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16/2/19

自殺企図から始まる うつ病 との出会い3

Image by Olia Gozha

首吊りに失敗した私は、以前通院していた仙台駅前にあるNクリニックに車を走らせた。



車が赤信号で止まるたびに、ルームミラーで首の痕を確認し、

つい数十分前にあった(してしまった)出来事を思い返す。





首の痕は濃い紫色へとすこしずつ変色してきたようだった。

 よく見ると耳の裏側まで、それはきれいに痕がついていた。食い込んだ紐の模様までも見える。


 

 気が動転はしていたものの、運転は不思議と普通にできNクリニックに到着した。

IKEAの家具で整えられた、落ち着きのあるインテリアで設えられた見覚えのある内装が目に入る。



そして、落ち込んだ気持とともに、開口一番、受付の女性に

「自殺を試みてしまい失敗してしまいました。」


と、着ていたタートルネックの襟をめくりながら、うつむいて告げた。



 精神科では無いクリニックにこのような患者はいないだろう。

ここは内科である。




 初めてこのような症状を見るであろうその女性は

私の首元を見るや目を丸くし緊急を要するとのことで、

数人待っていた患者をわき目にすぐに診察室に案内され診察を受けた。


 


小さな待合室は、異様な私の雰囲気とスタッフの方の慌てぶりに

あっけにとられていたようだった。




診察室に通され、診察に入る。

さっぱりと清潔な風貌のN先生が、少し緊張したような面持で迎えてくれた。


先生はゆっくりとした優しい口調で



N先生「どうしましたか。何かありましたか?」


と声をかけてくれた。


その時、この一言が世間にも私を心配してくれる人がいるのだと不思議と感じさせ、

診察に入ったとたん堰を切ったように涙がこぼれた。


 状況の説明などできず、ただ涙があふれた。



自分でも何が起きているのか、

何故ここにいるのか、何故泣いているのかすらわからない状態だった。



 ただあるのは、首から耳の後ろにかけて残った紫色の紐の痕だ。

冷静になるようと諭されたが涙は止めることができなかった。



知らず知らずのうちに、気持ちがいっぱいいっぱいになっていたことに、

涙の塩辛さとともに気づいたのだった。

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Image by Jukka Aalho

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