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15/10/22

第二十七章 浮きこぼれに光を!

Image by Olia Gozha

第二十七章

「浮きこぼれに光を!」

  バブルがはじけて20年くらいになる。あの頃から派遣が広がり、所得格差が叫ばれ、勝ち組と負け組みという言葉が一般に使われるようになった。受験業界でも、落ちこぼれだけでなく浮きこぼれという言葉が広がった。

  以前は平均点が60点と言えば、正規分布の中間層が一番多かった。つまり、60点くらいの子が多かった。ところが、今は90点くらいのグループと30点くらいのグループがいて、その平均値が60点というイメージだ。中間層が極端に減った。

  ここ三重県北部では、四日市高校・桑名高校・川越高校は大学進学率がほぼ100%の進学校。いなべ総合・桑名西高校・朝明高校は就職と進学が入り混じっている。そのため、上位3校は競争が激しく偏差値が高いグループ。下位グループは定員割を起こすこともあり偏差値が分からないくらい低い。

  そして、とうとう貧困の連鎖とさえ言われる状況に突入した。塾などに行かせられるのは親が裕福な場合に限られる。学力上位の子がそのグループに多い。つまり、親の所得が子供の将来に影響を与えると言うのだ。

  塾で受験指導をしていても明らかに2つのグループは違っている。近所の底辺私立校からの問い合わせがあると、私は嫌な予感に襲われる。ご父兄からして礼儀知らず、かつモンスターである例があまりに多いのだ。

  逆に、四日市高校や桑名高校の生徒からの問い合わせの電話で嫌な思いをしたことはない。いわゆる、「親が親なら子も子だ」という傾向はハッキリとある。もちろん、極まれに「鳶が鷹を生んだ」という例もあるだろうから、一応話は聞く。

  授業をすると、ハッキリ分かる。たとえば、試験前だと学校の使用するテキストから出題されるのでその問題集を始める。すると、前列から2番目に座った子が突然こちらを見て

「先生、終わりましたけど」

 と言う。これで何事が起こったのか分かりますか?こちらは、何の科目のどのテキストを終わったのかも分からないのに、

『学校で指定された箇所を終わったので、次にやることを指示して下さい』

 と言っているらしいのです。経験で分かる。このグループは何から何まで指示しないと何もできないグループだ。もちろん、上位校には合格できないグループ。こんな人間ではコンビニでも使えない。自主的に動けないのなら、ロボットの方が間違えないだけマシだ。

  

   これがそのまま社会にでて、負け組みと勝ち組に分かれていく。もちろん、途中でそえに気づいて改心する子もいるし、勉強と関係がない大工とか料理人とか別の道に進む子もいる。しかし、サラリーマンや公務員の場合、上記の二極分化はかなりハッキリしている。中学の段階で将来が予想できる。

  塾、予備校、学校は、この底辺グループに来てもらうと倒産するリスクが高まる。実際、そういう例を多くみてきた。

「あの塾は不良のたまり場だ」

 と言われ、備品の破壊や盗難で修理費や管理費がかさみ、すぐ塾をやめるから宣伝広告費をかけて常に生徒募集を行い、合格実績が上がらず、徐々に生徒が離れていく。そして、最終的に閉鎖となる。よくあるパターンだ。

  以前、「落ちこぼれ軍団の奇跡」という本が話題になった。TV番組の「スクールウォーズ」のもとになった本だ。

 

 そんなA氏にとって、今回の事件は青天の霹靂だったに違いない。大阪市立桜宮高校で起こった高校2年生のバスケットボール部主将の自殺事件で、体罰をしたバスケ部顧問の男性教諭B氏(47才)。『スクール☆ウォーズ』のモデル教師A氏は、このB氏と、“深すぎる関係”で結ばれているからだ。在阪スポーツ紙の記者が明かす。「体罰をふるったBさんは、実は『スクール☆ウォーズ』のモデルとなったラグビー部元監督Aさんの娘と結婚しているんです。つまり、義理の息子なんです。Aさんの娘も教師で、桜宮高に勤務していた縁でBさんと結婚。AさんとBさんのふたりは同じ“熱血教師”として意気投合してきたそうです。Bさんが、義父の指導方針を受け継いでいたとしても不思議ではありません」

  この話も、落ちこぼれは卒業してバリバリのエリート選手が優勝しただけと言えば言いすぎだろうか。理由はよく分からないが、日本では昔から落ちこぼれが立ち直る話がウケる。最近では、暴走族講師とかビリギャルとか。なんでだろう。そんな非行講師や非行少女を持ち上げてどうしたいのだろう?

 

  日本をよくしたいのなら、落ちこぼれにスポットライトを当てるのではなくて、浮きこぼれにスポットライトを当てるべき。マスコミは頑張っているマジメな生徒に恨みでもあるのだろうか。

  私も落ちこぼれの成功物語を見るのは嫌いではない。しかし、そのほとんどが嘘であることも知っている。嘘が言いすぎなら、脚色、実話にもとづいたフィクション。万一、ほとんど脚色なしにしても「100万人に1人」に起こるかどうかの確率。つまり、宝くじを買うような確率。

  宝くじを現実の予算に組み入れるバカはいない。受験勉強をギャンブルと考える子は、ほとんど落ちる。それより、確実な浮きこぼれにスポットライトを当ててほしい。

 

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