16/3/13

【超短編】 ホームレスに500円せがまれ、恵んだらこうなった

Image by Olia Gozha

✳実体験です。作り話ではありません。



これは僕が二十歳位の時の話です。仕事帰りに、新宿アルタ前の広場でタバコを吸っていたところ、一人のホームレスに声を掛けられた。髭のびっしり生えた年季の入ったホームレスだった。「あんちゃん、ここ最近まともなもん食ってないから、お金を少しでいいから恵んでくれねえか?」ホームレスに話しかけられたのはその時がはじめてだった。あまりにも辛そうなので、僕は、500円玉を手渡した。すると、ホームレスは自分の身の上話を語り始めた。 ホームレスになる前の生活、ホームレスになってしまったいきさつ、娘の話し。     たぶん15分位は話していただろう。滅多にないことなので僕は真剣に話を聞いていた。

話しを終えると、ホームレスが右手につけていた腕時計を僕にくれると言い出した。僕はもちろん「いりません。大丈夫です。」と言った。(本当にいらないし。)             それでもそのホームレスは「あんちゃん、いいやつだから、なんかお返ししてやりたいんだ。お願いだからもらってくれ、とりあえずつけて見ろ。」と言い、腕時計を外して、僕に手渡した。僕は受け取り、「なんか申し訳ないですね、ありがとうございます。でもこれから時計がなくて不便ではないんですか?」と言った。(再度、断るために言ったんだけど…。)すると、そのホームレスはおもむろに、左腕の袖をめくりあげ「あんちゃん左にもつけてるから安心しろ。」と、どや顔で見せつけてきた。 「んっ(長考&フリーズ)……………………!?」僕は笑いを一生懸命堪えた。ここで笑ったら失礼すぎる。ここは我慢だ…。大変だった。結局僕は、腕時計を断るすべを失い、なんか悪いから、一応その人の前で時計をはめ、別れることになった。その帰り道、僕はいつもよりなんだか、とても温かい気持ちになれました。


  結局僕は、500円以上に価値のある体験ができたと思います。皆さんはどうお考えですか? 


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Image by Jukka Aalho

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