今回はちょっとした体験談です。3分で読めますので気軽に読んでください。

先日、少し遅めの夏休みを頂いたときの話です。今年こそは何事も無く休みを満喫しようと思いましたが、今回もまたトラブルに巻き込まれてしまいました。私の不徳の致すところなのでしょうか?自分自身への戒めと共に今回やらかしちゃった恥ずかしい話をここで披露させていただきます。
それは旅行最終日に起きました。
旅行の最終日はどこかきれいな海でも見ながらゆっくりしたいと思い、近くの港からフェリーで40分程度のある無人島に行ったときの話です。島はそれほど大きくなく、バスで一周回るのに20分もかからない小さな島ですが、きれいな白砂のビーチがあちこちに点々としております。
こんな場所をのんびりバスで回り、きれいな砂浜を見つけて本でも読みながらビールでも飲めたら旅の最後の締めくくりの思い出つくりとしては最高だろうなと考えておりました。
バスといってもピックアップトラックの荷台を改造したような小さなものです。南国独特の乾いた風を感じながらのんびりと島を回ります。
フェリーを降りてバス停を探していたとき数人の男が観光用のオプショナルツアーのチラシを持って近づいてきました。
「パラセーリングは如何ですか?」
「ダイビングは如何ですか?
「ジェットスキーは如何ですか?」
それぞれ自分のツアーのパンフレットを配り観光客にアピールします。
一時間に一度しか便がない船着場は大勢の観光客とそれを当てにするツアーガイドでちょっとした雑踏となります。
その中で私が目を留めたオプショナルがありました。
それは「レンタルバイク」でした。
スクータータイプのバイクを一日1000円で貸してくれるというものです。
「島だからヘルメットは要らないよ!」
バイクなのでお酒を飲めないハンデはありましたが、バスの時間を気にしながらの移動より、潮風を感じながら好きなときに自分のお気に入りのビーチを見つけながらツーリングなんて最高だろうなと思い始めました。
数人いるレンタルバイクの客引きへ、「ライセンスやパスポートは持っていないけど大丈夫か?」と、聞くと、「ノー!ここは島だからバイクの盗難の心配も無い、契約も要らないよ」と、なんとも南国らしいゆるい返事をもらい、一日バイクをレンタルすることにしました。
「ただ、もしバイクが無くなった時や壊れたときのために保証金を預けてくれ、もちろんバイクが無事に戻ればそのお金は返金します」
そういい日本円で5000円程度の保証金とバイクのレンタル料を引き換えにバイクの鍵を渡されました。
日本の50CCのスクーターと違い、100ccはあろうかと思うそのバイクの馬力は頼もしさもあり、島の急な坂道もアクセルひとつでものともせず昇っていきます。
バイクに乗るのは久しぶり、特に珊瑚で出来た白い海沿いの道を風をうけながら走るなんて、なんともいえない気持ちのいいものでした。お気に入りのビーチを見つけパラソルを借りて昼寝したり、本を読んだり、島で獲れるシーフードに舌堤をうったりと、まさしく旅の最終を迎えるにふさわしいような青空のもと、大満足の一日となりました。
さて、街に帰って帰国の準備をしよう。明日の日本行きの飛行機は朝が早い、夜中のうちに移動しなきゃ、そう思いながらもついつい島ののんびりとした時間を気にいってしまい、バイクを返却するため戻った船着場には最終便のフェリーの出発時刻10分前でした。
バイクを借りる作業の簡素を考えれば返却にもそれほど大きな時間はかからないなと思いましたが、思いのほか、念入りにバイクを調べます。次第に時間は過ぎ、最終便の船に乗る人の群れもまばらになり、いよいよ最終のアナウンスが流れ始めました。
「おい、この船を逃すと明日まで船が無いだろう、早くしてくれ」
と、私の催促を無視し、男は念入りにバイクを調べます。
手元の時計で出航まであと3分となったとき、男はバイクの横についている小さな傷を見つけ、一生懸命指で確認をします。それは指で触らなければ分からないような小さな傷です。それより、レンタル当初からそのバイクにはカウルにもっと大きなひび割れや、ステップにも擦り傷が多数あり、私は念のためその場所を出発前に写真を撮っていました。
