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16/3/9

TV

Image by Olia Gozha

さて、ここに来て約1か月近くになる。インターネットの環境がやっと正常に動き始め、仕事も支障なく稼働している。何といっても、今までの生活をいかにシンプルにするかということが大きな課題でもあった。今まで使っていた大型のテレビは破棄してしまったので、ここではテレビの環境はない。今のテレビは地デジやら、アンテナの設置やら、なにかとややこしい。あまりテレビを見ることを楽しみにしてきたわけではないが、19インチの小さなモニターにひかりTVをつなげることが可能であるため、チューナーをつなげてみた。契約はしていないがやたらとドラマやら映画、ゲームと多すぎて、見る気にもならない。せめてニュースだけならとチャンネルを探すものの、NHK World の英文放送だけが、キャッチできる。時々これをかけることにした。ああ、クオリティだな・・・

 

TVを見た。キリノ大統領といえばフィリピンの第二次大戦の日本人戦犯を恩赦で日本に帰国させた当時の大統領である。1時間のドキュメンタリであったが、その内容は胸打たれる思いで食い入るように見た。大統領の孫娘のルビーさんの話や、当時のプリズンの状況など、我々の想像できないほどの過酷な現状をこのドキュメントを見て改めて知ることになった。私も戦中、満州で生まれ、すぐに敗戦となり、日本に引き揚げてきた者である。

戦争のことや、引き揚げのこと、戦後の混乱のなかでの生活などなど、母の語り伝えで聞いてきたことばかりであった。それが、戦後70年を経て、今だその傷跡をいやすようにひっそりと過ごされてこられた方々が声を上げて、二度と戦争はしてはならないと言い続けている。このたびの両陛下のご訪問を受けて、さらに両国のきずなの意味を深々と考えさせられるのである。

そして、同じ日、愛犬レイジーをつれて海岸まで散歩に出かけた。いつもコンビニで新聞を買って帰るのが日課となっていた。戻って、コーヒーをいれ、買ってきた新聞を読み始めたとたん、「恩赦が開いた融和の道」と書かれた記事が私の目に飛び込んできた。今朝、TVでドキュメントを見たばかりであったため、一気に目を通していた。胸の痛む思いでこれらの記事を読み漁った。

それから、なんとこの日はまた、このフィリピンの出来事に目を向けるのである。私は良く本屋で立ち読みをしてくる。文藝春秋は芥川賞の発表のときだけ、この本を買う。どんどん若手の作家が芥川賞をとっていくことに、それが、なぜか自分の年齢を重ねていくことのように、一抹の焦りのような、何とも言いようのない寂しさを感じてしまうのは私だけであろうか。この日、本屋から戻ってゆっくり本を広げていると、なんと、「フィリピンBC級戦犯最後の証言者」と題しての記録が書かれていた。京都与謝郡のご出身の宮本正二氏の、当時の生々しい記憶をもとにノンフィクション作家の早坂隆氏が書かれたものであった。

私はこの日、アメリカに住んでいる、フィリピン人の友人にMailをしていた。

 

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