今日はある高校生との対談
まだ暑い8月の半ば、場所は夕方のスターバックス。
僕はソイラテが好きだ。80%の確率でお腹を下すのだが、今日ももちろん注文するのはソイラテだ。
人間の尊厳をかけた戦いが、僕の中で、主に下腹部あたりで始まっている。
さて、今日はある高校生にインタビューさせてもらうことになっている。
フナバシリヒト。高校2年生。Createach A代表。
(Createach Aとは、「高校生が高校生に授業をすることで、楽しい授業や授業の楽しみ方を学ぶ」というなんとも有意義な活動をしている団体。)
普通の大人や高校生から見ると「なんなんだ、あいつは。」と一目置かれる彼。さて、どんな話が出てくるのやら。
くめ「初めて会ったのは...いつだったかな。君は中3だったっけ?」
ふな「そうですね。」
くめ「あの時はまだ、高校生教室はやっていなかったね。」
ふな「そうですね。去年始めたので」
くめ「顔、変わんないなぁ。......貫禄?」
ふな「よく、言われます。(殺意の目)」
早速、不穏な空気を流してしまった。それにしても彼、制服を着ていなかったらまるで妻帯者で家持ち、車持ち、って感じの顔......否、大人らしさをかもし出している。
高校生教室について
くめ「僕は何回も見ているから知っているけど、高校生が教壇に立って授業をするんだよね。」
ふな「そうです。そんで、特徴的なのは、終わった後の振り返り。」
くめ「生徒の子(高校生)と先生の子(高校生)がグループになってフィードバックするんだよね。授業について。」
ふな「しかもそれがかなりガチで。最初は当たり障りないこと言うんだけど、最後の方にはかなり核心的な話になる。」
先生側は、「ねらい」が達成できているかを、実際に受けた生徒側からのフィードバックで確認する。
そのために、先生側の質問も、生徒側の受け答えもけっこうガチンコだ。
あまりにド直球な指摘が飛び交っていて、空気がピリッとする瞬間もある。その本気の雰囲気に僕がオシッコちびりそうになったことは秘密だ。
「先生ー生徒」の振り返りが終了したら、今度は「先生ースタッフ」でまた振り返り。今度は、ギャラリーの大人も混じってのフィードバックの殴り合いだ。もちろん、良かった点は具体的に伝え、悪かった点には改善点を添えて伝える。笑いだって起きるけれど、本気なのだ。コミュニケーション百人組手という感じ。
さて、彼は、どんな人生経験から、「高校生教室」のような活動に入っていっただんだろうか。
高校生教室を始めたきっかけ
くめ「最初は誰に相談したの?」
ふな「高校の数学の先生ですね。面白い人だなぁと思ってて。」
くめ「おぉ!なんか意外。あんま公立の先生にそういうイメージないから。」
ふな「高校生教室のアイデアはあったんです。たまたまそのタイミングで、数学の先生が授業でラーニングピラミッドの話をしてくれて、「教えるのが一番勉強になる!」って言ってて。おぉ!と。」
くめ「けど外で活動することになったんだね。」
ふな「ありがたかったんですけど、最終的に制約が多いってのが大きかったですね。」
くめ「それで、白川さんに相談したと。」
白川さん(通称しらさん)とは、高校生教室の『顧問』という立場で、あらゆる支援をしてくれている方。名古屋青少年交流プラザの職員さん。僕の友人でもあり、師匠とも言える人。
くめ「しらさんのイメージは?」
ふな「ぱない。怖い。ありがたい。」
くめ「なんだか混乱しているね(笑)」
ふな「すごいんですよね。フィードバックも、何もかも。結局、しらさんみたいな指導者がいるかどうかが、この活動を広げるとしたらネックですね。あんなすごい人がいるんだろうか、と。」
ちなみに、しらさんは、「柔和」「優しさ」というものを絵に描いたような優しい雰囲気の人です。ただ、責任感の強い誠実な大人の方なので、言うときは言う、そういうメリハリとアツい気持ちがあります。その辺は十分伝わっているようで......なによりです。
フナハシのルーツ
くめ「どんな子どもだったの?幼稚園とか、小学生とか」
ふな「変なやつでした。」
くめ「というと?」
ふな「ドッジボールよりも数字が好きだった。」
くめ「数学、じゃなくて数字...?」
ふな「数(すう)っていう概念が好きで。ひたすら書いてましたね、数字を。」
くめ「ごめん、ちょっと意味がわからない(笑)」
ふな「あと駅名とか。」
くめ「あー、なるほどそっち系ね。」
ふな「そっち系です。」
人生の転機
くめ「それから、色々と活動的になったきっかけは?」
