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13/4/18

フリーランスになってみた

Image by Olia Gozha

その時私は26歳だった。とても寒い冬で、仕事が忙しかった。私はとても焦っていた。年が明けて春が来る頃、桜が咲く前に27歳になってしまう。27歳になったら、その一年間のうちに「何か」しないと、それ以上生きていけない気がした。

当時ちょうどリリース直前のサービス開発に携わっていた私は、毎日のように終電を逃してはタクシーに乗り、3時間ほど寝てすっぴんで出社するという日々を繰り返していた。私は父を亡くして間もなく、年末の楽しいお酒の場にも顔さえ出せず、その不安を、ひとりで耐えていた。不安が、孤独が、恐怖が、押し寄せて、真っ黒いどろどろとしたその渦に巻き込まれないよう、ただひたすらに耐えていた。

このまま1年たったら、来年も同じ状態だったら、否、春や夏が同じように一人迎えなければいけないものなら、私は確実に1年以内に、嗚呼きっと、耐えられなくなると思った。限界が近づいていた。わたしは恐れた。わたしは目を瞑った。その道しかないように思えた。判断力が衰えていた。渡りに船と言って、よく知らないその小さなボートに乗った。

わたしはその会社をやめて、仕事で知り合った知人が設立するという小さなウェブベンチャーに入社した。そのベンチャーは、8ヶ月で退職を決意した。在籍期間は、実に9ヶ月であった。そしてとうとう、わたしは「フリーランス」という立場になったのだ。

フリーランスなんぞ、立派にやっている人はやっているが、なろうと思えば会社員をやめて開業届を出すだけである。「なる」だけなら誰にでもできるのだ。

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