私は日本人なのだろうか?
そう思いたくなるような海外から見た日本の大学入試制度。
日本人であることを証明をさせられているような気分にさせられます。
まずは簡単な家族の紹介から
私たちは、2度のヨーロッパ赴任で8年の駐在経験があります。
息子は1歳半、娘は0歳で最初の赴任。
フランス語圏にいましたので、ギャルドリー、幼稚園ともにフランス語の生活を
3年間しました。
ギャルドリーとは、託児所のようなもので、一時的に預かってくれるところ。
共働きが前提のヨーロッパでは、ギャルドリーが街中にたくさんあり、
子供を社会で助け合いながら育てる風土があります。
ギャルドリーは、専業主婦、我々のような外国人でも子供を預けることができます。
日本とは違いますね。
その後、2度目も同じ国に5年駐在。
息子が中学2年生の終わり、娘が小学校を卒業して赴任しました。
2人とも赴任地では、インターナショナルスクールに入学。
学校では英語、街中はフランス語、家では日本語の生活になりました。
赴任期間が分からない中で子供の学校選びが始まる。
中学生以上の子供を持つ親は、赴任が決まった瞬間から大学受験を意識して、
現地の学校をどこにするべきか考える必要があります。
悩ましいのは、帰国がいつになるのか分からない中で、学校を決めないといけない事。
日本人学校は中学校までしかありませんので、日本人学校を選べば、
3年後、日本に帰国して高校受験するか、
現地のインターナショナルスクールに編入して大学を目指すか、
あるいは、最初からインターナショナルスクールに入学して
帰国するタイミングでどうするのか考える、という選択肢です。
現地校を卒業しないと大学の選択肢が広がらない
悩ましいと書いたのは、日本の大学の場合、
帰国子女受験の資格として、現地の高校を卒業していれば
国立、私立ともにほとんどの大学を受験できます。つまり選択の幅は広い。
卒業できずに途中帰国となれば、現地校の卒業要件を満たしませんので
帰国子女枠では、限られた大学しか受験できなくなります。
例えば、高校を含む4年通学経験があるとか、大学によって違います。
従って、AO入試、一般入試も視野に入れなければなりませんが、
教育制度が違いますので、日本の勉強をやり直す必要があり
簡単な話ではありません。
例えば、高3の4月編入になると日本史を勉強しても試験に間に合わない。
では、欧米の大学はどうなっているのでしょうか。
ヨーロッパのインター校は、国際バカロレア(IB)を採用しています。
試験をパスしてIBデュプロマを取得すれば、その結果と面接だけで
欧米のどの大学にも進学できます。
IBを取得していれば、大学の教養レベルはあるという判断です。
国際バカロレアがグローバル標準的な位置づけにありますので、
どの国に赴任しても、自国の受験制度に悩むことは少ないです。
もちろん、IBの点数によって行ける大学は変わってきます。
最近、日本でも国際バカロレアの指定校を増やす動きがありますが、
日本語で国際バカロレアを取得しても意味がありません。
日本語では、英語で勉強した子供達が授業の継続性を保てません。
日本語で勉強した日本人の子供たちは、海外の大学へのいけないと思います。
第2外国語のみ英語。
他はすべて日本語の授業ではTOEFLの得点が伸びないからです。
日本は英語で教えられる先生の確保が難しいのは、分かりますけど
小学校に外国人の先生を増やすより、バカロレアの教科を教えられる外国人の先生を
高校に増やす方が意味があると思います。
英語で学ぶ国際バカロレアはとても良い仕組みと私は思います。
別に説明したいと思います。
他にもアメリカの制度であるSATとTOEFLの試験結果で受験も可能です。
これも結果を大学に出して、入学を許可されれば大学に進学できます。
入学するよりも卒業が難しい欧米の大学は、日本のような大学ごとの入学試験は
ありませんので、日本の大学に比べて門戸が開かれているイメージです。
じゃあ、欧米の大学に行けば?と思う人もいるでしょう。
一流になればなるほど学費がかなり高くなります。