ふな「人との出会いが大きい。イベント行って、出会って、さらに加速するっていう。」
くめ「いつ頃からだろう。」
ふな「最初は「こどものまち」ですね。小4のとき。もともと、真似事が好きでしたね。◯◯屋さんみたいな。けどそれって一人ではできないんですね。それが「ここではできちゃうんだ!」っていう感動がありました。」
「こどものまち」とは、ドイツの「ミニ・ミュンヘン」をベースした、こどもがつくるこどものための「まち」。お店があり、仕事があり、通貨があり、それらの運営まですべてが子供(小〜中学生くらい)によって運営されているイベント。子供たちが参加し、遊びながら、社会性やまちの仕組みを学べる。僕は田舎育ちだし、子供は田舎で育つべきとまで思っているけれど、この活動を知った時だけは、都会の子供がうらやましいと思った。
ふな「あとは、3.11も大きかった。」
くめ「ん?というと?」
ふな「ちょうど小学校卒業間際の時期に震災があって、そこからバタバタで募金活動をして、その次には中3でこどもまちづくりサミットの報告会に行って。」
くめ「まちづくりに関して子供の意見を反映しようってやつね。」
ふな「そこで、自分たちの想いを形にしている、っていう人達を見たのが大きかった。」
計2回のサミットに参加して、同世代の刺激を受けたとのこと。
「こういう言い方は語弊があるんですけど...」と前置きした上で、
「震災が自分の人生にとって大きな出会いを与えてくれた」と教えてくれた。
このへんの配慮も忘れないのが彼のいいところだ。
一方、僕は生まれてこの方語弊しか産んだことがない。Mr.語弊といってもいいかもしれない。早速この文が語弊を含んでいるという事実。笑える。なにこの高校生。なにこの差。
くめ「そこからどうやって、「高校生教室」まで繋がったんだろう?」
ふな「高校で急に勉強できなくなって、それも大きかった。中学までみたいに、何もやらずに点数取るってのが難しくなった。授業がわからないからおもしろくない。できない人の気持ちを理解できた。」
くめ「高校生あるあるだね。」
ふな「で、もっと楽しく勉強ってできないのかな?って疑問に思って。」
その発想自体がすごいと思う。ある意味で失敗体験をして”負けて”いるにも関わらず、
「どうしたら楽しく勉強できるんだろう?」だって?
どうしたらそういう発想ができるのか僕に教えてくれ!!
教育について
くめ「今の教育とか学校に対して、問題意識とかある?」
ふな「問題意識というか、「モッタイナイ」って感じ。すごい人、いい仕組みが色々あるのに、うまく回っていない感じ。今の学校が悪いとかそういうんじゃない。」
くめ「その感覚は分かるなー。どうして隣のクラスの授業が受けられないんだろう、ってずっと思ってた。むしろ隣の学校で単位取れれば面白いのに、と思う。」
ふな「そうすると、学校作ろうという話になるんですけど、それだと私学になっちゃう。公立高校でできないかなーと思うんですよね。リソースあるわけだし。」
くめ「確かに。クローズで、というより最終的にオープンに広げたいよね。」
僕は誰と喋っているのだろうか。わからなくなってきたよ。これで高校生だから、先が計り知れないのだ。問題意識的なものを持ちつつも、リアルタイムでがっつり当事者なのだから、不思議な立場である。
さて、そんな彼が、今後大学生になっていくわけだけど、大学についてはどう考えているのだろう?
大学について
ふな「なんか大学に行くと急な転換があるように思う。「何を学ぶかは自分で決めましょう」みたいな。」
くめ「そのギャップは、大学というか...就活の方が大きいかなぁ。大学も放置プレイなとこ大きいから、けっこう受動的でどうにでもなるよ。」
ふな「自分で学びましょう。そもそも自分で学びたいことを探しましょう。という環境に放り出されて学びを探していけるかっていうのは、高校までの取り組みが大きいと思うんですよね。」
くめ「確かに。大学生の中にも受け身で空っぽな人は多い。やるひとはやる、って感じだね。特段、大学生活を通して学びに対するアンテナが高くなったって感じもなかったかな。僕は。結果、就活でどう偽わろうか?って話になりがち。」
ふな「なんか、その偽る方法とかすら、お金出して教わろうとしていて、バカなんじゃないの?と思ったり。怖いのは、ロボットより計算能力の低いロボットみたいのが生まれそうな気がする。」
僕はむしろ、こんな発言が出てくる高校生が怖いです。おまえはあれか。未来の日本を牛耳るのか?
