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16/2/10

新卒で証券会社に入社して1年間で100件以上の新規開拓を達成し、3億円の資金を導入した話(12)

Image by Olia Gozha

支店長からの呼び出し

税制の勉強を始めて数週間たったある日、直属の課長が支店長に呼ばれているのを目にした。

支店長とは、銀行や証券会社における、その支店で一番権力が高い人のことである。

僕ら社員からしてみれば、基本的に支店長は、社員全員の目標やノルマに対して進捗具合を管理するとても怖い存在である。

そして何より、支店長が言うことには支店の社員は絶対に逆らえないである。

仕方がない。

それがサラリーマンというものなのだ。

そんな支店長に、自分の直属の課長が呼ばれたのだ。

気が気でない。

たぶん、課長が課の目標の達成が悪いことについて怒鳴られるのだろう。

そして、その怒りは膨れ上がって、私たち課の人たちに降り注ぐことだろう。

まあ、いつものことである。


1-2時間くらい密室に閉じ込められて怒鳴られることもある。

そんなのは慣れっこなのだ。


「福元!!ちょっと前にこいや!!」


課長が支店長室から出てきた。


かなり怒りを露わにしている。

いったいなんだというんだ。



課長「お前、なんでこんなに数字が悪いんだ?もう支店に来て半年たつんだぞ?なのに、いまだに大口の販売すらできてねーのか?同じ一年生の同期は何件か投信売りさばいてるぞ?なのに、いまだにお前はしょぼい客しか見つけてこねー。お前がぼんくらなせいで俺が怒られるのだけは勘弁してくれ!!」


ぐうの音も出ない。

確かにその通りだ。

僕は支店に来て半年たったにも関わらず、一切結果を残していない。

会社とは利益を出さないといけないのだ。

利益を生み出していないのにも関わらず、給料を僕は会社からもらっているのだ。

しかも、みんなの前で怒られて、情けない。。。


課長「もう税理士とかいいから、投信売り回ってこいや!!!」

早急に結果が出せなかった僕が悪いのだ。

だが、この税理士へのアプローチは絶対にいつか大きな案件につながる。

そう信じてはいたが、やはり時間がかかる。

S先生の「どんなに君が良い人間で優れた知識を持っていたとしても、大事な顧問先である経営者を紹介はしない」という言葉が頭の中に浮かんだ。

この作戦は失敗だったのか?

やっぱり、証券業界はとにかく旧態依然のように、とにかくお願い営業をし回って、話を聞いてくれる人をただただアプローチかけるのが結果的に良かったのか?

僕は、だんだん自分の考えが信じられない気分になっていた。

ピーピーピー...........

その時、一本の電話が支店に鳴り響いた。

「お電話ありがとうございます。○○証券の福元でございます。」

K先生「どうも福元さん。いつも証券税制の質問を聞かせてもらっているKです。ちょっと、今日も非上場株式の相続の特例について聞きたいことがるんだけど、いいかな?」

いつもの証券税制の質問である。

こんな感じの電話は増えてきたのに、税理士から顧客の紹介は一切ない。

やっぱり、僕のしてきたことはただの便利屋にすぎないんじゃないだろうか。。

いつものように、自分の会社の税理士に確認しながら、証券税制の質問に答えた。

K先生「あーなるほどね。理解できた。いつもありがとうねー。」

「はい、また困ったことがあればぜひ。」

K先生「・・・あ、そうだ!そういえばさー、この前顧問先の社長が地元の銀行で勧められた投資信託が損しているか得しているのか全然わからんと!か言ってたんだよねー。なんか僕が見ても全然わかんなかったんだよね。分配金?ってのが入ってるからずっと得していると思ってたらしいんだけど、10本くらいいろんな投資信託が入り混じった状態で損してるのか何やらわからなかったんだよね。見てやってあげることって出来たりするー?」

「!?え、投資信託ですか?はい!わかりました!どういう投資信託なのかを客観的に見て、儲かっているのか損しているのかを伝えればいいんですね!わかりました!できますよ!」

K先生「そっかー。お願いするよー。無理矢理セールスとかしないでね笑」

「もちろんでございます。」

なんと、紹介が生まれた。

証券会社の営業は、見込みのお客さんから、投資信託を持っているという情報を聞き出すだけでも、ものすごい労力がかかるものなのである。

それを、中身まで見せてくれるのである。

「情報」は何よりも価値がある。

売り込むセールスはしないという条件付きではあるが、少し、希望が見えてきた。

初めての税理士からの紹介。

とにかく失敗は許されない。

慎重にいこうと心の中で決めたもののそれは一瞬にして打ち砕かれた。

課長「俺がついてってやるよ。俺が証券会社の営業ってやつをみせてやるよ」

僕は嫌な予感しかしなかった。


続く

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