top of page

15/8/2

寝苦しい真夏の夜に見た夢の話

Image by Olia Gozha

実家の真っ暗な台所でガスレンジの紫色の炎の灯りだけを頼りに煮炊きをしていると、見知らぬ老婆が廊下から僕を見つめている。

老婆が言う。

102歳で大往生した祖母が、いよいよ危ない状態になってきていて、たぶん明け方までは持たないだろうと。

その老婆はいつの間にか台所に入ってきて、僕のほうに両手を差し出し、自分の両手を握れと促す。その時、この老婆は、なぜが顔面だけが中年の女性に若返っていた。

僕はこの人が濃い緑の生地に朱色の梅の花が染め抜かれている着物を着ていることに気づく。

ガスレンジの前から離れ、この女性に向かい合って立ち、両手を握る。この人も僕の両手を優しく握り返し、くるくるとよく動く目で諭すように語りかける。

祖母の最後の時間は、おじいさんとの思い出に浸る時間だけに使えるように注意しなければならない。だから、今からは祖母にテレビを見せてはいけないし、特にニュースを見せることだけは絶対に避けなければならない。

誰かの声が聞こえる。

この人は、祖母の二人目の奥さんの産婆さんだった人。

僕は、ああ、亡くなった祖母の最後の瞬間に、この人は戻ってきてくれたのだ、と思った。

再びこの人を見ると、その顔面はますます若返っていた。そして、また祖母の様子を見るために、そして、最後を看取るために奥の部屋に消えた。

僕は、この人の言いつけを家族に伝えようと2階に続く階段を上がった。2階の部屋には、子どものころの僕の家族が一つのベットの上でごろ寝している。

しかしその体の大きさは、実物の半分ほどしかない。

寝息を立てている「小さな家族」に声をかける。

おばあちゃんに、テレビを見せては…

そこまで言いかけて、目が覚める。

お盆も近い。

数年前、祖母が亡くなった時に、僕はマニラにいた。

←前の物語
つづきの物語→

PODCAST

​あなたも物語を
話してみませんか?

Image by Jukka Aalho

フリークアウトのミッション「人に人らしい仕事を」

情報革命の「仕事の収奪」という側面が、ここ最近、大きく取り上げられています。実際、テクノロジーによる「仕事」の自動化は、工場だけでなく、一般...

大嫌いで顔も見たくなかった父にどうしても今伝えたいこと。

今日は父の日です。この、STORYS.JPさんの場をお借りして、私から父にプレゼントをしたいと思います。その前に、少し私たち家族をご紹介させ...

受験に失敗した引きこもりが、ケンブリッジ大学合格に至った話 パート1

僕は、ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ、政治社会科学部(Social and Political Sciences) 出身です。18歳で...

あいりん地区で元ヤクザ幹部に教わった、「○○がない仕事だけはしたらあかん」という話。

「どんな仕事を選んでもええ。ただ、○○がない仕事だけはしたらあかんで!」こんにちは!個人でWEBサイトをつくりながら世界を旅している、阪口と...

あのとき、伝えられなかったけど。

受託Web制作会社でWebディレクターとして毎日働いている僕ですが、ほんの一瞬、数年前に1~2年ほど、学校の先生をやっていたことがある。自分...

ピクシブでの開発 - 金髪の神エンジニア、kamipoさんに開発の全てを教わった話

爆速で成長していた、ベンチャー企業ピクシブ面接の時の話はこちら=>ピクシブに入るときの話そんな訳で、ピクシブでアルバイトとして働くこと...

bottom of page