どんのものがたり
今から12年以上も前の話です。当時の私は、大好きな愛猫を失った寂しさ別れを なかなか認める事ができず毎日のように泣いていました。何ヶ月も寂しさが消えることもなく、でかける意欲も沸かず、張り合いもなく、ただ、なんとなく日々を過ごしていました。あまりの落ち込みぶりを様子を見かねた友人に「自分の思いを1度しっかり整理する為に 日記でも書いてみれば?書く事は嫌いじゃないでしょ」とアドバイスされ、書き残す事にしました。それがこの日記です。
うちには猫が3匹いました。
「てん」「あん」・・・そして・・・「どん」・・・。
長年HP・ブログを運営し続けていく中で、「てん」と「あん」の話題に触れる事はありましたが
「どん」の事を書いた事がほとんど ありませんでした。
それには、ちょっとした「理由」があります・・・。
彼は・・・「歩けない猫」だったんです・・・。
2002年2月8日-朝-
別れは突然やってきてしまいました・・・。
彼は「天国」に旅立っていきました・・・。
残された私は・・・悲しみみを乗り越えて頑張っていかなければなりません。
でも、自分の心の中だけじゃなく、彼の想い出を残しておきたいので、ここにそっと書き留めます。
彼との「出会い」から・・「別れ」まで・・・
そしてわかってもらいたい・・・
北海道の片隅に・・こんな「猫」が居たということを・・・。
1「キミ」と出会ったのは11月某日。雨の降る夜だったね。
締切前で超多忙な一日を過ごし、残業を終え、私はあと900m程で家に着く!…というところを走っていた。
ふと雨が止み、暗闇に光るアスファルトを対向車線上でうずくまっている「何か」を見つけて、慌ててUターン・・・。見るとそれは、少し前に車にひかれたばかり!?と思われる「猫」だった。
そのままにしておいては、更にひかれてしまう!!
放っておくことなんか、とうていできず、すぐに歩道に避難させ、一旦家に帰り、段ボール箱とバスタオルを数枚用意し、事故現場へ引き返す。
ワンコの散歩途中だったらしい?オバチャンが・・・
「どうしたの?」とやってきて、「見慣れない猫だね~」と一言。
「でも けがしてるから病院に連れてってあげないと・・・」
「ちょっと待ってて!」
そう言うとすぐそばにあるらしい自宅から電話帳を持ってきてくれた。
借りた電話帳で近くの動物病院 数件に電話したけど、どこもほとんど、診療時間は終わっていて(夜9時を回ってたので 当然だけど)
ようやく営業していた夜間診療がウリ?の病院に行き当たった。
・・・・と、喜んだのも つかの間・・・
「料金は、緊急手術の場合一般的に○万円前後で、 夜間診察料も別途かかりますけど・・・」
いきなり、こんな説明を始めた。
「飼い主さんが付き添いを・・・」と言いかけたところで
「あ、、飼い主ではないんです・・・実は・・」と事の成り行きを説明する。
私が、偶然 現場に居ただけの「第三者」だとわかると
手のひらを返したように
「それだと診察料金の所在が・・・云々・・・」
またお金の話?
「料金はこちらでお支払いしますから・・・」と言っても
「飼い主さんが居ない場合は、 あとあとトラブルになる場合が多いので・・・」
お金がどうとか、トラブルかこうとか?言ってる場合じゃないのに!
頭にきて、電話をがっつり切ってしまった・・・(苦笑)
「医者のくせに動物の小さな尊い命を助けたいという意志はないのですか!」
と言いたい気持ちをぐっと抑えて・・・(苦笑)
「あ”” ここくらいしか開いてる病院なかったんだ・・・」
と後悔するもすでに遅し。。。
2 「K先生」との出会い
その後すぐ、そういえばすぐそばに「動物病院」があった!?」
と思い出して ダメもとで、直接交渉に行ってみることに。
当然、診療はとっくに終えている時間。
さっきの事があるから、はっきりいってこれっぽっちも期待していなかった。
「時間外ですから・・・」という返答が、まあ、当たり前・・・。
「居留守」をされれば、そこで 「The end」
でも、たとえ1%でも可能性があるかもしれないのだから・・・!
