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15/8/13

流産、胞状奇胎、そして再び妊娠す #5

Image by Olia Gozha

先週、先生はあらかじめ夫と来る様に私に言ってくれたので夫と来ていました。先生は出来る限り辛い話は一人で聞かなくてもいいようにと考えてくれているようです。夫と一緒に先生の前へ。私も夫も以前に流産を経験しているので少しは覚悟はついていました。このシチュエーションだと以前と同じ様にまた稽留流産と言われ、手術か自然に待つか?と聞かれる…今度は自然に待ってみようかななんて考えがチラリとよぎっていた所で話は思いもよらない展開を見せるのでした。


「胞状奇胎って聞いた事ありますか?」

「ほうじょうきたい???」


いいえ、ありません。と答える私たち。そこで先生は驚かせないようにしつつ、必ずしなければならない事はきちっと理解してもらって其の通りにしてもらいたいと言った様にゆっくり説明をしてくれました。胞状奇胎というのは通常の妊娠ではない。このまま放っておいて赤ちゃんが育つものでもない。何らかの理由で卵子に問題が起こったか…二つの精子が同時に1つの卵子に入ったか…原因は特定できない。誰でもなる可能性があるが発症は珍しく1000妊娠に1回の確率(※1)である。申し訳ないけど、今回は手術で出させて下さい…早く処置すれば問題ないけど、放っておくと癌に移行する場合があるからとの話でした。

ええええ!?癌!?!?!完全に寝耳に水です。しかも、少しでも残っていたら大変だから二回手術して子宮内を奇麗にしないといけない上に、このまま癌へ移行しないか暫くはHCG(※2)が通常に戻るまで通院しなければならず、おまけに再発してないかどうか分からなくなるのでHCGが通常に戻るまで妊娠してはいけないとの事でした。


診察室から出てきた私は呆然としていました。癌って死んじゃうかもしれないってこと〜〜!?手に汗を握りました。先生は早く処置すれば問題ないよと言ってくれていたのですが、やはり気がかりです。直ぐにスマホで胞状奇胎を調べ始めました。すると色んな事が分かりました。そして、同じ病気で不安な思いをした人のお話を読んで、この様な思いをしているのは一人ではないと勇気づけられるのでした。


しかし、夫婦共にそんなに若くないのに、いつになったら妊娠の許可がおりるのか…まったく見えず途方にくれます。調べによると順調なら2、3ヶ月、長ければ1年待ったとの情報があり、自分はどのケースになるのやらと…二回の手術を控えているのに気分は優れません。

でも、何より心が痛かったのは、今の様に科学や医療が発達していなかった頃にこの病気になった人の言い伝えです。この病気、昔はぶどう子と呼ばれていたそうです。胞状奇胎は葡萄の房のように成長するからこの様な呼び方をするようです。これは通常の妊娠ではない為にHCGが通常の妊娠よりも高くなり、悪阻も酷いんだそうですが、そんな辛い思いをして流産か出産をして出てきたのがぶどう子で…おかしなモノを産んだと周りから冷たい目で見られ、やれカエルの子だ、化け物だ、龍神の子を産んだなどと虐められ、恐らくきちんとした手術が受けられる時代でもないからきっと癌などになって寂しい思いをして死んでいったんだろうと思うと昔の女の人が不憫でなりません。私は、先生が早くに胞状奇胎に気がついてくれて、きちんと手術を受け、周りの理解もある身分…。よし、頑張ろうと思いました。先生は、HCGが戻ってきたら、不妊の検査もしてみる?と聞いてくれました。兎に角、今出来る事をきちんとやっていこう。そう思いました。


※1 胞状奇胎は他の地域よりアジアでは多く発症する病気のようで、500妊娠に1回とも言われています。

※2 HCGは妊娠中に産生するホルモンです。

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