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16/2/19

二十年間住み続けたごみ屋敷。おれはついに対決を決意した。そして。

Image by Olia Gozha

歴史と伝統のごみ屋敷


残念ながら我が家はごみ屋敷の部類に入る。

ドアを開けたらゴミ袋が天井までぎっしり、というような超絶ごみ屋敷ではないが、やはりごみ屋敷。

もちろん捨ててはいる。だが放置しているものも沢山ある。本やら衣類やら。要するに片付いていない。


片付けが下手くそだ。とにかくめんどくさい。

そして掃除は嫌いだ。まったく手を付けない。

それに輪をかけて、母親も片付けや掃除がダメダメだ(笑)


そのダメダメな家族が住み続けていつの間にか二十年。


部屋はわけの分からない大量の何かがうず高く積み上がり、寝る場所を除けば細いけもの道がかろうじて確保されている程度。

廊下も、押し入れも、納戸も、必ず何かしらがあって空いたスペースがまったくない。

お金はあればあるだけ使ってしまうと言うが、空間はあればあるだけ埋まってゆく。

だからもうそれが当たり前で、何も感じなくなっていた。



これではいけない。



おれはこのまま、ごみに埋もれて一生を終えるのか。



いやだ。



おれだって、絶対に変われるはず。



ずっとうずくまっていたのは、なんのため?

今、ここから、翔び立つためだ!!


多分に外的な要因もあったが(要するに他人にケツを蹴っとばされた)おれはついに、このごみの山と正面から対決する決意をしたのだった。


かくして、自分史上最大、空前絶後の「おそうじ大作戦」が幕を開けたのだった。


捨てども捨てども……。


まずは、捨てる。

とにかく捨てる。


意外と律儀に取ってある携帯電話や各種支払い明細。

放ってあったダイレクトメール。

好きだった娘にもらった、あれやこれや(笑)


ちょっと見れば、不要なものは意外と多い。

リサイクルとか何とかは考えず、無心に捨てる。


と言えばちょっとかっこいい(笑)


が、捨てども捨てども、ごみは減らない。

空いたスペースがまったく出てこない。


今回は本当に「徹底的に掃除する」と決意していた。

だからものすごく大胆に果敢に突撃した(と思うよたぶん。)


たとえば、テレビ。

ブラウン管仕様の巨大なものだ。が、あってももう意味がない。



捨てる。



それと繋がっていたビデオデッキ。なんとVHSだ。

確かにビデオはまだいっぱい残っているし再生デバイスは必要と思う。

だが、いつ見るのか。


「いつか使うから」の「いつか」は、ほぼ絶対にやってこない。

何の問題もなく使えるデッキだったが、思い切って。



捨てる。



さらにそれらが載っていたキャビネット。

これも手離す決意をし、解体して。



捨てる。



だがしかし。

空いたスペースはやっぱり、まったく出てこない。

一時的に散らかった状態にあるとはいえ、進み具合が遅すぎる。


せっせと片づけて、二日、三日……。

やはり全然片付いたようには見えない。



よろしい。

ならばこちらも本気を出す(そこ!今までは何だったんだ?とか訊かない)


明日の休日は朝から総攻撃だ。


そう誓いながら、ごみの山に埋もれて眠る夜。



おれは ぜったいに かわるんだ……。



圧倒的な戦力差


明けて休日。


今までなら休日はすっかり力尽き、昼過ぎまで寝ていた。

時には夕方まで寝ていることもあり、なにもせずに一日が終わる。

そんな週末だった。


その自分が、午前中から起きて活動している。

それだけでも驚異的な進歩だ。

量産型ザクから、赤い彗星に乗り換えたような気分。

「3倍!!!」

と思いながら、当たるをさいわい、ちぎっては投げちぎっては投げ(文字通り)


・ステレオ2セット

・ホットカーペット

・炊飯器

・電話機

・目覚ましほか時計4個くらい

・傘6本くらい

・加湿器

・座椅子

・アンプ

・なべ

・ヘアドライヤー

・コート2着

・スーツいっぱい


山ほど捨てた。


「直せば使える」とか「何となく捨てるのが面倒」とか、とってあった理由はいろいろだが、やはり「いずれ使う」は、絶対使わない。


中には捨てるに惜しい愛着のあるものもあった。

月の残業200時間を共に闘った目覚まし時計もあった。

しかしその時計は、動いてはいるものの針が曲がってしまっており、現役を続けるのは難しい。


成人式の時に今は亡き父親が買ってくれたスーツ、なんてものもあった。

これもくたびれてしまって、もう使う機会はない。


いろいろな感慨を味わいながらも日は暮れゆき、総攻撃は終了した。



。。。全然片付いてない。。。



いや、まだだ!まだ終わらんよ!!


