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15/11/13

僕の大好きな路上生活者、ケンさん。

Image by Olia Gozha

渋谷のとある場所にある路上生活者達のコミュニティのリーダーである『ケンさん』。ケンさんは元宮大工ハーバード大学を卒業しているらしい

ケンさん「ハーバードでとるで」

オレ「まじか・・・。ケンさんすげえ。」


ケンさんは宮大工のときの師匠から、その教えを学んでいる。建築の大学を出て設計をしていた僕からすると、宮大工というのは憧れの対象だ。宮大工である宮岡常一さんの本を読んだ時に宮大工って何て凄いんだ・・・と震えた。ケンさんの口からはこちらが感心してしまうような言葉がバンバン出てくる。宮大工の人達は「宮大工」という職分を守るために民家はつくらない。聖なる神社仏閣以外はつくらない。職分がけがれてしまうそうだ。だから民家は大工に任せる。宮大工として食えないときは農業をする。僕はそんな宮大工の人達について「THE職人」であると共に「思想家」というイメージを持ち、今でも憧れの対象だ

ケンさん「つくった建物は1000年後に完成するんや。それを予想してつくるんや。」

オレ「スケールでか!」


僕がケンさんの好きな所を挙げればきりが無い。ものづくりが好きなところ、仲間を大切にするところ、誰にでも平等に接するところ、笑顔が純粋なところ、以上!あれ?あまり挙げられてない?ごめん、嘘ついた。

オレ「あんま挙げれんかった。ごめんケンさん。」

ケンさんはものづくりが好きで、ものをつくる時に何に留意すればいいかを知っている。だから同じようにものづくりが好きな僕となぜ話が合う。もしかしたらケンさんの方が僕に話を合わせているのかもしれないけど、そうだったら凄いよね。お坊さんというのは、大人だけでなく子供にも共感できるお話ができるらしい。そういえばケンさんは、お坊さんっぽいところもある。話がそれたけれど、ケンさんと一緒にどんなものをつくろうかと話をする時間が楽しくて大好きだ

オレ「ケンさんってお坊さんっぽいところあるよね。」

ケンさん「初めて言われた。」


ケンさんはいつも仲間のことを気づかっている。あるとき、ある一人の仲間が寒そうに座ってるのを見てケンさんは「大丈夫か?今温かいもの用意するからな!」といってどこかへ行った。しばらくして戻ってくると手にはコンビニの袋とカップラーメンを持っていた。ケンさんが言った「人って腹が満たされると安心するんだよ」。そんなこと僕に言われたって便利で何でも手に入る社会を生きている僕にはピンとこないよ・・・。

ケンさん「人って腹が満たされると安心するんだよ。」

オレ「よう分からん。」


こんなケンさんが僕は大好きだ。でもやっぱり好きじゃないところも実はある。ケンさんの悪い癖は深酒をするところ。夜はたいてい酒が入って酔っぱらっている。ぜんぜん話が通じない。そんなときはしょうがないので何となく話してあきらめて帰るしかない。「じゃあ今日は帰るよー」と言ってケンさんとお別れをする。正直なところ、「せっかく来たのに時間の無駄だった!」という怒りよりも、「話が通じなくなるまで深酒をするケンさん大丈夫かなあ・・・」と心配をさせるケンさんが好きじゃないんだと思う。

オレ「ケンさん来たよー。」

「&#☭〄;$※♂☞?」

オレ「あかん酔っぱらっとる・・・」


・・・


ものづくりが好きで、仲間を大切にし、誰にでも平等に接する、笑顔が純粋なケンさん「人は辛い経験をした分だけ他人にやさしくなれる」とよく言われる。でもケンさんを見ていると「やさしい人だから辛い経験に自らの身を投じるんじゃないかな」って思ったりもする。資本主義社会の中では誰かが勝てば誰かが負ける仕組みになっている。そして負けた人から奪ってはいけない大事なものまでも奪ってしまう。いつかケンさんがボソっと言った言葉を思い出す。「まっとうな人間じゃこの世界では生きられないよ・・」




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