私が婚活とソーシャルメディアの研究を本格的に始めた2015年はじめぐらいから、インスタグラムが本格的にブレイクし始めていた。
インスタグラムというのは、ソーシャルメディアの写真版といった感じだ。Facebookが記事投稿がメインであるのに対し、インスタグラムは写真ありきのメディアだ。どちらも文字もかけるし、写真もアップロードできる。同じような機能がついているが目に見えない住み分けがされている。
しかし、インスタグラムとFacebookを連携している人も多い。
インスタグラムでアップしたものを同時にフェイスブックでも投稿されるように設定しているのだ。
「うわーっ、婚活中のツイッターやFacebookの使い方を考えなければいけないのに、さらにインスタグラムまで手を付けなければいけないのかぁぁぁぁ!!」
と半ばパニックになっていた。
しかし、はたと気がついたことがある。
「そもそも男って、そんなに写真に興味あるのか?」
ということである。
あわててインスタグラムの国内人気ランキングを調べてみる。
20位中男性は3人しかランクインしていない。ほぼ女性なのだ。
「なーんだ、女の子のツールかっ。男性が見ないんだったら意味無いじゃん。」
と、インスタグラムアプリを消そうとした時にもう一つ気がついた。
「あれ、男って女の写真をやっぱり見たくなるものではないだろうか。」
人気ランキングをほぼ女性が独占しているからといって、男性が見ていないとは言えない。
男性誌では圧倒的に男性の写真より女性のグラビア写真じゃないかっ!
案の定、ビートラックス社の調査によると、2015年現在、ユーザーの男女比は男性45%、女性55%である。世界全体の割合なので、日本はこの割合通りになるのかはわからない。しかし、こんなに使っているのかなぁと半信半疑。
そこで、私は実際に20人ほどの30代の婚活男性にインタビューをしてみることにした。
意外にもほとんどの男性がインスタグラムを知っていた。そして大半が登録をしている感じだった。
婚活男性の声A「Facebookのアカウントで登録できるの手軽ですよね。 Facebookフレンドがやっていたし、僕もやってみようかなと思ったんです。」
婚活男性の声B「写真がすごく綺麗ですよね。インスタグラムの中に写真を加工できる機能があるって知ったので、登録してみたんです。」
なるほど。写真自体に男性も興味があるということね。
しかし、今もやっているのかと聞いてみると、雲行きの怪しい回答が男性たちから続々返ってきた。大体同じような內容だった。
男性の声総括「写真は綺麗にとれるのはとれるんですけど…。なんていうのか、Facebookのようなリアクションが帰ってこなくてつまらなくてやめました。」
いくらきれいな写真をとったとしても何人見てくれているのかもわからない。しかもFacebookだったら何でもいいね!と押してくれる友人すら、インスタグラムでは反応がないのだという。
男性たちに続けて聞いた質問はこれだ。
「誰かの写真投稿を見るのが楽しいってことはありませんか?」
男性たちのほとんどは「NO!」をつきつけた。
男性の声総括「写真をぼーっと眺めているほど暇じゃありませんよ!!」
その後も、出会う男性たちにインスタグラムについて聞きまくったが同じ回答が返ってくるばかりだった。
「なーるほど、インスタグラムは基本的には、婚活には全く使えないソーシャルメディアだな。もう調べなくていっかー」
と思っていた時に、交際報告がやってきた。
30代前半の女性からの交際報告だった。私と同じようなぽっちゃり体型で、森ガールみたいなフワフワのワンピースを着ていた。電車の中では妊婦さんと間違われて、よく席を譲られるらしい。
私はさっそく、彼女とLINEトークを開始した。
「おおっ、よかったですねー!!!あのすごく聞きにくいんですけど、どうしても今後入ってくるお客様のために知っておきたいことがあるのですが」
ぽっちゃりなお客様「ん?なんでしょうか。」
「そのー、彼の心を射止めるために、どんなことをしたのでしょうか。」
ぽっちゃりなお客様「おいっ、ぽっちゃりのテクニックを知りたいのですかっ。」
「は、はい・・・。私のようなぽっちゃり女性にも愛の手を!!!」
ということで教えてもらったがそれはとても意外な方法だった。
なぜ意外だったのかというと、インスタグラムを使った方法だったからである。
「え、インスタグラム?!」
「そうですよ、どうやら彼はインスタグラムの写真で私のこと気に入ったみたいなんです。」
うーん。私が思い描くインスタグラムは、女性モデルのインスタグラムだ。
なぜか自撮りじゃなく、自分の全身写真が8割以上でうめつくされている。
ファッション誌のような構成になっているものをイメージした。
そこにぽっちゃり森ガールの写真を当てはめてみると・・・。
ぶんぶんっ(首をふる音)ぽっちゃり好き以外はダメだろう。
「いったいどんな写真を撮っていたんですか?」
「…大西さん、なんとなくですが、トークの返信来るまでの時間に言いたいこと伝わってきてますよ。そうですよ、自分の姿は写していませんよ!!」
て、テレパシー!私もぽっちゃり仲間なので許してくださいと謝りつつ
彼女は続けてくれた。
「私と結婚したら得するよっていうことがわかる写真をアップし続けたんですよね。」
「ほぅ!」
「毎日作るお弁当や夜ご飯をアップしました。朝はさすがに時間がないからやりませんでしたけれども。」
な、なるほど!!写真で胃袋をつかむ作戦に出たのかっ!!!!
