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15/10/1

『ほもたろう』

Image by Olia Gozha

むかしむかし、あるところに、マッチョなおじいさんと、スマートなおじいさんがふたりぐらしをしていました。



ある日、マッチョなおじいさんは川へせんたくに、スマートなおじいさんも、いっしょに川へせんたくに行きました。

おじいさんどうしでイチャイチャしながらせんたくをしていると、川の向こうから、どんぶらこ、どんぶらこと、大きなももがながれてきました。

「おやおや、これはとても大きなももだ。」

「ようし、夜のお楽しみの前は、二人でこれを食べることにしよう。」

マッチョなおじいさんが大きなものを片手でもちあげたあと、丁度せんたくがおわったふたりは、またしてもおじいさんどうしでイチャイチャしながらおうちにかえりました。




その日の夜、おじいさんたちはふたりきりで夜ごはんを食べおわり、これから夜のお楽しみをするところでした。マッチョなおじいさんが、スマートなおじいさんの×××に手をさしのべようとしたところで、スマートなおじいさんはとつぜん思いだしました。

「そうだ!お楽しみのまえに、川でとった大きなももを食べるんだった!」

マッチョなおじいさんも、スマートなおじいさんのひとことでようやく思いだしました。

「おお、そうだったなあ。なんじかんもまえのことをおぼえているだなんて、きみの頭のよさはほんとうにすてきだ。」

「いいえ、そもそもこの大きなももを食べられるのも、あなたの力でももをはこんできてくれたおかげよ。あなたのその体、ほんとうにすてきだわ♡」

「よしよし、ではデザートのかわりに、この大きなももをふたりで食べることにしよう。」

マッチョなおじいさんは、大きなももを居間におきました。そして、そのたくましい腕で、ももを空手チョップでまっぷたつにしました。




なんと、まっぷたつにわれたももから、赤んぼうが出てきたのです。

「こいつはおどろいた!まさか、ももから赤んぼうが出てくるとは!これはきっと神さまからのおくりものにちがいない!」

マッチョなおじいさんは、とてもよろこびました。一方で、スマートなおじいさんは、れいせいにぶんせきしました。

「ふむ、このももの内部を見ると、大きな空洞があるな。この空洞は、どうもあまりに不自然すぎる。これはきっと、人の手によってあけられたものだ。だとしたら、上流の方にある村のだれかが、この大きなももに赤んぼうをとじこめ、わざと川にながした可能性がかんがえられる・・・・・・。」

スマートなおじいさんのあまりにもれいたんなこうさつに、マッチョなおじいさんはすこしだけひいてしまいました。しかし、すぐに気をとりなおしました。

「まぁいい、とりあえずこの赤んぼうに名前を・・・・・・あれ?」

マッチョなおじいさんは、なにかに気がつきました。

「どうしたの?あなた」

スマートなおじいさんは、マッチョなおじいさんにききました。すると、マッチョなおじいさんはこういいました。




「・・・・・・この赤んぼう、死んでいる。」

とてもかわいそうなことに、ももから出てきた赤んぼうは、死んでしまっていたのです。ももをまっぷたつにわったときの空手チョップが、たまたま赤んぼうの頭にあたってしまったのです。そして悲しいことに、打ち所がわるかったため、脳を大きく損傷し、さらに、空手チョップのいりょくがとても大きかったので、首の骨が折れてしまったのです。したがって、ももからでてきたときには、すでに赤んぼうは即死だったのです。

「この赤んぼうをころしたのは、もしかしたらオレなのか・・・・・・。」

マッチョなおじいさんは、じぶんのせいで赤んぼうが死んでしまったのではないかと、ひどくおちこみました。あまりのおちこみっぷりに心配したスマートなおじいさんは、適当にウソをつきました。

「いいえ、けっしてあなたのせいではないわ。よくよくかんがえてみて。このももは、上流にある村の方からながれてきたのよ。わたしたちのすむところから上の村まではかなりとおいわ。仮に川をくだってここへこようとするんだったら、三日はかかるわ。それだけながいあいだ、何も食べたり飲んだりもしないで、ももの中にとじこめられていたら死んでしまうのもどうぜんよ。それに、川をながれているわけだから、水の温度によって低体温症に陥った可能性もかんがえられる。だから、あなたのせいなんかじゃないわ。おねがい、そんなにおちこまないで。」

ほんとうは、マッチョなおじいさんの空手チョップで死んだのですが、あえてそれらしいことを言ってなぐさめました。すると、マッチョなおじいさんは、元気をとりもどしました。

「うん。そうだな!この赤んぼうは、オレがももをはこんでいるときには既に死んでいたんだ!だから気にすることなんかない!さあ、さっさとオレたちふたりきりで、夜のお楽しみをしよう!」

すぐになにごともなかったかのようなテンションにもどったマッチョなおじいさんに、スマートなおじいさんはすこしだけ、その人間性をうたがいましたが、気にしないことにしました。

「ええ。今夜は世界でいちばんあつくてキケンな夜になるわよ♡」

マッチョなおじいさんとスマートなおじいさんは、ふたりだけの、セクシー&ホットでデンジャラスなよるを、はげしくたのしみました。




つぎの日、マッチョなおじいさんとスマートなおじいさんは、きのうとおなじように川へせんたくに行きました。

しかし、きのうとちがうのは、家のそばにある裏庭に、人の手によって埋めたであろう土のコブ。そして、そのコブには小さな木板がささっていました。

そう、この小さな土のコブは、きのうの夜に死んでしまった赤んぼうのお墓なのです。

その木板にはこうかかれていましたとさ。





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ももからうまれてきた子、ここにねむる。


子の名前は、ももと、ホモをかけて、



『ほもたろう』。



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【完】

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