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15/10/30

「嫁というシステム」の不思議さ

Image by Olia Gozha

結婚したての頃、元姑と母が争ったことがある。

元姑がその際のことを、私に言った。

「『嫁にあげたんじゃないですよ。○○さんと結婚しただけだから」

って言われた』のよ!!」


まるで水知らずの人に、いきなり、「あなた馬鹿ですね」と言われたかのように、

通りすがりの人に、いきなり泥だんごを投げつけられたかのように、

めちゃくちゃ悔しそうに言うのだった。


いや、

心の声「その通りですけど。」

と、私は思ったけれど。


私は、「あげる」という品物じゃない。

今どき、こんな表現をすることじたいがおかしいでしょ、と。

 

けれど、

元姑からすれば、それは当然の権利であって、

「嫁にあげたんじゃない」なんて言われることは、

かなり悔しいことのようだった。


なんというか、ファンタジーだよね。

驚いた。



いきなり、別の惑星に来ちゃったんだ。

そんな感じ。


母は、感情が不安定なところがあったし、

無神経だったけれど、

私を「女の子なんだから」と言って育てることはしなかった。

自分で言うけれど、私は母よりはるかに頭が良かったので、

自分の枠内に収めようなどということは、考えも及ばなかったんだろう。


父も同じで、さらにもともと優しい質の人だったので、

自分の枠内に収めようなどということは、1度もなかった。


学校の先生たちは、男女平等の理念でやっているので、

やはりそういうことを言われたことはない。


育ったところは観光地だったけれど僻地で、

幼稚園から1学年1クラス、女子18名、男子9名で育つ(途中転校してまた戻ってくる)と、

子供の頃というのはあきらかに、体も知能も女子のほうが成長が早いので、

そのうえ数が2倍ともなると、

それはもう、女子の天下なのだった。


「女子もがんばらねば! 男女平等!!」

などという理念ではなく、

リンゴが赤いように、バナナが黄色いように、

明らかに女子の天下なのだ。


高校は無理なく通えるところを選んだので、進学校ではなく、

そのせいなのか、やはり女子が優秀なのだった。

 

がり勉君が、

がり勉君「みりえさんには、どう勉強しても勝てない。」

と、つぶやいていたらしいけれど、

みりえ「いや、だって、男子だもん。むりでしょ。」

と、ふつうに思っていた。

バナナは、赤くならないよね、と思うのと同じように。


そんなこんなで育ったので、

就職して男社会を実感すると衝撃だったけれど、

それでも所属した企画部が、頭のいい上司が集められているところで、

私の隣の上司は、留学経験のある、英語ぺらぺらのリベラルな人だった。


なんの違和感もなかった。


2年で退屈して辞めて自分で学習塾を開くと、

それは自分の城なので、やはり自分らしくやっていくことになる。


そんな、

そんな、

そ~んな私が、

いきなり、


「『嫁にあげたんじゃないですよ。○○さんと結婚しただけだから」

って言われた」のよ!!」

といきりたっている元姑と同居することになるのだ。

 

地球から、トンデモビックリ星にワープしたのかと思った。

まじで。

世界観がひっくり返る、とはこのことだ。

 

元夫は、知り合った頃、かなり世界が広くて、リベラルだった。

みりえ「うわ、ひろ~!ふか~!何これ~~!!」

と、強力な磁力にひかれる砂鉄のように、

私は吸い寄せられていったのだけれど、

 

みりえ「なのに。」

みりえ「なのに。」

みりえ「なのに。」

その住んでいる世界は、

とてつもなく、狭い狭い世界なのだった。

 

ギャップすぎるでしょ。

 

ま、私は創造力の強い人間で内向型なので、

その内なる世界が広ければ、それでいいのだけれど、

 

元姑は、私をほっておいてくれないわけで。

「嫁にもらった」と思っているから。

そんなこと、0.00000000000001ミリも思っていない私とは、

みりえ「水と油。」

みりえ「猫とネズミ。」

みりえ「ナメクジと塩。」

みりえ「蛇とマングース。」

みりえ「盾と鉾(ほこ)。」

みりえ「ヒールと泥沼。」

みりえ「カレーとシチューの夕飯。」


とにかくまったく合わない。

10メートルの星形を、1センチの○の中に押し込めるような努力を、

元姑は、必死になってやるわけだけれど、

無理でしょ。

そんなもの。

 

必死になって押し付けてくる

「嫁というシステム」。

ことあるごとに、

元姑「○○と結婚したんだから、しかたない。」

いやもう素敵なお言葉で、

しだいにそれは、

心の声「じゃあ、離婚すればいいんじゃない?」


という思考に、私を運んでいったのだけれど、

元姑は、自分がそんな役割をはたしてきたなどとは、

まったく思ってもいないだろう。

 

「家」「家」「家」「家」って、いつも言ってたけれど、

日本で「家」をほんとに持ってたのって、江戸時代には武家とか商家とかでしょ。

で、今は少子化で、お互い一人っ子同士の結婚となると、

「家」の存続も難しい。

 

でね、

とってもおもしろいと思うのは、

あんなに「家」「家」「家」「家」と言ってた元姑は、自分の結婚では、

昔の大地主の長男を、自分の家に婿に入れてしまって、

当然舅の家とは仲が悪く、

「あの人たちは変わってるから、関わらないほうがいい」

と常に言っていた。

 

元姑にとっての「家」は自分の「家」で、

親族は自分の「親族」なのだよね。

 

なんとも自分の都合によく、「嫁というシステム」を利用していた。

 

「これこれこうあるべきだから」

と言う人たちのほんとのところって、

そんなものだ。

 

自分の持っている(と思っている)権利を、ただ守りたいだけで、

システムが正しいか、時代に合っているか、なんて少しも考えていない。

 

だから、

そんなものだと思って、

個人は、個人に都合のいいシステムを選べばいいと思うのだ。

 

みりえ「自分に合わせて選ぶのが1番!」

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