「わらにもすがる思い」で住居兼病院となっている動物病院玄関のチャイムを鳴らしてみる・・・。
「ピンポーン!」
「はい?どちらさまでしょう?」
すぐにチャイムに応じてくれた。
「あの・・・すぐそこで車にひかれた猫を見つけちゃったんですけど・・・」
すると先生らしき男性・・・
「そうなんですか?今、入り口開けますから、ちょっとお待ち下さい」
何とも快く、私たちを 受け入れてくれた。
ほどなくして 中に入ると背が高くてガッチリ体型、
30代後半くらいの優しそうな男性が立っていた。
メガネをかけ、室内着の上に白衣を羽織りながら
「あ~、でもちょっとビール飲んじゃったなぁ・・・」
と優しく苦笑する先生。
でも次の瞬間にはキリっとした表情で、猫に聴診器を当て
「事故の状況はどうだったんです?」と訊ねる。
この方こそが、今や我が家の猫どものホームドクター?となる「K先生♪」
私にとっては、現代の「赤ひげ先生」とも言える尊敬できる方だ。
結局、この日は簡単な検査と点滴治療を施し、
「オス猫ですね、推定年齢6歳くらいかな~?顔にケンカ傷があるから、もしかしたら野良か・・・
外猫なのかなぁ~?
命に別状はないようですが、ちょっと気になる事があるので・・・今夜は入院させてもらって、詳細は明日詳しく調べてみます。明日の夜 来ていただけますか?」
こうして、[その猫]と私たちと先生による・・・奇妙な三角関係?が始まった。
悲しみと衝撃の事実
この猫の飼い主が居ないかどうか?という事がまず、問題だった。
翌朝、手始めに某媒体の『迷い猫』コーナーに飼い主捜しの内容で載せてもらう手配をとる。
この日は、まるで仕事が手に付かず、業務が終わると同時に会社を飛び出し、動物病院へ直行!
昨日は時間外で、わからなかったけど、ここはけっこう人気のある動物病院らしい。
小さな待合室が人と動物たちで溢れていた。
「くりてんさん、どうぞ診察室へお入り下さい」
呼ばれて中に入ると、助手の女の子(人間で言うところの看護婦さん?)が3人もいた。奥さんと二人でやっている小さな個人動物病院?と思っていた私はちょっと驚いた。
奥にある色々な機材の置かれた部屋に通されると、そこには渋い顔をしたK先生がいた。
「先生、昨日は どうもありがとうございました」
「それは気になさらなくて結構ですよ~。そよれり重大な事実があるんですけどね・・・」
間髪入れずに先生が続ける。
「この子・・・背骨折れちゃってるんですよね。
それだけだったら良いんですけど・・・もしかしたら、神経までいってるかもしれない・・・」
「神経?ってことは、もしかして・・・?!」
「はい、もしそうだったら・・・
この子は一生 歩けないかもしれない・・・」
私は言葉を失ってしまい・・・気が付けば目から とめどなく涙が溢れていた・・・。
「更に、それを確認するためには・・・造影剤を入れて検査しなくてはわからないんですけど・・・
この検査が非常に危険が伴うもので・・・
造影剤を入れただけで「ショック死」してしまう例が過去に けっこうあるんですよ・・・
「・・・・!!・・・」
「くりてんさんが本当に飼い主さんだったら、どうするべきか?
ご判断を委ねて 診療できるんですけど・・・・
こういう場合は非常に難しいんですよね・・・
変な話になっちゃいますけど、飼い主さんの考え方っていうのはそれぞれ違いますからね?
『その検査じゃないとわからないんだったら、もしダメでも仕方がないのでやって下さい』と思うのか?
『たとえ歩けなくても良いから、絶対に死なせたくないです!』と言うのか?
