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15/9/13

みんなにチョコを配ってた女子からさえも、チョコをもらえなかった男子の話。

Image by Olia Gozha

小学生の頃、

バレンタインデーが、一年で一番嫌いな日になりました。


小学生になった頃から、バレンタインデーの存在を意識し始めました。

正確に言うと、意識させられはじめました。




「これ、いらないんだよなー。」

「気持ちわりー。」

と口では言いつつも、ニヤニヤしながら

女子からもらったチョコをかばんに入れてる友達が増えたから。

僕の真横で、チョコレートを女子から手渡しされてる友達がいたから。

弟さえも、チョコレートをもらって帰ってきていたから。



肥満児教室から声がかかるほど(笑)太ってたせいか・・・


運動神経0だったせいか・・・


魅力がなかったせいか・・・


その全てが当てはまってた僕にチョコレートをくれる人なんていませんでした。


6年間ずっと、淡い期待はしてみるものの・・・



机の中や靴箱を気付かれないようにチェックしてみるものの・・・

わざと放課後に残ってはみるものの・・・

チョコレートが入ってることはありませんでした。


平気な顔をして、家に帰ると母がいつも言ってた言葉。

「お母さんから、もらえて幸せね」


慰めのつもりだったのかもしれませんが、寂しさが倍増し

思いっきりスルーしてました。


だから、小学5年生のバレンタインデーの日も、朝から憂鬱でした。


一応、靴箱はチェックするし

一応、机の中もチェックしましたが

当たり前のようになーーーんにも入ってません。


何もないまま、昼休みになりました。




毎年恒例の、「一年で一番男子が教室に残っている昼休み」でした。


その時、胸が高鳴りはじめました。

なぜなら、端から順番に男子に義理チョコを配ってる女子がいたから!


別に、その子のことを好きだったわけでもなんでもありません。

だけど、生まれて初めて同級生からもらえるチョコへの期待で胸が高鳴りました。


「いや、でもちゃんと選んで配ってるよな…」

最初はそう思ってました。


「期待しない方が、傷つかなくて済む」

そう思ってた僕は、もらえなくても傷つかないように

必死でもらえない理由を考えていました。


しかし・・・

「えっ!あいつにも配ってる。」

「あっ!あいつにも配ってる。」

「これは、僕ももらえる。」

だんだんと期待が膨らんでいきました。


「帰ったら、お母さんに見せよう!驚くだろうなー。」

「みんなに配ってたのは、内緒にしとこう・・・」

いつのまにか、もらった後のことまで考えていました。


そうこうしているうちに、



僕の列の先頭にその子がチョコを配りはじめました。


列の先頭・・・

2番目・・・

3番目・・・

僕の前の席・・・


いよいよ・・・

・・・

・・・

僕の横をその子は素通りしていきました。

僕の順番は飛ばされました・・・。


「もしかしたら、チョコがなくなったのかも?」

と一瞬だけ思いました。


だけど、すぐ後ろの席から

その女の子の「はい。どうぞ。」の声が聞こえてきました。





その瞬間、消えてなくなりたくなりました。


もしかしたら、

みんなから「かわいそうな目」で見られてるかもしれない。

みんなから「あいつだけ・・・」と噂されるかもしれない。


今日、来なきゃ良かった・・・。

昼休み、外に行けば良かった・・・。


沢山の後悔が襲ってきました。




その日の帰り、友達はそのことには一言も触れませんでした

それも、憐れまれているようで・・・気を遣われているようで・・・

たまらなく嫌だったのを覚えています。


その年から、僕はますます

バレンタインデーが嫌いになりました。


翌年以降のバレンタインデーの日、

ギリギリで登校する。

昼休みはすぐ外へ行く。

放課後は、チャイムが鳴るとダッシュで帰るようになりました。


期待しないように・・・

期待する瞬間をつくらないようにしました。


パッとしない小学生生活、

パッとしない中学生生活を過ごしました。



高校生になった頃から、僕の環境はガラッと変わりました。


地元の普通の公立高校に通い始めましたが、

小学校、中学校で一緒にいた友達が進学校にすすんで

友達が変わりました。


小学校、中学校の時の僕は、

目立つタイプじゃない友達と付き合っていました。


「拒否されたくない」

「比べられたくない」

「嫌われたくない」


今の自分を否定したくなくて、

今以上傷つきたくなくて・・・

それが分かり合える友達と付き合っていました。


だから、努力もしないし、期待もせずにいられました。


だけど、そんな自分に飽き飽きしてました。

そして、我慢ができなくなってました。


だから、高校になった僕は・・・


「好きなことを一生懸命やってる」タイプの人間に囲まれるようにしました。


勉強が特別できるわけじゃない。(むしろ、できなかったけど)

部活を一生懸命やってる。

バンドを一生懸命やってる。

そんなタイプの友達に囲まれました。


バレンタイン事件を筆頭に、

「傷つくことはやらない」と決めて

挑戦することを諦めてた僕の感覚が徐々に変わっていきました。


そして、

「どうせ、自分は・・・」という感覚よりも・・・

「これから、自分も・・・」って感覚に変わっていきました。


そして、そんな人間に囲まれているうちに

いつしか「やりたいことを全部やる。」と決めていました。



部活はハンドボールというマイナーな運動部でしたが、

40人のチームのキャプテンになりました。


バンド文化祭にも出ました。


「やりたいことをやる代わりに、やりたくないことはやらない。」

と決めていたので、よく喧嘩もしていました。


先生にも意見をよく言ってましたが、

納得したことはちゃんとやるようにしていたので、先生達からは好かれてました(多分)

(球技大会も、教師のチームにも入れられてました。)




マレーシアへの交換留学の募集にも、立候補して、

海外にも行かせてもらいました。


今までの「傷つかないように生きる」から、

「自分がやりたいように生きる」に変えてから、

今までの学生生活の嘘のように楽しくなっていきました。


今思えば、高校に入学した時に

自分を変えたくて「なりたいタイプの人」に、近づいたんだと思います。



そして、高校3年生のバレンタインデー・・・



当時付き合ってた彼女との待ち合わせに向かう途中に、

後輩の女の子5人から声をかけられました。


「先輩、これバレー部のみんなでつくったんで、食べてください。」

大きなチョコレートケーキを渡されました。


もちろん、嬉しかった。

だけど、嬉しさよりも驚きの方が大きかった。


だって、

その日がバレンタインデーだってことを
僕は忘れてしまっていたから。




あれだけコンプレックスだったバレンタインデー。


だけど、やりたいことを一生懸命にやって、

幸せを沢山得ていく中でどうでも良いことになってました。


もっともっと大事なものをみつけたから。

もっともっと大事な人達をみつけたから。


あれから、16年が経った今でも・・・

僕の生き方にこの経験は活かされています。


決して、いじけないこと。
やりたいことをやるために、必死で努力すること。
辛いことも、笑い話に変えられるような未来をつくること。


そして・・・





素晴らしい人達と、一緒にいること。

素晴らしい人達に、「一緒にいたい」と思われる自分でいること。


そうしていれば、僕はいつまでも楽しくいれます。

そうしていれば、僕はいつまでだって成長し続けていけます。





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