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15/6/15

いじめ防止活動とは何か 2

Image by Olia Gozha

 塾の授業中は非常に活発な、学年トップクラスの学力を誇るD君、学校では無口だという。

理由を尋ねると「これ以上目立ったらいじめられる」というのである。

 私が学生の頃は「成績にいい人はとりあえず一目おかれる」という風潮があった。ヤンキーという言葉は流行っていた頃だったので、あえてこの言葉を使うけれど、ヤンキーも学年一位の成績の人には触れないというか、その人のことをからかったり、いじめたりはしなかった。

 しかし・・・「目立つといじめられる」という。

私は、子供のころ、カニのたとえ話を大人から教えてもらったことがある。バケツの中にカニを入れるとカニたちは外に出ようとする。一匹がもう少しで外に出ようというところで別のカニがそのカニを引っ張り、また元の木阿弥。一匹でも外に出ることに成功すれば、それを真似て他のカニも出られる可能性が高くなるというのに。そのように、抜きんでようとする人の足を引っ張っても誰も幸せにはならない。できるならば、抜きんでようとする人を応援して、抜きんでた人をつくってしまえば、他の人も幸せになる可能性は高くなるというような話だったと思う。

 だから、私は、頑張っている人は応援しようと思っているし、自分も頑張って何等かの成果を出したら、それを応援してくれた人、見守ってくれた人に恩返しをしようと思って生きている。

 D君の話が本当ならば、この日本という国は危ういと、率直に思った。

目立ったり、成功したりするといじめられるという社会・・・これが子供たちの価値観のなかでできあがってしまったら、きっと、この子たちが社会に出ても、「目立たない」「抜きんでない」「たたかれない」ことを行動の中心概念におくだろう。そんな大人がたくさんいる社会。

 これは、少し政治的な考えを言えば、非常にうまくいったソフトな社会主義である。社会主義の国々が発展したか、否かは歴史を見ればあきらかである。

 こんなD君のエピソードが私の頭の片隅、心の片隅に常にあった。

 だから、夫が突然「いじめ問題」の本を読み始めたときに、何の気なしに手に取って読み始めたのだと思う。


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