小山「ってか、木村さんどうして薬局から病院に転職したんですか?」
木村「あれ?小山さんには話した事ないっけ?」
小山「聞いたことないですよ。だから、今聞いてるんじゃないですか。」
木村「そっかー。」
小山「そうっす。」
木村「実はね、俺はもともと薬剤師になる気はなかったんだよね。」
小山「まじっすか?今は、こんなに病院で薬剤師としてバリバリ働いてるのに?」
木村「だって、病院って給料低いじゃん?奨学金も借りてたし。それに、当時は今と違って、なかなか病院には就職できない事もあったんだよ。でも、それ以上にやりたい事があったんだ。」
小山「やりたい事?」
木村「俺、大学院行きたかったんだよね。」
小山「大学院ですか?何系の?」
木村「癌の基礎研究。」
小山「がーん。ってか、何で癌なんですか?」
木村「昔から癌には興味あってね。遡ると1冊の本から始まってるんだ。友達に貸してもらった本なんだけど、「病院で死ぬという事」って知ってる?」
小山「知らないっす。」
木村「山崎章郎のノンフィクション本なんだけどね、映画化もされてるから、医療者だったら覚えておいてね。」
小山「ういっす。で、それ、どんな本なんですか?」
木村「主に終末期医療を描いた作品なんだけど、特に癌で亡くなる患者さんが描かれていたんだ。」
小山「がーん。」
木村「そのリアクションは、スルーするからね?その本を読んで、癌で亡くなる方がとても多くて辛いなぁって事に気付いたんだ。」
小山「気づくの遅くないっすか?」
木村「初めて読んだのが、中2だったからね。なんとなく知ってたけど、やっぱり衝撃的だったよ。」
小山「ふーん。それで、なんで癌の研究しようと思ったんですか?」
木村「癌で亡くなる人がこんなに多いなら、その特効薬を作ってやろうって思ったわけよ。」
小山「そんな、簡単じゃねーよ、バカ!」
木村「うん。中学生の俺に言ってやりたい。ってか、小山さん、一応俺の後輩だからね?言葉遣い気をつけてね♪」
小山「ういっす。」
木村「話を戻すけど、やっぱり、男って難しい事にチャレンジしたくなるじゃん?」
小山「男って自分の実力も知らず、目標だけは高い時ありますよね。もっと現実見ろよって思います。あっ・・・。」
木村「気にしなくていいよ。というか、わざと言ってるでしょ?それに、俺もそれくらいの言葉は慣れてきた。」
小山「それで、どうしたんすか?」
木村「その中2の時に、研究者の道も考えるわけ。それと、野口英世にも憧れてたし。」
小山「あー、別のストーリーのやつっすね。英世かっけーっす。私も大好き。1回くらいなら、抱かれてもいいわー。」
木村「野口英世先生ね。それに、もう亡くなってるから、抱かれる事はできないよ。一体、君はどんなキャラなのかしら?まぁ、それ以外にもなんだかんだあって、大学院を目指そうと思うわけ。」
小山「でも、木村さん大学4年で一度卒業してませんでしたっけ?なんで、そのまま大学院いかなかったんですか?」
木村「それな、国立落ちて、私立大学行ったから、大学院に行くほどのお金がなかったんだよ。私大薬学部ってお金かかるじゃん?」
小山「まー、そうっすね。私は私立の6年卒だから、なんだかんだで、1000万円かかってますよw」
木村「で、結局お金の面ですぐには進学できなかったんだ。でも、大学院の夢を諦められなかったから、自分で進学費用を稼ごうと思ったんだ。」
小山「木村さん、なかなか苦労人っすね。普通、親に頼めばそれくらいのお金、ぽいっとだしてくれません?」
木村「いや、それ普通じゃないし。それに、うちは母子家庭だからね。私大行かせてもらっただけでも、御の字なの。だから、すぐに大学院に進学する事は諦めて、一旦就職して進学費用を稼ごうと思ったわけ。」
小山「ふーん。大変ですね。」
木村「小山さん、あんたあんまり、苦労話好きじゃ無いね?気にしないで、話進めるけどいいかな?」
小山「ふゎ〜ぁ(あくび)。ういっす。」
木村「それで、少しでも給料の良い地方の薬局に一旦就職するわけ。静岡の・・・」
小山「エスパルス!」
木村「そう、エスパルスのホームの静岡市ね。あっ、サッカー好きなの?」
小山「ういっす。」
木村「まぁ、サッカーの話は後でする事にして、静岡市を中心としたチェーン薬局に就職したんだ。」
小山「やっぱり、こっちの方よかったんすか?ぶっちゃけ、なんぼもらったんすか?にやにや」
木村「なんか、言い方がなまなましいね。初任給で手取り30万。」
小山「まじで!?ここより10万高いじゃないっすか?」
