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16/2/8

アリゾナの空は青かった(2)ツーソンに降り立つ

Image by Olia Gozha

ツーソンはTucsonと書き、インディアンの言葉で「暗い山の麓」と言う意味だ。一年の360日が晴天の日の、砂漠にあるオアシスのような学生の町である。

4、5月から10月までは夏の季節になり、平均気温は37度。初めてツーソンを訪れる者は、必ず「夏は路上のアスファルトの上で目玉焼きができる」とのジョークを聞かされるのである。

太平洋を越え、ロス・アンジェルス経由でローカル便に乗り換えて、そのツーソンに降り立ったのは、1978年1月。1月でも気温が時には20度くらいまで上昇することもあり、ここの異国人は、
見知らぬ土地にいて、寒さゆえ襲われる孤独からは、少なくとも救われることになる。

さて、空港を出るとアリゾナ大学の世話役寮生である、男子学生たちが数人、その日東京から到着した日本人留学生を出迎えに来ていた。その日は何人くらいの留学生がツーソンに到着したであろうか、今のわたしの記憶にはない。

「男子寮!」「女子寮!」という呼び声が飛び交う中、迎え客の中にわたしは知っている顔をみつけた。
7ヶ月ぶりで再会するイギリス人のロバート・ギアこと、ロブである。

ロブはバーミンガム出身で、イギリスの大学を卒業後、お役所に2年ほど勤めた後、単独で世界一周を試みていた、今でいうバッグパッカーである。イギリス本国からフランス、ドイツ、イタリア等のヨーロッパ諸国を経て、トルコ、インド、ネパール、タイ、香港から日本へ渡ったと聞く。

行く先々で英会話学校で英語を教えながら、そこに数ヶ月滞在し、旅費ができたところで再び移動する、という無銭旅行をしていたのである。当時は、今のように誰でも手軽気軽に外国旅行が出来るような時代なかった。若者といえば、普通は例外なくお金がなくて、それでも未知との遭遇に冒険心に 駆られそれを振り払うことができない者たちは、「無銭旅行」という手立てに出たのだった。

ロブもそのひとりで、ボロボロの旅行日記帳を肌身離さずの「世界一周」実施中であった。

彼とは大阪のアサヒビアハウス、歌姫バイト時代に、英会話スクールグループがやってきたときに、講師の一人として知り合い、もう一人のアメリカ人の講師、ブルース君が加わった。わたしたち3人は気が合い、と言うより、かれらとて少し英語で話せる日本人の友人を欲していたのであろう。

pcなどない時代のことだ、いったいどこから情報を得てくるのかと思うほど、面白い遊び場を探してきては、毎週末のように、京都のビートルズ音楽専門バー、禅寺、神戸のタコスバーなどと共に出かけたものだ。

わたしが渡米する頃には、3人グループは解散していた。ブルース君は1年間の体験留学を終えて、アジアをバックパッカー旅行しなたらアメリカ帰国の途につき、ロブはカリフォルニアを回り、次の目的地南アメリカへ渡るために、砂漠の町、ツーソンにしばらく滞在中であった。

わたしがツーソンにあるアリゾナ大学を留学先に選んだのは、ひとつには、砂漠の小さな町だ、きっと日本人が少ないだろうというのと、アリゾナ大学は悪くないというロブの話を手紙のやりとりで聞いたからである。


初めてのアメリカ、ツーソンの田舎町に友人がいるのは、大いに心強いものだ。

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