でも、ひとつ疑問が残る。彼女に質問をした。
「彼がインスタグラムを使っているとは限らないから、それが無駄になる可能性とか考えませんでしたか?」
「えー。『私インスタグラムやってるんです。よかったら見て下さい』って言って、URLを教えればいいじゃないですか。アカウントなくてもパソコンから見られますしね。」
「本当だ!すごく簡単なことですねっ!!」
「でも、私はそれだけじゃなくて、自分のスマホから自分のインスタグラムを見せたんです。お見合いの場所で。」
「!!!」
その手があったか!!ソーシャルメディアをオフラインで使う方法!コロンブスの卵のような発見だ!!!
私も彼女のインスタグラムを見た。ズラーっと並ぶおいしそうな手料理の数々。写真もすごく綺麗。下に敷くランチョンマットもオシャレで毎回色々変わっている。
女性はその時の男性の反応を教えてくれた。
「まるで美人に見とれるように鼻の下をのばして私のスマホ画面を見ていましたよ。その後ハッとして、『こ、これ全部君が作ったの?』って驚いて私の顔を見ました。その時に勝利を確信しましたね。ワッハッハー。」
す、すごい!!!彼女はぽっちゃりが不利になるのをわかっているから、最初から婚活で武器になりそうなものを探していたのだ!!料理が得意だけれども、そんなに婚活中手料理を披露する機会はない。交際に発展していくまで武器に使えないのが料理の力だ。
しかし、インスタグラムで活用すれば、手料理を披露しているのと同じような効果となる。
「大西さん、今回の交際には全然生かされていなかったんですが、もう一つ作戦を作っていました。それもインスタグラムを使った作戦です。」
「えー、まだインスタグラムの作戦があるのですか!!!」
「はいっ!実はインスタグラムは一般公開の設定しています。そしてそれをFacebookで連携しているんです。つまり、私のFacebookは投稿内容は友達限定で見えないけれども、インスタグラムの写真だけは一般公開になっているんです。 大西さんが以前「最近お見合いする前に名前検索をする人が多くて、相手のFacebookを覗き見しようとする人が多いよね〜」って言っていたのを覚えていたんですよ。」
これは圧巻の方法である。お見合い相手に名前検索をされて、Facebookを見られた時に、ずらーっとごはんの写真が並ぶようにしてあるということである。
お客様の彼「この子は自炊をちゃんと出来る。結婚したら美味しい手料理が食べられるぞ!」
と男性のテンションがあがる。こうなると多少ぽっちゃりしていても目をつぶってくれる可能性が高くなる。
「私は、自分の見た目でハンディを背負っていますから、やっぱりそれを乗り越えるだけの努力をしないといけないと思ったんですよねー。ふふっ♪」
さらに、インスタグラムの婚活プロの彼女が注意事項を教えてくれた。
「絶対に撮ってはいけない写真というのもあるんですよ。」
「えっ、そんなのあるんですか。」
「厳密に言うと、枚数が増えれば増えるほど、結婚が遠のく写真ですね。」
「うわわー、ぜひぜひ教えてくださいませっ!」
「2つありますね。1つは自分しか写っていない自撮り写真ですね。あまりにも多すぎるとナルシストな女と思われてドン引きされますね。」
た、確かに。私のインスタグラムのタイムラインにも自撮り写真ばっかり撮っているひとがいる。目立つけど痛々しいなと思うし、友達いないのかなって見ているだけで不安になる。
「もう1つは、外食写真ですね。美味しくてゴージャスなものを食べに行った時って、どうしても写真を美しく撮って、投稿したくなるんですよね。でもそんなものばっかり投稿していたら、『こいつ外食ばっかりだな。俺の給料じゃ無理だな』とか『お料理苦手なのかもな。ちょっとこの子はパス』とか見切られちゃんですよね。」
すごいなぁ。ここまで普通計算していないからなぁ。インスタグラムで人気のモデルさんたちが美しい自分の写真を撮影していたり、おいしそうなものを食べている写真をアップしていたりしたら、ついつい自分も同じように撮ろうと真似しちゃうかもしれないなぁ。
本当に色々勉強になりましたっ!
ということで、見事に彼女はイケメンスレンダーな食いしん坊の会社員とサッサとゴールインをしていったのでした。