ひどい時だと『検査・手術で莫大な料金がかかるんだったら、安楽死させちゃって下さい』といわれる方も、中にはいらっしゃるんですよ・・・
でも私は仕事なんで、飼い主さんの言われたとおりにすることしかできない・・・
もどかしい現実です」
「・・・何はともあれ・・・まずは飼い主さん探しが先決ですね・・・」
苦難の飼い主さん探し
それから 本格的な私たちの飼い主探しが始まった。毎晩、仕事を終えてから1~2時間程度、事故現場近辺のお宅を1軒・1軒 歩いて回った。
「猫 飼ってますか?」
「最近、お宅の猫がいなくなっていませんか?」
この聞き込み?は・・・しばらくの期間かけて、やったけど
「んなもん いないよっ!!<ブッチン>」
と冷たくインターホンを切られたり・・・ここでは書けないような罵声まで・・・(なぜ?(T^T)
精神的にも体力的にも けっこう過酷な日々だった・・・。
でも同じように犬猫を飼っているお宅というのは、とっても暖かく迎えてくれ
「裏のお宅にも猫が居たはずだから、寄ってって ごらんなさい」
と言ってもらえたり・・・。
「お嬢さん、偉いわね~、猫好きなんでしょう?」
「うちでも猫飼ってるから、どうしても放っておけなくて・・・」
「お茶でも飲んで行かないかい?」
とお誘いを受けたり・・・(断ったけど・・・(笑)
そんなある時、玄関へ入ると見覚えのある顔が・・・?!
事故当夜、電話帳を貸してくれたワンちゃん連れのオバチャンのお宅だった。
「あら?あの時の事故の猫ちゃん、飼い主見つからないの?」
「ああっ!あの時はありがとうございました!」
「なんもだよ~。あれからずっと探してるの?
あの猫ちゃんは、どうなったの?今どこにいるの?」
質問責めにあったので(笑)
ちょっとその後のいきさつなどを簡単に話して、
「もし何か情報あったら連絡するから連絡先教えてちょうだい」
言われるままに、名刺に電話番号を書いて置いてきた。
あるお宅では・・・
「あらっ!うちの○○ちゃん、そういえば居ない!」
「いつからですか!?」
「つい1時間ほど前!!」
「じゃあ違いますね・・・事故は3日前ですから・・・」
「あっ、そうなの? でもどこに行ったのかな・・・・
○○ちゃん!!ああ~居た!居た♪(安堵・・・)
そんなところに寝てたのね~」
たかが動物と言え、飼っている以上 みんなやっぱり「家族」なんだな~、なんて
穏やかな気持ちになれる事が唯一の救いだった。
疑惑の電話飼い主探しをする日々の中、当の「猫」は日増しに体力を回復し、食欲もでてきた。
だけど先生の予想通り、一向に歩く気配はない。
そんな中、先日依頼しておいた某媒体に「例のお知らせ記事」が掲載された。
数件の問い合わせがあって、一人は実際、病院に見に来てくれたけど、
残念ながらこの方の飼い猫とは違っていた。(あの方の猫ちゃんは、無事見つかったのかな・・・?)
聞き込みにも、もはや限界を感じはじめていて・・・
有力情報を得ないまま、ただ時間だけが過ぎ、煮え切らない毎日を過ごしていた
それからしばらくして、1本の電話がかかってきた。掲載からもう1週間以上がたっていた。
「事故があったのは、どのへんなんですか?うちで5匹ほど 外猫がいるんだけど
(実際に飼ってはいないけど、エサだけ与えてるという)最近一匹のオスを見かけないんです」
住所は極めて近い。いくつかの特徴もよく似ている・・・!?
ようやく飼い主にたどり付いたのか!!
