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15/10/13

28歳 大好きだった会社を飛び出し、人生を見つめる旅に

Image by Olia Gozha

前日までいつものと仕事をし、最後まで気がかりなものを残したまま、ざわついたオフィスで仕事を終えた。今思うと、それまで見慣れた景色をもう見れないと寂しくなるのは分かっていることだから、無理矢理にでも見えている景色が変わったことは良かったのかもしれない。


お疲れさま、行ってらっしゃい!と飲んで送り出してもらった翌日、急いで荷造りをしてその足で空港に向かった。


まるで実感が無いまま、皆に行ってくるね!と連絡をしながら、気付いたらあっと言う間に空港にいて、あっという間に搭乗の時間になっていた。


いつも始まりの予感がして大好きなはずの空港なのに、これからどこかに行く人たちの高揚感と外を実感させる英語のアナウンスにいつもはこころが踊るのに、なぜかいつものようにはワクワクしなくて、一体どうしちゃったんだろうと思った。


飛行機が飛ぶために最後に加速する瞬間は、いつもいつも自分はまるっきり自由だと実感する。自由すぎて少し寂しさを感じるほど。


けれど、それでもそれを自分の可能性だと感じることができるのは、大事な人たちがいるからなんだと今回も実感する。


どんどん離れていく下の景色を見て、ここに大事な人たちがいるのか、と思う。


帰ってくる場所があると思えるのは、ここが生まれた場所だからではない。気持ちを交わし合える人たちが沢山いる場所だから。


夜景がどんどんと小さくなって、そろそろ雲を抜けるから見えなくなるという時、住んでいる場所はこんなに広かったのかと思う。こんなにたくさんの人がいる中で大事に思える場所と人に出会えたことは本当に奇跡。


旅が好きなのは、飛行機に乗るとそんな風にシンプルに大事なものを大事だと思えるから。飛行機に乗っている間は、ほとどんど寝ない。その状態のまま、私は何がしたいんだ?と考える。どこかに向かって移動しているときに、良い答えが出ることが多い。


なのに今回は、ほらここから私の人生が変わるんだよ、と思ってもいつものようには言葉は浮かんでこなかった。


どのくらい寝ていただろう、気付いたら機内の電気が消えていて夜になっていた。ふと目が覚めたとき、閉じていた窓を開くと雲の上で朝がくる時間だった。青とオレンジが混ざる時間。思わずあっと息を飲む。


そうか私は遠くに来ているんだ。遠くに行こうとしているんだ。私が座って向いている方向に、元いた場所から毎瞬毎瞬離れていく。何時間もかけて。


もう一度窓を開けると、気付けばもう外は青とピンクの時間になっていた。

そうか、私は、自分の意思で一つ終わらせたんだ。そうして、次に行くんだ。


離れていくほど、応援してるよと言ってくれる人たちの顔が浮かんだ。一人になりに行くのに、その度に一人じゃないってことに気付く。


離れることで、大事な人たちの存在がはっきりしていく。そのことで、私は終わったことを少しずつ実感していく。


近くにいたら我がままからの要求も出てきてしまうこともあるけど、そんな思いがどんどん落ちて大事な気持ちだけが残る。


機内にも朝が来た。

嬉しいな、とそっと思った。自分の意思で動くことができたんだ、と恐る恐る思う。


自分で創っていくという挑戦を選択できた自分に、安心する。これで人生最大の後悔はしないですむから。


私にとって一番後悔するだろうことは、自分を信じず挑戦しないこと。だから、私自身のために自分を信じることにした。


そうしないと怖かったから。自分が一番後悔しない道を考えたら、この選択だった。自分一人でスタートする不安だってもちろんあるけど、めちゃくちゃ怖いけど、その不安と死ぬ前の後悔を比べたら、この選択だった。


もう少しで到着する。気付いたら出るようになっていた言葉をノートに急いで落とす。


どんな毎日が待っているんだろう。どんなことを考えるんだろう。

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