突如現れた、謎のもふもふの到来に場はそこまで騒然としていなかったが、とりあえずMOHUMOHUさんに名前を聞いてみることにした。
「あの、えっと・・・・あなたは何者なんですか・・・・?」
あまりにも突然すぎる登場だったので、剣(ないと)は正直困惑していた。さすがにこれは虹空(にあ)もやり場がなくて困っているのでは・・・・と、一先ず虹空の方を見てみると、虹空はサボテンに水を与えていた。
「いっぱい飲んで、たっくさん育つんやぞ〜〜。ハイディ!ハイディ!フレハイディホー!」
一体そのサボテンはどこから持ってきたのか非常に気になったが、剣は見て見ぬ振りをすることにした。
「んー?オイラに聞いてるのかー?」
モフモフちゃん喋る。あ〜、モフモフしたいんじゃ〜^^^
「オイラは疫病神の”ヌーク”!オマエたちの持ってるペ⚫︎スノートの持ち主だぞ!」
このもふもふの正体はどうやら疫病神なのらしい。随分もふもふとした疫病神である。そしてペ⚫︎スノートの本来の持ち主でもあるようだ。
「ああ、ペ⚫︎スノートの持ち主だったんですか。じゃあこれ返しますよ。」
剣は直様ペ⚫︎スノートを返すことにした。そりゃあおまさん、落とし物を拾ったら持ち主に拾うのが当たり前。万国共通の道徳観に基づいた絶対的なお約束アルね。
「ノー!」
ヌークはその小柄な身体で飛び跳ね、剣の頭にピコピコハンマーをお見舞いしてやった。ちょっと驚いたけど、そこまで痛くはなかった。
「な、何するんすか・・・・・・」
善意でやったつもりなのに、返ってきたのがピコピコハンマーによるコンパクトな攻撃なのにはさすがの剣も納得はいかなかった。
「そのペ⚫︎スノートは人間界にある時点で人間界のモノになるの!だからそのペ⚫︎スノートはもうオマエのモノなんだぞ!」
ヌークはプンスカしながら剣に訴えかけている。そういやペ⚫︎スノートの所有権が自分のモノにあるという件は死神からも聞いた。だが、こんな意図も使い道もわからん意味不明な機械が自分のモノになったとしても、剣としてはどう対処すべきかわからないのである。
「いや、でもこんな訳分からないモノが俺のモノになったって言われても正直困るんすよ・・・・・・」
あ、話全く変わるけど、ここまでの文章は富士山の八合目にある山小屋で書いてたんだYO。まぁその辺は当時ね、活動報告で詳しく書いてたンや。今もう消えちゃったケド。
あ、ここからは後はもう富士山からとっくに下山しててもう家にいる状態で書いた文だから。さすがにあの短時間かつバッテリー残量がカスな状況で完成させるのはキツかったち!勘弁しくださいまち(❛ᴗ❛๑)
「それはまだペ⚫︎スノートを使ってないからそんなこと言うんだぞ!一度使ってみたら絶対面白いんだぞ!」
「いや、でも使うったって、需要とか供給とか云々かんぬん・・・・・てな訳でお引取りください。」
剣もちょっと粘ってみた。
「ね〜〜え〜〜!使ってよぉ〜!使わないとオイラがつまんないの〜〜!!使ってってば〜〜!!」
ヌークは仰向けになりちっちゃくてキュートな手足をバタバタさせながら駄々をこねていた。お前はデパートのおもちゃ売り場で子供騙しのスペース系もしくはバトル物みたいなお粗末な玩具(おもてゃ)が欲しくて泣きわめいてる子供か何かか。
だが、このままヌークを駄々っ子状態にさせるのも腹の虫の居所が悪いと剣は感じていた。なのでとりあえず虹空の名前でも吹き込んで見てペ⚫︎スノートの効果を見てみるか・・・・・・としたその時である。
「ねえナイトくん。」
「おあっとビックリ!!!僕たちが予期せぬうちに妹の娘撫(んこぶ)が!しかも天井に背中がへばり付いたままでの登場だァ!」
まるでエク⚫︎シストか何かで悪霊に取り憑かれた女の子のような行動を平気で私生活にぶっこんでくるので、お兄ちゃんはね、君のそこ直した方がいいんじゃないかなーって思うんだ。だからクラスの皆に内心煙たがれたりL⚫︎NEで君への愚痴・悪口・誹謗中傷を書くためのグループが盛り上がるんだよ?「顔がハツカネズミとブロブフィッシュをごちゃ混ぜにしてそこにサボテンを加えた感じ」とか。「服のセンスが致命的にダサすぎて、あれとダンゴムシを比べたらダンゴムシの方がオシャレに見える」とか。「八つ裂きにしてしまえ!」とか。君そんなこと言われてるんだよ?・・・・・・と剣はすごく説教したくなったが、さすがにやめておいた。
