おとうさん。
あなたがあの世に逝って11年経ちました。
時がたてば経つほど、あなたを近くに感じています。
時がたてば経つほど、あなたからもらった宝物をありがたく感じています。
おとうさん。
あなたは僕に生きる力を与えてくれました。
どんな困難にも立ち向かい、自分の足で大地に立つ力を。
自分の可能性を信じ、最後まであきらめない力を。
おとうさん。
あなたは僕にやさしさを教えてくれました。
損得は関係なく、ただ困っている人に手を差し伸べることを。
ささやかでも、できることからすぐにして差し上げることを。
おとうさん。
11年前の秋、あなたの余命3か月を突然お医者様に告げられました。
72歳にして腹筋100回くらいは平気なあなたでしたので意味がわかりませんでした。
あなたが病気になった姿も記憶にありません。
その宣告は僕にはあまりにも突然で残酷でした。
おとうさん。
あなたは余命3か月の宣告通り逝ってしまいました。
しかし、その3か月の間のあなたの生き様が僕の宝物です。
おとうさん。
あなたは病室に2歳の娘を連れて行ったら、いつもベッドから飛び起きて、
娘に腹筋を何度もして見せてくれましたね。
おとうさん。
あなたは病室でいつも笑顔でした。そして2歳の娘に歌ってくれました。
その唇は見たこともないどす黒い紫色で少し出血してましたね。
おとうさん。
あなたは最後まで痛いとか苦しいとか僕の前では、
いっさい言わなかったですね。
おふくろだけの時は弱音をもらしていたようですね。
おとうさん。
とうとう、あなたは力つきました。
僕は出張でその時に立ち会えませんでした。
おとうさん。
出張から帰った時、あなたは死装束に包まれていました。
見たこともない、おだやかな顔をしていました。
おとうさん。
はずかしい話しですが、僕はあなたの死を1年位は
受け入れませんでした。あなたが生き返ると確信していました。
それくらい、あなたとの別れがつらすぎたのです。
おとうさん。
今でも鮮明に覚えています。
それは、あなたを火葬した日のことです。
おとうさん。
あなたの骨はスカスカでボロボロでした。
おとうさん。
その時、あなたのすごさに心が震えました。
娘に腹筋を見せてくれたとき、歌を歌ってくれたとき、
あなたの骨はボロボロだったんですね。
おとうさん。
あなたは最後の1秒まで生きる力を僕たちに見せてくれました。
おとうさん。
あなたの生きる力を必死に受け継いでいきます。
おとうさん。
葬儀の後、知らない人々があなたを沢山お参りに来ました。
みんな、泣きながらあなたに「ありがとう」って言ってくれました。
おとうさん。
たくさんの人があなたの親切に感謝してくれていました。
おとうさん。
あなたのように小さな親切をして差し上げたいと思います。
大きくなくてもよい。小さな親切をすぐにして差し上げます。
おとうさん。
おとうさん。
おとうさん。
本当は逢いたい。
今の僕を見てほしい。
今の僕を叱ってほしい。
今の僕を誉めてほしい。
おとうさん。
おとうさん。
おとうさん。
時が経つほどに、あなたを近くに感じます。
あなたが残していった宝物をありがたくおもいます。
おとうさん。
あなたの想いを引き継ぎ、いつかあなたのもとに逝きます。
その時はやさしく迎えて下さい。