木村「これが地方かって思ったよ。でも、給料が高い=仕事が大変、だからね?就職した薬局は家族経営的なところもあったり、物販はノルマ制があったり、クレイジーな人がいたり、と、それなりに黒い会社だったよ。」
小山「クレイジーな人の話聞きたいっす」
木村「ちょっと、脱線するけどリクエストに答えるよ。世の中って、クレイジーな人って結構いるんだよね。学生の頃には目立たないんだけど、社会人になってからクレイジーになる人って少なく無いんだよ。例えば、挨拶しない、返事をしない、人の話を聞かない。これぐらいは当たり前。」
小山「おぉ!おぉ!!それで、それで?木村さん、どんな屈辱的な事されたんすか?」
木村「その食いつきようwその人、いちおう俺の先輩だったんだけど、聞いても教えない。そのかわり、文句だけはつける。とにかく、一緒に仕事したく無い人がいたのよ。」
小山「へぇ〜。そんな人っているんですね〜。」
木村「世の中は広いよ。今の職場じゃ、そんな人いないけどね。」
小山「ほんとに?」
木村「ほんとに!!」
小山「ふーん。それで、どうしたんすか?」
木村「我慢して働いたよ。人間関係以外にも、薬剤師不足って事でシフトで出勤の日は具合悪くても、ほとんど休めないのも辛かったよ。熱あったり、お腹くだしてるのに、出勤しなければいけない時もあったし、大変だったね。」
小山「大変だったんですねー。そこではどんな仕事してたんですか?その時はもらしたんすか?」
木村「漏らしてません!我慢しました!そこは、調剤併設ドラッグストアだったから、処方箋調剤と物販、両方やってたよ。」
小山「1日の処方箋何枚でした?」
木村「40枚くらい。それを一人でやってたよ。」
小山「ギリギリの人数ですね。忙しくないですか?他に薬剤師はいなかったんですか?」
木村「忙しかったよ。他にも薬剤師はいるにはいるんだけど、店の方もやらなければいけなかったから、基本的には一人調剤の一人監査だったよ。」
小山「まじっすか!」
木村「だから、間違いもあったね。間違った時には、患者さんのところ頭を下げに行ったよ。もちろん、上司や先輩は一緒に来ないで一人だけでね。」
小山「木村さんドMっすね。」
木村「別に好きで間違いを起こしていたわけじゃないよ?まぁ、お金のためなら我慢するさ。それも給料の内って思ってね。」
小山「それで、大学院受験はどうしたんすか?」
木村「そこで働いて2年経った時、大学院進学の目処が立ってきたんだよ。」
小山「早くないっすか?」
木村「まぁね。貯金できたのは、学生時代と同じような節約生活をしていたからね。食費は1日1000円以内を毎日続けたし、余計なものはほとんど買わなかったしね。とにかく節約したね〜。そうすれば、年間100万円は簡単に貯まるもんよ。」
小山「木村さんの節約生活って、なんか似合いますねw」
木村「貧乏くさいって言ってんの?」
小山「いえ、そんなつもりはwそれで、受験したんすか?」
木村「したよ。」
小山「どこ大のどこ研究室?」
木村「医科学研究所のヒトゲノム解析センター。」
小山「医科学研究所って、もしかして、東大!?」
木村「うん。」
小山「落ちたろ?」
木村「うん。」
小山「だろうね!お前を始め、男って現実みねーな!身の程を知れよ!」
木村「小山さんこういう時、急にきついキャラになるよね。今までで何か嫌な事あったの?ちょっとびっくりしちゃうから、もう少し控えめにしてくれるかな。でも、俺頑張ったんだぜ。」
小山「問題は頑張る事じゃない。結果を出す事。結果を出さなきゃ意味ねーんだよ。まぁ、頑張ったっていうなら、何を頑張ったか、言ってみな!」
木村「ひぃっ。例えば、TOEIC710点とか・・・」
小山「そこそこ、頑張ってますね・・・ってか、TOEICって関係あるんすか?」
木村「TOEICが大学院入試に使えるからその点数を出したんだけどね。他にもテストあったから、そっちでダメだったんだと思う。ちなみに、東大の回答用紙って、紙1枚でフリー記載なの。設問に対して紙半分以上の記入が無いと、0点説ってのもあるんだけど、半分以上書けない教科がいくつかあった。」
小山「木村さん、ドンマイ・・・。」
木村「おう。」
小山「それで、どうしたんすか?他は受けなかったんですか?」
木村「いろいろ大学院を探したんだけど、これっていう所がなくってね。医科学研究所一本だったから、それで終わり。」
小山「え?それで終わりですか?」
木村「その年はね。また、来年受けようと思った。」
小山「そうなんですか・・・。ところで、今まで話を聞いてきましたけど、結局なんで病院に転職したんですか?」
木村「それは、次のストーリで♪」
小山「お楽しみに☆」
※小山さんは架空の人物です。