さらに明日の果敢な反撃を誓いながら、ごみの山に埋もれて眠る夜……。


戦いは激しさを増し、泥沼へ。


さらに明けて休日二日目。

捨てる。ひたすら捨てる。

無数の缶カラ、ペットボトル、紙パック、ダイレクトメール、段ボール、シャツ他衣類。


。。。片付かない。。。


なぜだッ!!!


確かに、散らかる要素はある。

今まで曲りなりにも収まっていたものを引っ張り出したし、分類した数だけごみ袋も並んでいる。

それにしたって、あまりにも進み具合が悪すぎる。


「ふふふ、圧倒的じゃないか我が軍は」

ごみ連合軍の総帥の笑い声が聞こえてきそうだ。ちくしょうめ。


途方にくれて、気分転換に外出した。そして歩きながら考えてみた。


いちおう戸建なので、整理すべき場所や物が多いのは確かだ。

だとしても、もう100kgくらいは捨てている(正確にはカウントしていないが。)


いったいどんだけ溜め込んでんだこのごみ屋敷?

1トンくらいあるんじゃないのか?


あとどのくらいの時間がかかるか、ちょっと計算してみる。

例えば1日5分、不要物の処分(DMを開封して選り分けるとか、空き箱を潰して回収に出すとか、新聞整理するとか)をさぼったとして、1年溜めると


5×365=1,825分 すなわち約30時間

暮れの大掃除にでもこれを片付けようとすると、単純計算で30時間かかる。


10年で300時間

20年で600時間


1日5分を10分とすると、20年で1200時間


1200時間!!


これを1日8時間、つまり仕事をするような感覚で一日中掃除に明け暮れても、150日かかる計算になる。


。。。そりゃ終わらないわけだよ orz


本当に途方にくれた。

本当に終わるのか。これ。


家に帰る。

そして中を見渡す。

よく見れば、少しずつだが、地面つまり畳が見えてきている。


このまま進むしかない。

おれはかわるんだ、と誓ったのだから。


地道な掃討作戦に、次なる敵が。


ひと月が過ぎた。

空き缶空き箱古着古本

捨てて捨ててひたすら捨てて。


少しずつスペースが増えてきた。地道な行動だが、成果は着実に出ている。


そして進む先々に潜む、次なる敵。


綿ぼこり。


いやもう、これはすごい。

まるで腐海の胞子の海のよう(今度はナウシカか)


これが自分に関係のない所なら、王蟲の目玉をかぶって

「きれい。。。」

と現実逃避していればよいのだが、

逃げたところでじきここも腐海に沈みかねない。


逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ(今度はエヴァか)


そしてついに、最初の犠牲者が。

掃除機、名誉の戦死。


もともと調子が悪かったのがさらにひどくなり、見てみると、吸い込んだ紐などがホース内にひっかかり、そこに更にごみが溜まり、ホースが完全に詰まっていた。

もうどうにも手がつけられないありさまだったので、掃除機も買い換えた。

かくして歴戦の勇士もまた、不燃ごみの列に加わったのであった。合掌。

横着してなんでも吸い込んじゃだめだね。


こうして着々と軍備拡張にあい努め


・主力機は掃除機MkⅡからΖ掃除機へ換装


・ごみ箱は可燃ごみ用と廃プラスチック用複数にすべて再編成

分別廃棄するつもりでビニール袋などをごみ箱に入れず、どんどん散らかっていくのを防ぐため。各所のごみ箱を全部2個ずつ用意した。


・台所はさらにペットボトル用ごみ箱と、洗った缶などの水切り場を確保


・新兵器千枚通しを前線配備。

ペットボトルのラベルはがしに使えるほか、冷蔵庫内の溜まりに溜まった乳飲料をぜーーんぶぶちま

けるため(賞味期限切れの乳飲料がいったいどれだけあったのか、あまり想像しないことを推奨す

る)



かくして再編された連邦軍は、おそらく最後の敵、CD、カセット、DVD、VHS、MDそして書籍連合軍と対峙する。


いやもう、これはすごい(またか)


「おまえの掃除能力など貧弱! 貧弱ゥ!」

「その程度の断捨離など無駄無駄無駄ァアアア!!!」

「おまえは今まで買ったCDの枚数をおぼえているのか?」


今度は石仮面が頭の中で吠えている(←錯乱)


まだこれほどの強敵が控えていようとは、もう笑うしかないので、いったん撤退を決意。

すなわち、ある程度片付いた残りを押し入れに放り込んで、無理やり掃除をいったん終えたことにした。


終戦の日。

とにかく自分の部屋だけはきれいになった。

ここまでおよそ2か月。


やればできるもんだ。やった自分が一番驚いている。

まだまだ残りはあるのだが、今回はこれでよしとしよう。


こうして史上最大・空前絶後の「おそうじ大作戦」は、ワンクールが終了したのであった。

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