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16/2/3

桜が舞うと、母のことを思い出します

Image by Olia Gozha


「これが最後の海外旅行になるね。」


母は、そう言っていた。


19歳の冬。


その、3か月後だった。


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「とうちゃんの夢、決めたよ。」


お風呂の天井を見上げて、6歳の息子に話した。


30代の父となり、「将来の夢=職業」に、違和感があった。


「やっぱり、家族でたくさん海外旅行に行きたい。」


----


喫茶店を営んでいた両親は、休日もなく働いていた。


物静かな母は、趣味もなく、友達と遊ぶこともない中、数年に一度、私と姉を海外旅行に連れて行ってくれた。


「あなたたちと海外旅行に行きたい。その目標で、毎日を生きていける。少しづつ、頑張って貯金するね。」


公言通り、まさに母の「生きがい」だった。


----


19歳の冬。


イタリア旅行の身支度をしている時だった。


「これが最後の海外旅行になるね。」


と、母は言った。


知らなかったし、知らないフリをした。




3か月後。



母は「ちょっと体調が悪い」「すぐ帰るね」と、入院した。




母の笑顔を見たのは、その日が最後だった。



----


「で、とうちゃんはなんで家族で海外旅行に行きたいの?」


長男は、目をキラキラさせた。


30代の父となり、「将来の夢=職業」に、違和感があった。


何を対価にお金を得て、それをどんな理由で使いたいのか。


夢って、「生き方」のことなんだと思った。


「一番好きな奴らと、一緒に感動したい。一番楽しくて、一番嬉しかった思い出なんだ。」


ほうほう、とそうたろうは納得したように続けた。



「とうちゃん、行きたい国があるの?」


思い浮かぶのは全て、母と姉と行った場所だった。


「伝えたい。」心が、そう言っている。



きっと、こうやって続いてくんだよな、母ちゃん。


あなたが少しづつ、貯めてくれたのは、お金でも、旅行でもなく、想いだったんだよな。


カタチがないから、世代を超えてつながっていけるんだよな。



「つながっていく」


これが、「家族」ってことなんだろうな。


家族って、守るものじゃなく、「伝えていくもの」なんだろうな。


最近、そう思う。


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冬が終わり、桜が舞うと、思い出す。


温かかった、あなたのことを。


その度に膨らむ「ありがとう」は、


自分の家族に、返していきます。


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