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16/1/18

Two feelings 1章[光の声]

Image by Olia Gozha

僕が高校生になって2年過ぎたある時、交通事故に遭った。お父さんとお母さんは命を取り留め、僕はこの世界(地球)から切り離された。神様は、次に生まれ変わるなら男か女。どちらがいいか聞いてきた。僕は答えた。「任せるよ。決めれるなら苦労はしない」と。目覚めた時、そこには蒼(男)と紅(女)の対立した世界があった。

1章[光の声]


「貴方は生まれ変わるとしたら男か女。どっちがいい?」


「任せるよ。決めれるなら苦労はしないし」


僕はいま誰と話しているのかな。不思議なことに記憶が全くない。悲しかったこと、嬉しかったことが思い出せない。


神様は僕に道を作る。光る橋。その先にはなにも見えない。


「この道を行きなさい。貴方の望んでいたことを叶えるために」


「う、うん」


僕はゆっくりと歩き出した。やがて光る橋を通り過ぎ、目の前が真っ暗になる。


(え?なになに?)


突然の事だったからか僕は足を止める。すると深い眠りに誘われて、地面へと倒れ込んだ。


(僕の望むこと?わからない)


(わからないよ。)


「おい!」


僕の側で誰かが大きな声を出している。男の人?


「むにゃむにゃ」


目を開けた僕は周りを見渡した。広い草原、空は雲ひとつない蒼い空が広がっていた。


「ちょ!俺を無視すんな!」


「え、誰?」


僕は後ろを振り返ると大きな男の人が立っていた。


「わぁ!怪物!」


「誰が怪物だぁ?」


大きな男の人は呆れた顔つきで僕のことを見ている。頭を掻きながら。


「お前誰だ?」


「それ、こっちの台詞!」


「すまん」


「じゃあここは何処なの?」


「そうだな。ここはフェルア街の外ってところか。」


この男の話しからするとここは街の外らしい。そのことを知った僕はさらに質問を続けた。


「じゃあ」


「一旦質問はまて。とりあえず聞いておくが、お前の名前はなんだ?」


「椎名 遥(しいな はるか)です」


「俺は新屋田(あらやだ)だ。」


(名前。覚えてたのかな?)


そんなことを考えながら、僕は草の生えた地面に座り込んだ。


すると新屋田は僕をひらっと持ち上げる。


「な?なにをするの!」


僕は持ち上げられた時、咄嗟に声が出ていた。


「お前軽いな。」


「嬉しくないよ!」


僕は何故か新屋田にお姫様だっこされていた。


「降ろしてよ!恥ずかしい!」


「なにを言っている。俺はこれからお前をフェルア街に連行する。」


「は、はなせっ!」


しかし、新屋田の力に負け抵抗が出来なかった。


(僕の体重40キロ一瞬でばれたぁ)


新屋田は。


(それにしても軽すぎる。こいつ、もしかして)


そしてフェルア街に入る。そして注目の的になった。ある意味で。


***


お姫様だっこされたまま僕はフェルア街の何処かに連行されている。恥ずかしくて顔を手で覆っている。


「も、もう良い?」


「ダメだ。」


「ど、どうしても?」


すると新屋田の口が少し歪んだ。


「お前、いま空に見えるあれ見えるか?」


僕はため息を吐きつつ。


「うん。あの紅い星ね。あれがどうしたの?」


「いや。なんでもない」


ザワザワ


(なんかさっきから騒がしいんだけどー!)


顔を覆う手を離してみた。すると周りには、

男!男!男だらけだった。


「ひぃ!」


「なんだ?一応、想像はつく。」


「この街やだ。」


僕が「この街やだ」と言った瞬間。周りにいた男たちは静かになった。


「おい!ここは蒼の星だ。男しかいないのは知ってるだろうが!」


「知らないよ!!」


「とにかく謝れ!」


「うぅ〜」


僕は新屋田にお姫様だっこされたまま、周りにいる人たちに謝った。


「許してやるよー!」


周りにいる男たちは許してくれたみたいだ。よかった。


(あ〜。面倒くさい)


