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15/8/22

異質な筋肉バトル~中学2年間を費やした日々~

Image by Olia Gozha

■ 僕の父はプロボクサー

中学2年生の夏休みのことだった。

家に閉じこもって一人でゲームをする毎日だった。

決して友達がいなかった訳ではないけど、インドア派だった。

友達と遊ぶにしてもゲームをして過ごして怠惰な日々を過ごしていた。

そんなある日、母から突如こんな提案をされた。


「お父さんにボクシングでも習って体を動かしたら?」


険悪な仲ではなかったにしろ父と母は離婚していたので、母からこんな言葉が出てくることに驚いた。

僕は、父がプロボクサーだということは知っていたが積極的にやろうとは考えていなかった。

まぁけど、ゲームばっかやってたけど、友達に流されてやってただけってのもあったし、

体を動かすのは嫌いじゃない。

僕はボクシングを始めることになった。

■ 腕相撲で最強になれ

それから、僕は筋トレとボクシングに明け暮れるようになっていった。。。

中学2年の夏、ゲームばっかりしていた僕は案外ボクシングにのめりこんでいった。

初めの半年くらいは父と公園で練習した。

さらに、練習の仕方もだんだんわかってきた僕は、家でも鏡の前でシャドーボクシングをするようになった。


家にあったじいちゃのダンベルで筋トレもするようになった。

(昔のなので、重さを変えることができない鉄のごてごてした鉄アレイだ。4KG)

10㌔ランニングもするようになった。

そして僕は自分の体に自信を持ち始めた。

そんな中「彼」が現れた。

同じ中学のクラスメイト「H」だ。

「H」はいつもルーラーと叫び、制服の袖から定規を取り出しては収めてはしていた。

まったく意味の分からない奴だった。

決して、一度とも、定規を手放さないのだ。

授業中も、給食の時も、部活の時も、登下校の時もだ。

そして「ルーラー」と叫ぶ。


そんなある日、「H」の筋肉がすごいぞと噂になっているのを耳にした。

え!ルーラーとか言ってるやつが筋肉あるのか?

まさかあのルーラーは10KGくらいの重さがあるというのか?!

僕は彼「H」と戦う覚悟をした。

そしてクラスのみんなが注目する中

腕相撲をしたのだった。

。。。


■ ぐっ!ぐはっ!!


意識が朦朧とする。


・・・・・

・・・

・・

腕がもげる。


ここで負けたらそのルーラーでオレを切り刻むのか?

・・

・・・

・・・・・

我に返ったとき、僕の右腕は学習机に押し付けられ、めり込む勢いだった。

微動だにしない。


せこい技でも使われたかと思った。

僕は完膚なきまでに腕相撲で「H」に負けたのだ。

反論の仕様がない。

敗者はただ去ることしかできない。

確かにちょっと前までゲームばっかしてたけど、

1ヵ月は筋トレしてきたぞ!

上には上がいることを知った。


そんな中。

「H」は陽気だった。

嫌みのない純真無垢な目で「りゅうちゃんも強かったよ、またやろう」と言ってきた。

僕は負けたが、そんなに嫌な感じはしなかった。

純粋に「H」に勝つ力が欲しいと思った。

ルーラー使い「H」と親友になった瞬間だった。

僕は「H」にどんな筋トレをしているのか聞いた。

すべてをパクリ、まねるつもりで聞いた。

TTP...徹底的にパくる

MMM...めちゃめちゃまねる

だ!!


そして僕は制服の裾からルーラーをっ

取り出すのだけはやめた。

絶対意味ないじゃん


わけわかんないよ。


僕は筋肉の為の生活を始めることとなった。

筋トレと生活は別物じゃない。

生活のあらゆる面で筋肉を意識すること、これこそが「H」に追いつく方法だ。

しかし、「H」は学生鞄パンパンになるまですべての教科書を毎日入れて通学していたのだった。

しかも、持ち前のダンベルは10KG!

僕は4KG!

だがお金がなくて買えなかった。

家では4KGの鉄アレイ2つをクロスして片手で持って筋トレした。

たまに「H」の家に行って10KGを貸してもらって一緒に筋トレした。

そして、約1ヵ月後徐々に筋肉がついてきた僕は、


そろそろ勝てるだろうと思い、再戦を申し込むことにした。


■ 腕相撲で最強になれ!!!るのか?


ぐっ!ぐはっ!!

意識が朦朧とする。

・・・・・

・・・

・・

腕がもげる。

ここで終わるのか?

やっぱりルーラーを袖に入れておかないと勝てないのか?