現況を簡単に説明すると
「その病院はどちらなんですか?」
「○○番地の□□動物病院さんです」
聞かれるままに私が答えると、電話はぶっつり切れてしまった。
電話は公衆電話からのもので、こちらから折り返すことはできない・・・。
はじめに、相手の連絡先等を聞いておかなかったことを後悔。
その翌日、仕事帰りに病院へ寄ると
「今日、問い合わせの電話がかかってきたんです」と先生の奥様。
「猫の状態」をしつこく聞かれたようで、奥さんが「歩けないかもしれない」と言ったら、
ここで電話が切れてしまったらしい。
「この方・・・とっても怪しいですよね・・・・」
誰もが否定できない。
でも「歩けない事」がわかると電話を切ってしまうということは今後、そんな面倒な猫を飼う意志はない?!
と、思っているのではないかという事が、悔しいながらも・・・容易に予想がついた(苦笑)
4 この子の運命は・・・?!
しばらくの沈黙を打ち破って、先生が発言した。
「くりてんさん・・・私からの提案なんですけどね?
もう飼い主さんを探す最大限の努力はしたと思いますから
どうでしょう?検査だけでもしてみませんか?」
「・・・そうですね、ただイタズラに時間だけ
過ぎちゃうだけですよね・・・?」
「うーん・・・・・
言いにくい話なんですけどね・・・?
こちらとしても動物病院という性質上、料金を1円も頂かない
っていうワケにはどうしてもいかないものなんで・・・」
「あ、もちろん 料金はこちらでお支払いしますから・・・
この子の検査・・・してやって下さい」
「あのですね?非常に申し訳ないんですけど・・・
かかる必要経費だけということで
ご負担いただくわけにいかないでしょうか・・・?」
「そんなワケにはいかないですよ。。。!
ちゃんと全額 お支払いしますから・・・!」
「くりてんさん、きっとこれも何かの運命ですよ!!
この子と私とくりてんさん・・・何か見えない糸のようなもので
結ばれていたような気がしてならないんですよ
ハッキリ言ってしまえばこの子とは「赤の他人」のくりてんさんに、
そこまで高額の負担させるのは、私としても治療してて
気がひけます。今後の事もありますし・・・
どうでしょう?
私に医師として精一杯のことを
この子にさせてはもらえませんか??」
「そんな事 申し訳なくて、とても受けられないです」
でも・・・しばらくの間・・・・
こんな論議を繰り返しているうちに・・・
とうとう先生の「強い熱意」に負けてしまい・・・
ご厚意に甘えさせてもらうことになってしまった(苦笑)
先生は言い出すと聞かないようなところのある?
「芯の強い」お方だ(笑)
やはり・・・。「私たちが飼い主」ということで、彼の・・・
「造影剤による検査承諾書」にサインした。
それから数日後、
予定通り 病院の休診日を利用して
「半日ががり」の検査が行われた。
結果・・・。
何とか最悪の事態を免れ、ショック死することはなく、無事に検査を終えることができたけど
やはり、背骨のところにある神経が切断している・・・
という事が判明・・・。
人間で言うところの「下半身麻痺」状態だ。
ある程度、予想していた事とは言え、
突きつけられた「現実」は、やはり厳しかった・・・。
あとでわかったことなんだけど、
このK先生は、動物病院の内科系治療において
市内では一目おかれるほどの名医さん。
検査後、更に先生は
「この子を病院でしばらくこのまま預かって、可能な限りの治療を施してあげたい」
とおっしゃってくれた。
動物病院の名医である先生としても
「何か最善の方法がないか?」「今の状態を少しでも良くするには???」
と色々 思い悩んでいたに違いない・・・。
そして、おそらく うちで飼うのが「困難」・・・
※すでに猫(てん)を飼っている事や、うちは共働で日中は留守している=衰弱した寝たキリの猫を飼うのは非常に大変だろう・・・)
と考えた先生が私達に気を遣って出してくれた
「提案」だったんだろう・・・
ずっと先生に甘えっぱなしの私たちだったが、
ここでもまた甘えてしまった・・・。
こうして結局、猫は病院で預かってくれたまま、