今のうちにゴマをすっておかなければ。僕の未来が危うい。ごく個人的な未来が。
自分の進路について
くめ「大学は行くんでしょ?」
ふな「大学は教育学部で考えていて、けど教員過程というよりは研究方面に興味があります。ただ、大学の後は...まだわからない。研究職とか。」
くめ「かなりしっかりと決まっている方だと思うけど。」
ふな「「現場を見た方がいい」とは周りからよく言われる。だから教壇にも立ちたい。一方、学校の教員が学校しか知らないのにも違和感があるから、民間に就職したいとも思う。非常勤で仕事しながら、というのもあるし。」
くめ「研究ってなると、大学院も行きたい感じ?」
ふな「はい。行きたいですね。」
くめ「社会出てからだと、教員の仕事も、大学院も、断然濃いものになると思うよ。将来的には、教育系のことをやりたいんだね。」
一度、社会人になってから教員になった人ってインパクトがある印象が強い。どちらがいいというわけではなく。逆に、教員一筋の先生ももちろん覚えているけれど。
実験で、1キロくらいある台車を垂直落下で大破させた物理のおじいちゃん先生、元気かな。テンション上がって自分でやっておいて、シュンとしていた寂しそうな顔は忘れられない。先生、僕は元気にやってます。
そして話題は、「学びを自分で探せる人」の話へ。
開いている学生、閉じている学生
くめ「なんか、うまく表現できないんだけど、「開いている学生」が増えるといいなと思うんだよね。こうしたい、あれやろう、いつやる?ってすぐ動ける人、みたいな。」
ふな「言われたことはやる。言われたこと以外はやらない。っていう人が多い気がする。そこをどうやって能動的に変えるかっていうのが教育だねって話なんですけど。」
くめ「『自分から学ぶ姿勢』ってものをアウトプットベースで鍛える場所があればなぁと思う。高校生教室は、その一つの形だなと思うよ。」
ふな「そうするとけっこう楽しいっていう感覚になるのかなぁ。自分はそうだった。『切り開く楽しさ』があった。」
くめ「それは同感。CreateachAのスタッフの中には、開いている人と、開きかけている人が混在しているって感じするね。開くことを促す場、という意味ではめっちゃ価値がある活動だね。」
ふな「それはありますね。それぞれがいい味出してますけど。」
くめ「開けるかどうか、能動的に学び始められるかどうかって、要因としては何が大きいのかな?」
ふな「没頭できるかどうかかな。面白さにどハマりしてどんどん続けるかどうか?」
くめ「そう聞くと、成功体験って、大事だなぁと思うよね。」
教育において、リスクを大人がカバーして、学べる環境を整備するべきではないだろうか。失敗しても良いような”場”を作り、余計な手出しをしない、というスタンスが取れる大人がたくさん必要だと思う。
そうすれば、彼のような妖怪高校生みたいなのがたくさん生まれてくるんじゃないか、と期待している。
閑話休題。恋愛について
くめ「なんか君は古風そうだよね。勝手なイメージだけど。」
ふな「こだわりが、強いかな?恋愛って、結婚とかそういうのを見越してするものなんじゃ。」
くめ「プラトニックかよ!!」
ふな「よくあるじゃないですか、2、3日付き合って、別れて、みたいな。なんなの?なんなんだ?と。」
くめ「中学生くらいとか、取っ替え引っ替えだよね。」
ふな「バッタかよ!と。」
くめ「バッタwwwwww」
ふな「そんで、大学までないんだろうなーと思ってました。けどそうでもなくて、ちゃんと彼女できました//////」
くめ「ソイラテで腹下して死ねばいいのに。」
ちなみに僕は、中学時代は親友が取っ替え引っ替え付き合うのをサポートしていました。いわゆるパス回し役。そして大学に入ったらクソモテるという神話を信じていましたが、全くの無風でした。
今後の動きについて
くめ「今後、Createach Aと高校生教室はどうなっていくんだろう?」
ふな「団体を大きくするということには全く興味なくて、それよりパクってほしい。特に理念の部分をどんどんパクってほしい。」
くめ「部活みたいに流行れば面白いと思うよね。」
ふな「そうなんですよ。」
くめ「パッケージ化して広めるってのは興味あるな。いいものは広がっていくべきだし、広がりやすい形を取るのも大事だと思う。」
ふな「それは今年度中にはやっていきたいところですね。今、くめさんとかしらさんがやっている大人のポジションを大学生になったOBチームがやるとか。」
くめ「なにそれ、超楽しそう。」
最後に
僕はいま、誰と話しているんだろうとわからなくなること山の如しでした。
ここには書ききれませんでしたが、彼の生きてきたこれまで、今の団体のこと、メンバーのこと、教育のこと、その他いろいろなことを語り合いました。まさに今、教育システムの当事者である彼と、教育に関する議論ができるなんて、こんな恵まれたことはないなと、今改めて感じています。
まさに今、教育システムの当事者である彼と、教育に関する議論ができるなんて、こんな恵まれたことはないなと、改めて感じています。
彼が、Createach Aのメンバーの話をするたび、表情が一番の笑顔に変わるのが印象的でした。嬉々として語るその姿に、愛を感じます。いいリーダー像を見たように思います。
「妻帯者持ちみたいな顔ってどんなだよ?」と思う方はこちらの動くフナバシを是非↓
https://www.youtube.com/watch?v=mruX_tvHZyw&feature=youtu.be