「ほら、ここがフェルア街のBOSSがおられる屋敷だ。」


屋敷はとても優雅な雰囲気が漂い、僕を歓迎しているかのよう。


「ねぇ。トントン拍子で変な事が起きてるんだけど。あともう降ろして!」


「ふん、わかった。わかった。」


新屋田は僕を地面に下ろすと屋敷のドアを叩く。


僕は逃げようとしたが、新屋田に止められた。


「フェルア様!おられますか?」


ガタガタガタ。


「どなた様で?」


「新屋田だ。フェルア様と話したい。ドアを開けてくれ」


するとお屋敷のドアが開き、執事らしき人が現れる。


「フェルア様は2階です」


「わかった。おい、行くぞ。」


僕は仕方なく新屋田について行った。


「ねぇ。僕になにをするの?」


「それは俺が決めることじゃない。」


トントン。


「新屋田です。フェルア様!」


「入れ。」


新屋田はドアをゆっくり開け、僕を中へ入れた。


バタン。


「で、新屋田。なんの話しだ?こっちはちょっと多忙でね。」


「はい!街の外でこんな物を見つけまして。」


「僕は物じゃないよ!!」


フェルア様は新屋田の後ろにいる僕に視線を向ける。


「ほう。可愛いな」


「死んで下さい。今すぐ」


「おい!てめぇフェルア様になんてことを!」


「止めろ。大人気ないぞ。」


フェルア様はふっと息を吐き、本題に戻す。


「新屋田が連れてきたのか?この女を」


「やはりそうですか?!」


「違うからぁ!!」


「まぁまぁ。怒るな少年よ」


「ですね。フェルアさん。先程はすいません。」


フェルア様は高笑いしつつ、机のペンと紙に手を伸ばす。


「とりあえず名前。」


「椎名 遥です!」


「え〜と。しいなはるか。よし」


「なにがですか?」


「こいつの処分は?」


「新屋田、少し黙れ。」


「は、はい!!」


新屋田は注意されたからか、ドアの外へと移動した。


「ごめんな。新屋田はあんなやつだが根はいいやつだ。勘弁してやってくれ。」


「それは、はい。」


「まぁ、いい。ところでお前は何処から来た?」


僕は知っていることを全て告げた。僕。椎名 遥がここに来る前のこと、神様に会っていたこと。


「そうか。君は優しい人だったんだね」


「と、言うと?」


「ここの世界に来るには2つしかルートがないことだ。1つは自分から命を絶った人。2つ目はそれ以外で死んだ時、神様が仕分けてる」


「聞かれたことはどっちで生まれ変わりたいかだからね」


フェルア様はペンをスラスラを走らせる。そして1枚の紙切れを僕に手渡した。


「今日の話しはここまでだ。とりあえずフェルア街の入街証を渡しておく。これがあればこの街からは追い出されない。」


「はい。ありがとうございます。」


「ほいほい。じゃあ気をつけて帰れ。」


そう言ったフェルア様は積まれている本に手を伸ばしていた。


「失礼しました。」


バタン。


僕は、ドアを閉めて正面を向くと。


「フェルア様はなんて?」


「わぁ!びっくりしたー。」


「いちいち驚くな。で?」


僕は新屋田にこの街に居て良いと言われたことを話した。


「そうか。それは良かったな。じゃあ俺はここで失礼する。達者でな」


「ちょっ!」


僕が止めようとしたがすでに遅かった。


「1人でなにすればいいのー?」


心の中の声が出てしまった。誰もいない。


(ん〜。お金もないし。)


ガタガタガタ。


「さっきの少年かな?」


「あ、はい。そうです」


お屋敷の執事が僕を心配して来てくれたようだ。


「新屋田さんは無責任ですからねぇ。すいません。」


「いや、そんな謝られてても」


執事は笑顔で僕と話してくれる。なんて優しい人なんだろうか。


「よろしければお風呂に入ってはいかがでしょうか?その服はもうボロボロですよ。」


「いいんですか?こんな知らない人にお風呂なんか」


「構いません。さぁ、案内致します。こちらへ」


僕は執事の後をついて行った。


「ねぇ、執事さんはどうやってこの世界に?」


「はて、なんのことやら。私にはわかりませんな」


「そうですか」


お風呂に到着すると執事は笑顔で戻っていく。


「ごゆっくり。お着替えはこちらで用意させていただきます。」


僕は、着ている服をさっと脱いでお風呂に入った。


そして入った瞬間、広い露天風呂が僕の視界に入ってくる。


「ひ、広い!しかも露天風呂なんて」


驚きつつも、僕は頭と身体を洗い始めた。シャンプーとボディソープ。柑橘系の香り。


バシャア


(生き返る)


ほっと一息。そしてふと思った。


(で?この後は?)