「な、何だよ・・・・何か用あるの?」
まだ動揺が収まっていないが、とりあえず平気な振りをして取り繕うことにした。
「お風呂入りたい。風呂入れて。」
「えー・・・・まだお風呂掃除済ませてないよ・・・・」
「じゃあお風呂掃除もして」
「娘撫ちゃんももうショウガクセイなんだからそのくらいのことはジブンでできるようにシマショウネー。」
妹の勝手な我儘には、白目ひん剥いて煽てるのが一番いい。
「はやくしろはやくしろはやくしろはやくしろはやくしろはやくしろはやくしろはやくしろはやくしろはやくしろはやくしろはやくしろはやくしろはやくしろはやくしろはやくしろはやくしろはやくしろはやくしろ」
娘撫は天井に張り付いたまま、まるでゴキブリのように地を這うかの如く、天井一面をハイスピードで急旋回していた。ちなみに動き回りながらじっとこちらを見つめている。こわい。やめて。
そしてその状態が6分34秒間経った時、突然ピタッと動きを止め、こちらをより凝視した。そして25分30秒間の沈黙が続いた後、娘撫はついに言葉を発した。
「オマエ、手ニシテイル機械ミタイナノハ一体ナンダ。」
娘撫の視線の先にあるものはどうやら剣ではなく、剣が持っているペ⚫︎スノートだったようだ。虹空は、どうも嫌な予感がした。
「いかん!剣、それを早く隠しっ・・・・コピぺァ!!!!!」
天井にいる娘撫の腕が瞬時に伸び、虹空に思いきり右ストレートをかました。「⚫︎NE PIECE」でいうなら、”ゴ⚫︎ゴムの銃(ピストル)”みたいなモノだと想像してほしい。
「邪魔ヲ、ス ル ナ ・ ・ ・ ・」
娘撫は剣目がけて即座に腕を伸ばすっ!剣(ないと)、たまたま反射神経が上手く働いてスグに避けるッ!剣が避けた後、娘撫の腕は床を貫通していた。ああ、家のローンが・・・・て嘆いてる場合じゃねえ!アイツ間違いなくワイを殺す気や!!!
「ハヤク、コッチニワタセ」
娘撫は床にめり込んでいた腕を即座に出し、剣の方へ手を伸ばした。もはや、今の娘撫は僕の知ってる娘撫なんかじゃない。ただの化物だ。
「な、ナイト!!逃げた方がいいんじゃねェか!?モタモタすんじゃねェ!!!」
狼狽えていた剣だったが、死神の一言に我を戻し、すぐに家中を彼方此方と駆け回った。
しかし、多田家(たたけ)には二階なんてモノはないので、逃げられる場所には限りがある。それに、いくら逃げても娘撫の手は壁を貫通してでもこちらまで追いかけてくる。故に、三分も経たないうちに剣は浴槽の中に隠れている状態となってしまった。娘撫の腕は収まることなく、家中のあらゆる壁を高速で貫通し、剣を探っていた。
「ドコダドコダドコダドコダドコダドコダドコダドコダドコダドコダドコダドコダドコダドコダドコダドコダドコダドコダドコダドコダドコダドコダドコダドコダドコダドコダドコダドコダドコダドコダドコダドコダドコダドコダドコダドコダドコダドコダドコダドコダ」
娘撫の不気味なリフレインと共に、腕の動きはどんどん加速してゆく。剣は、浴槽の中で恐怖に怯えていた。
「(うぅ・・・・ど、どうしよう・・・・)」
逃げ場を失くした剣は、恐怖のあまり、涙目になっていた。しかしである。
「(待てよ・・・・逃げ場はないけど・・・・僕にはこれがあるじゃないか! )」
剣は手元に持っているペ⚫︎スノートを見た。目的も使い時も謎で、効果が本当にあるのかも未知で意味不明な機械。これを使うことでこの状況が収まるかはわからない。しかし、追い詰められた今、これに頼る以外に他がない。
剣はすぐにペ⚫︎スノートの電源を入れ、録画ボタンを押した。そして、ついにマイクに口を近づけた。
「多田(たた) 娘撫(んこぶ)!!!!」
シャウト気味になってしまったため、娘撫もその音に感知した。
「モシヤ、風呂場カトイレニカクレテイルナ・・・・?」
剣はもう超(ちょー)しまったみたいな感情が湧き出た。うっかり叫んじまった!・・・・でも待て!効果が出るまで35秒ある!35秒間隠れ続けていれば何も問題がないじゃないか!頼む神様!どうか見放さないでくれー!!!
