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15/9/7

⑥「ドラマみたいな人生」と言われるけど実際はそうでもない。-父の蒸発知らされた事実-

Image by Olia Gozha

中学を卒業した私は母方の親族の援助もあり父の母校の高校に進学しました。

母は私が進学してからは入院している期間が長くなりました。

髪の毛は薬で抜けたままで顔もむくみ痩せ細った母はそれでも強く私の将来を心配していました。

相変わらず父の借金取りからの電話は度々ありましたが父もなんとか動いていたのでしつこく家に来ることなどはありませんでした。

私が16歳になったあたりから、大量の催促状が送られてくるようになりました。

電話を出れば借金取りからでほとんどずっと鳴っている状態でした。

父は家には帰ってこず私が電話にでると金返せ!と怒鳴り声を上げられたり、留守電にしても「金返せ、いるんだろ?家に行くぞ」とメッセージを残されるだけだったので私は電話線を引き抜き無視をしすることにしました。

私は親戚の会社で時々アルバイトをしていたので祖母と二人で食事をとるこはできましたし携帯電話を持っていたので固定電話が使えなくてもさほど困ることはありませんでした。

電話が繋がらないと借金取り達は電報を送って来るようになりました。

不思議と家に直接来ることがなかったので安心していましたがある日、父から私の携帯電話に電話がかかってきました。

父「ごめん、お父さんもう疲れちゃったよ…」

私「何処にいんの?いいから一回帰って来てよ。」

父「ごめんな…もう帰らないよ」

そして、電話は切られかけ直すと父は電話にはでず圏外のメッセージが流れました。

パニックになった私が110番に父親が居なくなった、死のうとしているのかも知れないと電話をすると警察官が二人やってきました。

私はうまく説明ができませんでしたが大量の催促状を見て警察官の1人が借金を苦に失踪したのではないかと言いました。

父の写真を渡し乗っている車の車種などを伝えると見つけたら連絡するからと言って帰りました。

その後すぐに母の姉と父の姉に連絡し経緯を話すと私の家で集まることになりました。

母の姉、私から見ると叔母はとても私を可愛がってくれていたのでとても心配して叔父と二人で急いで来てくれました。

近所に住む父の弟も集まり親族会議が始まりました。

時刻は夜の9時を過ぎていました。

電話線を再び差し込むとすぐに電話が鳴り父の弟が電話に出ると兄貴は失踪した、警察も呼んだと言い電話をきると不思議と電話が鳴ることはありませんでした。

外を見ると怪しい男が何人か家の周りをウロウロしていましたが何かしてくるようなことはありませんでした。

叔母に私は自分の部屋にいるように言われましたが暫くドアの向こうから話を聞いていると12歳の時に多額の借金が発覚した時に一家心中しようと海に行ったこと母の癌はいたるところに転移しているのでもう助からないこと、真っ当な借金が2億近くあり家と土地が担保になっているので買い手が見つかれば出ていかなければいけないこと電話をかけてくる連中や外をうろついている連中は「やの方」やヤミ金だということが聞こえました。

私はショックでそれ以上の話は聞いていられず自分の部屋で声を殺して泣きました。

それから2時間程で話し合いは終わり祖母は父の姉夫婦の家で暫く面倒をみることになり私も母方の叔母に家に来るように言われましたが断りました。

何かあればすぐに電話するようにいうと親戚達は帰っていきました。

外にいる怪しい男たちに父の弟が警察呼んだと言うと男たちはすぐに居なくなりました。

誰も居なくなった家で私は1人呆然としていました。

父はもう帰ってこない。

母の病気は治らない。

多少何かあったとはいえ概ね幸せに普通の生活を送っていた16歳の私にとってこの事実は耐え難いものでした。

いっそ外にいたやつらを殺してやろうかと台所で包丁を手に持つと涙が止まらずすがる思いで父に再び電話をかけました。

すると電話の呼び出し音が鳴り父が電話に出ました。

私は泣きながら父にこの日あったことを話しお願いだから帰って来てくれと頼みました。

暫くの沈黙の後「わかった」と一言父は言いました。

その日、父が帰ってきたのは夜中の1時頃だったと思います。

帰りを待っていた私を見て涙を流し「ごめんな、ごめんな」と言いました。

父の涙を見たのはその一回きりでした。

それから2年後父は再び失踪し本当に帰ってこなくなりました。

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