ガラララ


「だっ誰?!」


「先客がいらっしゃったのですね。」


入ってきたのはまだ若い青年だった。しかし、喋り方からしてとても偉い人だとわかる。


「で、君は何故ここに?」


「執事さんがですね、その。」


「あぁ。執事ね。それならいいよ。」


そう言って若い青年は身体を洗い始める。


「私の名前はリアスだ。君の名前は?」


「椎名 遥です」


ガタン。カラン。


「えーと。フェルアさんの」


「息子ですね」


「やっぱり!そんな気がしました」


バシャア


「さて、君のお家は何処かな?」


「えーと、ないです。」


「そうですか。では、私が宿を手配致しましょう。これもなにかの縁です」


僕は心の中で喜びつつ、リアスさんの提案を受け入れることにした。


「場所はじぃやに聞いて下さい。」


「あ、ありがとうございます。じゃあこの辺で失礼します。」


僕は露天風呂から上がり、服を着替えた。


用意されたいた服は真新しい制服らしきもの。Yシャツに蒼色のジャケット。カーキのズボン。あとレイピア?


疑問に思いつつ、執事のところへ向かう。


カタコト


「すいません執事さん。」


「おや。その服似合ってますね」


「ど、どうも。それで、え〜と。リアスさんが宿を手配してくれるみたいで、場所を教えてくれませんか?」


すると執事さんは胸ポケットから地図を出した。


「いまいる場所はここ。フェルア様のお屋敷。貴方の泊まる宿はお屋敷から少し歩いた先です。」


「でも、この街。来たばかりだからあまりわからない」


「よろしければこの地図も持っていって下さい。」


執事から渡されたフェルア街の地図。僕は執事にお礼をしてお屋敷を後にした。


ここに来るまで殆ど顔を覆っていて街がどうなっていたかよくわからない。一つだけ分かることがある。それはこの街には男しかいない。


「僕の泊まる宿は」


地図を見ながら歩いているが一向に宿らしきものが見えない。


「おう?椎名じゃないか。」


僕は地図を見ながら宿を必死に探している。新屋田の声は聞こえない。


「待て。お前の宿はここだろう。」


「はい?」


新屋田のとなり辺りにある小さな建物。看板に[蒼の防衛団]と書かれている。


「このボロ屋がですか?」


「ボロ屋だと。まぁ、いい。来い。」


「ところでなんで新屋田さんがここに?僕を捨てたんじゃ?」


「なにを言ってる。お前は蒼き防衛団に配属されたんだろう。なら宿、というより基地だなこれは」


建物に入ると、床の木が腐食していたりキッチンがボロボロだったりしている。


「ボロ屋ですね。」


「違う。これはカモフラージュの為だ。文句言わずにさっさと来い!!」


新屋田の迫力に押され、僕は喋らなくなった。


ボロ屋内を少し進み。壁に埋め込んである花瓶に新屋田が触れる。


すると花瓶とともに壁が半分に割れ、蒼い階段が現れる。


(えぇ〜!)


「この先だ。」


ガチャン。


僕たちが階段を降り始めるとともに壁が再びしまった。


「どうだ。凄いだろう。」


「うん。素直に凄いと思うんだけど、カモフラージュの為ってなにが?」


「そうだな。説明してやろう。」


今、この世界で起こっていること。男と女の対立。それは今も続き、多くの人が犠牲になっている。その犠牲者は男のみ


「俺たち蒼き防衛団は女どもの侵略を阻止し、出来れば捕獲してこの星の一番偉いダルア様にお届けするのが主な役割だ。」


「捕獲してどうするの?」


「わからん」


新屋田はこの質問には答えられないらしかった。


カタカタ。


階段を降りた先に待っていたのは、僕と同じ服を身につけ。レイピアを腰に下げている男たちだった。


Two feelings

1章 終










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