一方、疫病神のヌークと死神は、虹空を交えてUN⚫︎で遊んでいた。
「・・・ほいや!これで最後の一枚やでさァ!」
「「はい”ウノ”って言ってなーい!!!」」
「し!しまったァーーーッ!!メメタァ!!!」
「「はははははははははははは」」
「このUN⚫︎ってカードゲームすごく面白いぞ!オイラすごく気に入ったぞ!」
相変わらず能天気なヤツらである。
そんなこんなしている内に20秒経過した。剣は浴槽の中で怯えながら、ひたすら35秒になるまで数え続けていた。
「21、22、23、24・・・・」
すると突然、
「ソコカァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!」
「ひぎぃぃぃぃぃ・・・・・」
大きな破壊音の音がしたが、それは隣のトイレが破壊された音だった。剣、心臓が爆音でドキドキしながらも一時的に安堵。
「チッ、ハズレダッタミタイダナ・・・・ダガ、残ルパ風呂場ダケ・・・・」
束の間の安堵、まじ束の間。&緊迫。もはや絶体絶命に思えた。しかし、効果が発動するまで残り5秒だ!
「5・・・4・・・3・・・2・・・」
「オマエモコレデオワリダァァァァァァァァァァァ!!!!」
娘撫の腕は一気に風呂場まで伸びてゆく!
「1・・・・ッ!」
35秒経過!剣は無事に隠し切れた!第三部完ッ!!!(あ、まだまだ続くぉ。)
「ん、何これ。」
娘撫の腕は急激に縮み、天井から落ちた。頭から思いっきり床に落ちたので、虹空たちはちょっと心配になっていたが、当の本人はそれよりも股間に何かあるらしく、それを気にしていた。
「何・・・何なのこれ・・・?!」
娘撫は股間部を、もみっ、もみっとした。
「何で・・・何であたしにペ⚫︎スが生えてんのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
娘撫の絶叫は、家中に轟いた。そして、剣と虹空はついに確信した。
「「き、決まりだ・・・!!ペ⚫︎スノート、本物だ・・・!!!」」
「いやぁーーー!」
娘撫は恐怖のあまり叫びを上げ、裸足のまま家を飛び出した。パニックになってしまったのだろう。でもしばらくしたら落ち着いて家に帰ってくるだろう・・・・。
一同がそう思っていた、矢先である。
・・・・キィィィーーーガシャイーーーンギャリギャリギャリキャサリンッガココココココバキバキバキャキャキャガコッガコッガコッガゲッコウガコッグゴゴゴゴゴグンモッチュイーーンボゴゴゴゴゴドゥグワシャ!!!!!!
・・・・そう近くない車道で、車と何かがぶつかった音がした。
いや、プラスアルファで、明らかに良からぬ音も聞こえた。そして先の衝撃音の後、娘撫の叫び声は聞こえなくなっていた。
一同は、深く、重い沈黙に包まれていた。