・・

・・・

・・・・・


2回目の敗北だった。

確かに勝てる訳がなかったのかもしれない。

僕は「H」の真似しかしてなかったのだから。

TTP

MMM

これらを超えて、工夫してトレーニングしないことには「H」には勝てない。

僕はじいちゃんから借りている鉄アレイと「H」の10KGのダンベルを合体させることにした。

14KG!

だっ!

さらに、筋トレの種目を増やすことにした。

・鉄棒で懸垂

・コンクリブロックを使った腕立て伏せ

・逆立ち腕立て

・通学時にはパンパンの鞄と合わせて、腕に重りをまいた。

この時すでに、僕は周囲からは奇異の目で見られていたことだろう。

だが、僕は悪魔に魂を売り人外になることに恐れを抱かなかった。

すべては「H」を倒すため。


そして毎日「H」と戦う日々が続いた。


徐々に「H」と互角に戦えるくらいに力がついてきた。

努力は裏切らない!

それでも。


「H」は「H」で筋トレをしてきたのだろう。

圧倒的差で勝てることはなかった。


だけど・・・僕は親友と筋トレをすることができてうれしかった。

時に励ましあい、しかしライバルであることに変わりはない。

あの青春はジ○ャンプに掲載したら売れるかもしれない。


僕は「H」を認め始めていた。


そんなある日。


「H」は腹筋に力を入れていなくても6つに割れているという噂を聞いた。




まさか!!


「そんあはずあ!!!」


僕は腹筋をするようになった。。。


■ ボクシングはどこに行った!?


「H」との激闘の末、互角までに至った僕。

実はその間、父とボクシングは続けていた。

そして中学3年になった頃だろうか、

父の知り合いが経営しているボクシングジムへ通うことになった。

父はこのジムで週1回ほどボクシングを教えているそうだ。

上には上がいる。

なんてレベルもんじゃない。

新鮮だった。やばい、すごい、強くなりたいと思った。


工場の中にある車庫。


扉は閉め切られ、異様な湿度のある部屋。

部屋の真ん中にずっしり構えるリング。

隅っこで轟轟とけたたましい音を鳴らすtheストーブ!

定期的に激しき響くゴングの音。

サンドバックを歪ます鈍い音。

心臓に鞭を振るうような、縄跳びの音。

やっぱり気になる、気になって仕方ないストーブ(死ぬでしょ!)。

いかつい大人たち。

パンチとともに発せられる「しゅっ」という声。

どれもが初めてで、緊張を最大限に高めてくる。

僕はとりあえず、元気を振り絞って「よろしくお願いします!」と叫んだ。

これから僕は鏡と1年間向かい合うことになった。


■鏡割れないかな・・・? 


僕は人生で初めてボクシングジムに通うことになった。


すべてが異様。

居るだけで伝わってくる緊張感。

父のボクシングに恥をかかせないように一生懸命練習した。

最初の1年間は鏡を見てシャドーボクシングをしていた。

サンドバックが少ない為、他のプロを目指してるジム生が使っていてなかなか使えないという理由もあったけど。

毎日ミラーは結構きつかった。

なんといってもつまらないし。

へたくそな自分のフォームを見るのが一番つらかった。


会長の「R」さんはとても熱いが優しい方だった。

懇切丁寧にボクシングを教えてくれた。

たまにミットを持ってくれたり、サンドバックを譲ってくれたりもした。

縄跳びの飛び方も教わった。こうしてボクシングの基本のを学んだのであった。


■ 「H」の腹筋


「H」の腹筋はほんとにすごかった。

完璧に6つに割れている。

しかも指圧しても全然、食い込まない。


正直中学生の体ではない。


「H」は10kgのダンベルを腹に抱えて腹筋していた。

さらに、10kgのダンベルを腹に叩きつけていた。

自分でダンベルを腹に叩きつける様は見ていて異質だ。


早速僕は家に帰って4kg×2個のダンベルをもって腹筋をした。

しかし、最初は20回くらいしかできない。

また、両手に持ったダンベルをドラマーのように腹に叩きつけた。

これまたきつい。

ボクサーとしても、腹筋は防御のために必要なので、毎日腹筋を行った。

鉄棒にぶら下がって腹筋も行った。

が、これはあまり腹筋に効かすことができなかった。

一番多くやったのは階段での傾斜をつけての腹筋だ。


そして3年の終わり頃、僕もようやく鎧のような腹筋を手に入れることができた。


こうして中学3間の内2/3が筋トレで過ぎ去っていった。


この中学3年間で学んだことは・・・


筋トレはがむしゃらさも大事!!ということだった。

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