16/3/9
全くモテない19歳の女の子がいきなりオーストラリアに行ってそのまま永住し、イケメンと国際結婚して、ライフコーチになった話。第七回 金髪青目の長身アメリカ人

ロンドンから帰ってきた私には新しい幕開けにふさわしい新しい生活が待っていた。
アパートではなく家に引っ越す。初めての電車通勤。新しい車に新しい携帯番号。
もうさすがのイタリア人からのストーキングもなくなった。
新しい職場は都会にあって初めての都会の喧騒を味わうことが出来、何かと新鮮だった。
ほぼ女子ばっかりの職場。陰口だらけでおっさん女子にはとても陰険な場所ではあったが、私のボスはとてもいい人であり何とか楽しく仕事することが出来た。
そんな中、大学院の新学期が始まり私はさらに忙しさを増していた。いや、イギリス人男性の事を忘れたかったからか忙しくしたかったといった方が良いだろう。
大学院で友達ができ、大学生活もそれなりに楽しかった。
とある日、同じクラスの金髪、190cmの長身のシアトル出身のクラスメートに飲みに行こうと誘われる。金髪、青い目、190cm。断る理由はなかった。元消防士だという彼。とてもお堅いイギリス人男性と違い、アメリカ人のノリがとても新鮮で彼といると楽しかった。
軽い気持ちで飲みに行って、軽い気持ちでご飯食べに行って、軽い気持ちで一緒にいるようになった。
こうして私とアメリカ人の彼は毎週の様にデートを重ね、お互いの家を行き来するようになった。貧乏学生な学生二人ってのがはっきりいって居心地が良かったりする。
前は「お金持ちの彼」と一緒にいたわけで、いつも5星レストランに、ブランドの服、オーガニックフードに。。。。とそれはそれなりにいい経験させてもらったが、振り返ってみるとかなり緊張しすぎて肩が凝る。こうやって一緒にピザを作って、安いワインで乾杯して、、、気楽で楽しかった。彼は私をイタリア人やインドネシア人のように全く束縛しないし、さすがアメリカ人、自由奔放!なにもかも大雑把でその適当ぶりが斬新。しかもなんでも大袈裟に話してくるので最初は彼はスーパーマンかも。。。と思ってしまった。
のちになって彼の大袈裟すぎる自慢には実は全く大したことがないという事に気付くのだが。。。
が、自由奔放も過ぎたかもしれない。別に付き合っていたわけではない。お互い一緒にいて楽しいから一緒にいる。って感じが一番型にはまるだろうか。
私はそろそろ恋人同士になってもいいかなと思っていた。
そんな時である。自由奔放な彼は突然
「俺、メルボルンに旅行に行ってくるわ」
と消えてしまったのである。
あれだけ楽しかったのに。やっとイギリス人男性の事忘れかけていたのに。。。
いつ帰ってくるのかも教えてくれないままとりあえず待ち続ける私。
彼から連絡が来ることはなかった。
あとから友達に聞いたことであるが、彼はその後シアトル出身の女の子と付き合うことにしたそうな。私は彼女になれなかっただけに何故かとても負けたような気がして悔しかったが、今考えたら恋人という関係にこだわりすぎていたからだろう。
これを機に私はもう恋愛なんてどうでもよくなってしまった。
恋愛はくそ面倒くさい。出会って、好きになって、彼の事気にしながら駆け引きゲームして、気が付いたらゲームオーバー。
もう恋愛なんてうんざり。
アメリカ人がいなくなってもう本当に恋愛なんてしたくない
そう思っていた。
元水泳選手の私。泳いですべて忘れてしまおうと手術後初めてスイミングプールに行くことにした。久し振りに泳いでみる。不思議なもんである。水泳ってのは車の運転と同じで体が動きを覚えているようだ。もちろん昔みたいに早くは泳げないが、されど元全国選手である。
こんなへちょい市民プールでまさか私より速い人がいるはずがない。と訳の分からない自信がどこからか湧いてきた。
ところがである
元全国選手の私にぴったりついて泳いでいる男性がいるではないか!
しかも私よりちょっと速かったりする。これには私もびっくりして壁につき次第男性の顔を見る。そして凝視する。
若いイケメン青年が目の前にいるではないか。
この青年も私の事を凝視していた。
きっと彼も私と同じことを思っていたのだろう。
彼が元全国選手なのは聞くまでもない。青年は華麗なるバタフライを繰り広げるではないか!きっとバタフライの選手だったんだろう。
あまりにも綺麗なストリームラインにうっとり。こんな青年の前であまりお粗末な泳ぎをしてられない、と私はテキトーに泳いでさっさとサウナへと移動。そしてスパへ。
するとそこにバタフライ青年が。
話しかけるのはどうだろう。。。と思いつつ彼を邪魔しないようにスパに入ると
「こんばんわ。元水泳選手ですよね?とても綺麗な泳ぎをされていてびっくりです。」
と彼から話しかけてきた。
そして
「あの、どこ出身ですか?スパニッシュマレーシアンって感じがするんですけど」
思いっきり日本人やねん
、と思いつつ丁寧に日本人だと伝えると彼はとてもびっくりしていた。そして彼は自分がボスニア人だと説明してくれた。
ボスニアってどこやねん???
実の事を言うと私はボスニアってのは旧ユーゴスラビアでヨーロッパのどっかにあるんだろう、くらいしか知らない。ボスニア戦争のお蔭で国の名前は知っていたというのが正しいであろうか。
ボスニア人なんて初めて会う。話を聞くと彼はこの地域に最近引っ越してきたという。
友達もまだいないからよかったら友達にならないかと。
恋愛なんてもうコリゴリだとさっきまで思っていたのだが、もちろんこんなイケメン青年の一人くらい友達になっても悪い気はしない。
そして次に
「あの、電気毛布お持ちですか?」
電気毛布って。。。いきなりなんやー!
これは新手のナンパか?
あまりにもびっくりしてハトが鉄砲豆を食ったような顔で硬直してしまう。