とうてい治療費とは言えないような幾ばくかの料金を、うちで支払い・・・週に3~4回 彼に面会に行く・・・
という、おかしな「飼い方?」へと進化した・・・。
動物病院の居候 仲間達
彼の名前は「どん」と名付けた。
体が大きく、体重は6キロ前後あり、どしっ!っとしていて、まるでボス(首領)みたいだったから!(笑)
初めの頃 ドンは、かなりの人間不信だった様子で、私たちが面会に行っても
「フン、なにさ!」
と横目でチラっと見て、あとは知らんぷり。何を話しかけても、無視を決め込む憎いヤツだった(笑)
当時、ドンが居た病院のペットカーゴルームには3列×上下段、全部で6部屋?あったんだけど
実は半分が飼い主不明の猫の住処と化していた。
ここにも先生の人柄がよーーく現れていると思う(笑)
左上には黒猫「ちーちゃん」
魔女の宅急便の「ジジ」にウリウタツの美人?猫だ。
ちーちゃんはある時、事故に遭った!と病院に連れてこられた猫のようで、けが自体は大したことがなかったようだけど、治療後、飼い主がちっとも迎えに来てくれず・・・。連絡先に電話してみるとそれは嘘番号で、住所も架空、名前も仮名だった。。。?ということらしい(苦笑)
まだ子猫だったので、病院としても誰か飼ってもらえる人を捜そうとしたんだけど、その前に一応・・・と行った検査で、「エイズ」を持っている事がわかったそうで、結局、里子には出せなかったらしい。
余談だけど猫エイズは年々増加していて、野良猫の多くは持っている病気のよう。発病しなければ、特別なんてこと?はないようなんだけど、病原菌自体は簡単に他の猫に伝染してしまうので、発症数が増える一方なんだとか(涙。。。)
まんなかの上段には「ノラ」。
ふらふらと病院の付近を徘徊していたところを、近所の小学生が連れてきてしまったらしい(笑) 体が大きくぽっちゃりしてるけど、ものすごく人なつこい子で、数回行くうちに、私の事を覚えてくれて、そのうちに行く度「ゴロニャー(撫でろ~)」と甘えてくるようになった。
そこへやってきた新入りの「どん」
彼はまだ点滴がはずせないままの状態が続いていた。
初めは無視されっぱなしの「どん」だったけど、
しょっちゅう病院へ面会に通っているうちに
どうやら、コイツらが「主」だということがわかってきたのか?(笑)
少しずつ、こちらをまっすぐに見てくれるようになり・・・。
いつのまにか、こちらの呼びかけにも「ニャー」と
答えてくれるまでになってくれた♪
相変わらず、先生には威嚇していたようだけど(苦笑)
4 この子の運命は・・・?!
しばらくの沈黙を打ち破って、先生が発言した。
「くりてんさん・・・私からの提案なんですけどね?
もう飼い主さんを探す最大限の努力はしたと思いますから
どうでしょう?検査だけでもしてみませんか?」
「・・・そうですね、ただイタズラに時間だけ
過ぎちゃうだけですよね・・・?」
「うーん・・・・・言いにくい話なんですけどね・・・?
こちらとしても動物病院という性質上、料金を1円も頂かない
っていうワケにはどうしてもいかないものなんで・・・」
「あ、もちろん 料金はこちらでお支払いしますから・・・
この子の検査・・・してやって下さい」
「あのですね?非常に申し訳ないんですけど・・・
かかる必要経費だけということでご負担いただくわけにいかないでしょうか・・・?」
「そんなワケにはいかないですよ。。。ちゃんと全額お支払いしますから・・・」
「くりてんさん、きっとこれも何かの運命ですよ!!
この子と私とくりてんさん・・・何か見えない糸のようなもので
結ばれていたような気がしてならないんですよ
ハッキリ言ってしまえばこの子とは「赤の他人」のくりてんさんに、そこまで高額の負担させるのは、私としても治療してて
気がひけます。今後の事もありますし・・・
どうでしょう?
私に医師として精一杯のことをこの子にさせてはもらえませんか??」
「そんな事 申し訳なくて、とても受けられないです」
でも・・・しばらくの間・・・・
こんな論議を繰り返しているうちに・・・
とうとう先生の「強い熱意」に負けてしまい・・・
ご厚意に甘えさせてもらうことになってしまった(苦笑)
先生は言い出すと聞かないようなところのある?
