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16/2/20

インドの洗礼 第2章 その5 ~アケボノとトモダチ

Image by Olia Gozha

カルカッタから、「ブッダが悟りを開いた場所」ブッダガヤを経由し、ニューデリーへ。
インドを東から北西に向かい、斜めに切り取るこれが、俺たちの旅のルートだった。


 屋台で昼食を済ませた俺たちは、夕方のブッダガヤ行き列車の発車まで、しばし街中を散策して時間を潰すことにした。
もうある程度は慣れたが、街中には平日にも関わらずオッさん達がたむろしていて、こちらを日本人と見るや、声をかけてくる。


「トモダチ!」
「アケボノ!」


言うまでもないが、「トモダチ!」と声かけてくる通りすがりのオッさんとは、友達にならない方が良い。
「知らない人に声をかけられても、ついていっちゃダメよ」と、子供の頃オカンが言ってたから、間違いないです。


「アケボノ!」も意味不明。
大体曙はハワイの人です。


縦列駐車も、凄い。
車と車の間を、人が通れないくらいの間隔で、びっちり並んでいる。


アレみたいでしたよアレ。「ムカデ人間」。


え?知らない?
じゃあそのまま知らないほうが身のためです。


いやしかし、達人はミリ単位で攻撃を見切ると言うけど、これはゼロ距離だよな、、とか思ってたら、縦列駐車の車を出そうとする人を発見。
この状況からどうするのか非常に興味深かったので、どうするのか友人達としばし見物することに。


車の前後を確認する持ち主。
隙間は一切無し。電車の座席に定員一杯座っているような状況。


これは俺だったら途方にくれるな~と持ち主の顔色をうかがうと、まあなんとも涼しげな顔。
フン、とか鼻を鳴らしてホイホイと車に乗り込むと、ガッツンガッツン前後の車にぶつけて隙間を広げ、少しこすり気味に列から脱出して、風と共に去っていった。


そのあまりの粗雑さと強引さに、呆気にとられる俺達。
いやもうもうなんつーか日向君の強引なドリブルって感じでした。


あと、インドを語る上で避けて通れないのが、物乞い。


卑怯にも泣きべそかいた赤ちゃん抱きかかえたお母さんとか、殆ど素っ裸のちっちゃい子供が、あらゆる場面で良心をチクチクといたぶってくる。
道歩いてたら服の裾引っ張ってくるわ、タクシーで信号待ちしてたら窓をコンコンとノックしてくるわ、宿の入り口では待ち伏せしてるって具合。


インドに降り立って間もないころは、日本ではあまりお目にかからないそんな光景がショッキングだったし、
まんまと彼らの狙いにはまって、小銭やら買ったバナナとかちょいちょいあげてたりしたが、ある時から一切恵むのを止めた。


なぜなら、キリがないから。


それは例えるなら、結婚披露宴の招待客を考える時に、会社のこの人呼ぶならこの人も呼ばないとバランスとれない、とか思い始めると迷い込む、思考のラビリンス。


だから誰も呼ばないし、
だから誰にも恵まない。


まあそんな感じ。


そんなこんなやってると、そろそろいい時間になってきたので、駅に向かうことにした。


ワラワラと寄ってたかってくる物乞いの波をかき分け、
牛の「落し物」を避けながら駅へと突き進む。


駅に着くと、無秩序に蠢く人混みが見えた。
この中に分け入り、雑多な情報から必要な情報を掬い取り、目指す方向に進まなくてはならないと思うと気が滅入ったが、腹を決めて飛び込んでいった。


まずは乗るべき電車の情報を得ねば。


雑然とした駅構内をあっちへ行きこっちへ行き、迷いながらもなんとか時刻表を発見。
友人3人と見上げる。


と、視界の端でなんかパタパタしている。
なんだうざいな、と思ってそっちを見やると、牛の尻尾でびっくり。


いや~ほんとこいつらどこにでもいる。


おっと神聖な生き物だそうですから「こいつら」って言っちゃダメかも。すみません。


で、まだちょっと時間があるし、駅ナカでお茶でもしようかということになり、簡単なテーブルとイスがあるカフェ(?)を見つけて入ることにした。


入り際、入り口の脇を見やると、そこには大きめの花瓶が置いてあり、


中の乾燥した土くれには、枯れかけた植物が、まばらに突き刺さっていた。


続く

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