俺は 猫だ 名前は ない
かつては あったのだろうか
わからない
とにかく 今 俺は
新宿ゴールデン街に住み着いている
幼かった頃は
近くに 生みの親もいたような気がするが
いつだったか 親や兄弟は誰かに拾われ
今は近くにはいない
それに たとえ すれ違えども
互いに分からんだろう もう
飼い猫になってしまえば
毛並みも変わる
与えられた餌はさぞ美味いのだろうな
顔つきも 昔とは違うってもんさ
さて
今日は何処で餌を見つけるかな
!!
おいおいおい アブねぇな!
尻尾踏まれっかと思ったわー
ちょっと想いふけったら これだ
地上は危ないねぇ
高い所の方歩くのが安心だわ やっぱ
ちっ! あーあ お前 酔っ払いかよ
お前ら 呑気だねぇ
紙と餌 交換なんだっけ?
俺ら ないからねぇ そんな制度
あー 気づくなよー 酒臭ぇ
「おー猫ちゃん おいでおいて」
ちっ 酒くせーっての
近よんな! ニャー!!
あー めんどくさ
しゃーねぇ 一旦離れっか
「あらら 行っちゃったか~」
あぁ この街で生きるには
ルールってもんがあるのさ
ルールNo.1
-酔っ払いに近寄るべからず-
すげーからよ 俺らの嗅覚
酒臭さは 鼻にくる
直に息かいじゃあ 2時間は残るわけ
んで ルールNo.2
-歌舞伎町には行くべからず-
あっちは 違う猫の縄張りだ
喧嘩っぱやいし トラブルの種だ
だから 俺は
ここから先のラインは股がない
これは 昔
花園神社に住んでいたじぃさんに
耳からタコが出る位言われた
少し 行ってみたい気もするけどよ
ルールNo.3
おっ!いたいたいた!
このNo.3を犯してる奴を見つけたぞ!
百聞は一見に如かず よ!
ほーら 奴ら
また 甘い声なんか出してからに
おー おー おー
貰った! また貰った!
おー おー おー
餌に群れて 漁ってますねぇ えぇ?
何匹? 1、2、3、4....5!?
あれ? 1匹増えたなー おい
ん そりゃ 缶詰かい?
美味しいですかー?
情けねぇ 物乞いする猫なんざ
飼い猫でも 野良でもねぇ
餌欲しさに 同情貰って
甘い声で鳴いて 鳴いて
惨めなもんだぜ
それに群れちゃ 拾われねーよ
人間ってのは 群れの中から一匹は
選ばない 可哀想 ってな
バカだねー 飼われやしないぜ お前ら
明日 今の奴が来なければ
誰にでも 鳴いてみせるのかい?
情けねぇ お前ら 猫じゃねーよ もう
俺? 俺は
落ちてる物や ゴミなんか 漁らんよ
人から餌出されても 回れ右
俺は
生きた獲物を仕留める
在りし日の 猫達のように
レジェンドはみんな そうしてたのさ
そう ルールNo.3
-猫であれ-
俺は
飼い猫にも野良猫にも物乞い猫にも
ならない 俺は
猫としての血 を守るんだ
この3つが
俺の掟なのさ
さてさて なんだか 雨が降りそうだから
早めに餌を探すとするか
最近はよ ネズミも捕まえ辛くなったのよ
見つけんの大変で 大変で
そういゃあ
歌舞伎町には 随分と太った
デカイ奴らがいるって聞いたなぁ
まぁ じぃさん 行くなって言ってたしな
今度 いつか うん
この界隈でネズミに苦労した時 だな
つづく