「この傷は最初に無かった傷だ、修理にお金がかかる、悪いがデポジットは返せない」
旅の最終日に起きたトラブル、まさか「保証金詐欺」に会うとは思いませんでした。船の出航時間は刻々と近づきます。男は「保証金は返せない」との一点張りでしれっとした顔で傷がある場所を指で触ります。
この船に乗り遅れれば翌日の日本行きの飛行機には間に合いません。飛行機に乗り遅れることを考えれば保証金をあきらめたほうがよっぽどの得策です。50歳を過ぎたオヤジにはむしろ短時間で戦う意思も交渉する気力も残っていません。ここでもめるより「何事も無かった」と、あきらめてその場をつくろうしかすべはありませんでした。
私は静かに「OK!保証金はあきらめる」と伝えました。
「保証金を返せないのは当たり前だ」といわんばかりにしれっとうなづき、もう行けと手で合図を出しました。
出航ギリギリ、私はあわてて船に乗り込み、少し悔しさが残る島を見ながら船で買ったビールでヤケ酒半分の杯を挙げる予定でした。
しかしながら、「もう行け」と、手で合図したレンタルオヤジのしぐさに「カチン」と来てしまい、このままやられっぱなしで日本へ帰るなんて、どうしても腹のむしがおさまりません。よせばいいのに昔から培ってきた何かがふつふつと湧き出してきます。
頭はバカンスモードから完全に戦闘モードへと切り替わります。
私は「なめんなよ」とつぶやきながらフェリー乗り場に向けて一気にバイクのアクセルを開けました。まるで堤防の突堤から海へダイブするかのように。
あわてたのはレンタルバイクのおやじです。
仲間のバイクと共にあわててフェリー乗り場まで私を追いかけてきました。
真っ赤な顔して怒るレンタルオヤジに向けて、
「保証金は放棄したんだ、だったらこのバイクは俺のだ、街に行ってこのバイクを叩き売る、保証金はバイクが帰ってこなかったときのためだろ?」
今度はこっちがしれっとした顔で、バイクをフェリーに乗せました。レンタルオヤジは益々ヒートアップし、歯をむき出しにしてまくし立てます。
「この保証金は傷ついたバイクの修理費だ、バイクが戻ってこなくても良いとはいっていない」
「傷なんて何処にあるんだ、このカウルのひび割れは借りる前に写真で撮ってあるだろう?」
「傷はここにあるだろう!よく見ろよ!これはお前が付けたものだ」
「何処にそんな傷がある?指で触らなきゃ分からない傷だぞ?だったらお前も一緒に街まで来い、ツーリストポリスの前でこの話の続きをしよう」

すでにこの時点でフェリーの出発時間は5分遅れていました。
乗客には、もはや借りたバイクにまで「俺のバイクだ」と大声で言い張る中国人とそれを阻止するタイ人グループにしか見えなかったと思います。「どっちのバイクでも良いから早く出航してくれ」といわんばかりに状況を見守っています。
「ほら、早く乗れ、一緒に警察に行こう」と、船から手招きをする私に、
「分かった、保証金は返すからバイクを下ろしてくれ」と、ポケットから保証金を差し出しました。
どうせろくな契約も交わしてないので、保証金もふっかけてやろうかと思いましたが、あわてたレンタルオヤジは間違えて少し多く保証金を返してくれたようでしたのでこの事件はここで「チクル」だけにしておきます。
安全な日本にいると日本人はついついトラブルに巻き込まれるケースも増えます。私は海外では乗ったタクシーのナンバープレートは乗り込む前にいつも写真に納めるようにしています。何かあるごとに写真として証拠を残すことは運転手にとっても抑止欲効果にも繋がります。
契約書やちょっとしたレシートなども捨てる前にちょっと写メを撮るだけでもトラブルを回避したり、こちらが有利に交渉を進めたり出来るかも知れません。
旅行専門の保険会社から聞きましたが、日本人の旅行者って意外とトラブルに巻き込まれるケースが多いそうです。ちょっとした事ですが、注意をはらって海外旅行をお楽しみください。
終わり・・・