とても「芯の強い」お方だ・・・
5 決意! ~「どん」の親になる・・・
そんな日々の中でも、先生は色々な治療を彼に施してくれ、少しでも普通の家で生活できるような状態に近づけよう?!と努力してくれた。
そうして月日だけが ただ過ぎ・・・
気が付けばもう「あの日」から数ヶ月が過ぎようとしていた。
この間も先生と「引き取る、引き取らない」という押し問答?は
何度かあったんだけど、優しい先生の押しと厚意。。。
そして自分達の中にも・・・
「足の悪いこの子を・・・・
ちゃんと面倒みてあげられるのだろうか?」
という大きな不安材料があったので、それ以上強く言えないまま・・・
あっというまのような・・・・
実は長~い月日が流れていたのである・・・。
折れた背骨はくっつき、かなり元気になって、とりあえずは、きちんと自分の意志でご飯を食べられるようになったドン。
相変わらず歩けないけど、おしっこは、定期的にできるまでになり(垂れ流しだけど・・・)猫らしい表情も浮かべるようになってくれた♪
そんな中・・・。
私たちは ついに決断した!
先生に もうこれ以上甘えてばかりはいられない!
彼を・・・
「ドン」を家族として迎え入れることを・・・。
「ドンをうちで引き取らせてもらえませんか?」
「本当に良いんですか?
簡単な事ではないですよ??
歩けない猫を飼うということは・・・」
「いえいえ、他の子(てん)と同じく愛情を持って接するつもりですし、できる限りのことはやってあげようと思っています。どうかお願いします!」
こちらの「本気」がわかると、先生は・・・
「そうですか・・・。わかりました・・・」
とひとことだけ言って、引取日を決めてくれた。
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そして当日・・・。
きれいにシャンプーしてもらって、正装?されたドンが待っていた。
先生は無言で、それまでドンが入っていたカーゴルームと彼の茶碗・・・
まだ開けていないペットシーツと、キャットフードをいくつか手渡して下さった・・・。
「そんなの受け取れないですよ!」
と強い口調で断ろうとしたけど・・・。
いつものごとく、頑なな先生は・・・
「くりてんさん、お願いですから私にもそれくらいはさせて下さい。
少なくとも、今までの間はうちの家族みたいな子・・・
だったんですから・・・」と
思わず泣きそうになるのを ぐっとこらえて、
それらを素直に先生から譲り受け・・・。
「どん」をうちに連れて帰った・・・。
先生には、何とお礼を言っても、言い尽くせないほどだ。
新しい家族として 当初の心配事は、それまで一人っ娘として、育てられた「てん」。
あらかじめ「てん」に
「こういう猫が今度家族になるから、仲良くしてやってね」
と言い聞かせてはいたんだけど・・・
(わかってくれるわけがないか(笑)
やはり、はじめは・・・・
「アンタ?ニャニもの!?」
というような目で見て、ドンになかなか近づこうとしなかった。「猫」だけど、檻の中に入ったまま出てこない「どん」は
きっと「てん」の目には奇妙な物体?にしか見えなかったんだろう。
当の「どん」も初めは落ち着かない様子で、
TVから出る音や、ちょっとした物音にも過敏に反応して
周りをキョロキョロと見ていた。
でも数日過ぎると、ここが「おうち」だと認識したのか
多少の事には動じなくなり、少しずつ慣れていってくれた。
はじめ、実家の両親や兄弟達など・・・
来客があるたび「どん」は威嚇したりして・・・
「おっかないねぇ・・・」なんて言われていた(苦笑)
けど、うちでの生活が慣れるに従って、
「まるで顔つきが変わった」とみんなが驚くまでに
穏やかな「かわいい猫」になっていった。
名前を呼ぶとお返事をする。
何か要求するときは、顔を見て鳴く。
かわいいドン♪
「歩けない事」を除いては、本当に普通の猫だった。