アメリカの州立大学でも、外国人は授業料が高い設定です。
奨学金をもらわないといけないのが実情。金銭的に簡単な話ではありません。
さて、前置きが長くなりました。
我が家の大学受験はどうなったのか、説明していきたいと思います。
息子の場合、高校を卒業することができました。
大学の選択肢は幅広く考えられよかったのですが、合格までの道のりは長かったです。
娘の場合、高3の4月から日本の高校に編入。
帰国子女入試、AO入試、一般入試とすべてを経験。
希望校に合格をするまで、想像以上に厳しい受験を経験することになりました。
まず現地校を卒業した息子の受験です。
スケジュールがどうなっているか説明します。
高校を卒業する前に、IBの試験をパスする必要があります。
IBの試験は5月上旬から3週間あります。
試験を受けられなければIB取得ができませんので、絶対に遅刻はしない。(遅刻はアウト)
また体調管理を万全にしなければなりません。
長丁場の一発勝負ですので、親子ともに神経を使う試験です。
試験が終わると、すぐに6月上旬の卒業式。
卒業式が終わったらすぐに日本に帰国して、日本の大学受験に備えるため、
帰国子女専門の予備校に入校します。
帰国子女入試は、9月から始まります。
帰国子女専門の予備校は東京と大阪にしかありません。
地方出身者は、一人暮らしをしながら大学受験
私は赴任期間中で帰国できませんでしたので、息子だけ日本に帰国。
東京で一人暮らしをしながらの大学受験になりました。
親としては、海外から「がんばれ」と応援をするしかなく、体調管理や心のケアを
してあげられなかったのが、辛かったです。
受験当日は、海外(夜)から日本(朝)に国際電話をして、起きていることを確認。
そのまま寝てはいけないので、10分したらまた電話。電話するしか手がありません。
よかったのは、予備校から紹介された寮に入りましたので
帰国組の子供達がいたこと。またインター校の友人も同じ寮でしたので
お互いに励ましあえる環境だったことです。
寮は勉強に専念してもらうため、食事付きのアパートを選びました。
日本の大学入試のために勉強をやり直す必要があるのでしょうか。
IBを取得しても、日本の大学受験用の勉強をしないといけません。
息子は理系志望でしたので、数学、化学、物理を再度勉強することになりました。
もちろん、IBで数学、化学、物理を取っていますので、英語で勉強しています。
内容は日本と変わりません。
なぜ同じ勉強をしているのに、日本の試験のために勉強しなおすのか、
まるで日本人になるための試験しているようで、違和感があります。
予備校では、英語を日本語に変換しながら、日本の入試問題用の勉強です。
最初は、日本語で書かれた問題の意味が分からないようです。
例えば数学の文章題の意味が分からない。もちろん英語なら分かります。
日本語の専門用語も最初は分かりません。
知識がないのではなく、日本語の変換ができないだけです。
慶應義塾大学と筑波大学は国際バカロレアを理解している大学
IBを取得することは、容易ではありません。
11年生から試験に向けた勉強が始まりますが、とても大変です。
論文も書かなくてはいけません。
真面目に勉強しなくては、試験に受かりません。
ですから、欧米の大学はIBの結果を尊重して試験課さないのです。
日本の大学の場合、全学部がIBの結果と面接のみで受けられる大学は
知っている限りでは慶應大学と筑波大学のみです。
国際バカロレアを理解している証拠と思います。
当然、皆さんまずは私学の慶應を目指しますから、難易度は高くなります。
帰国子女入試は、私学から大学の難易度順に試験が始まります。
慶應、早稲田、上智、明治、青山、立教 ・・・・
慶應以外は、大学独自の入試がありますから、試験を受けることになります。
合格するまで、試験を受け続けることになりますので、精神力と忍耐力が必要です。
私学が第一志望で慶應に合格すれば入試は終了。入学までの半年は自由時間です。
息子は慶應に運良く合格できましたので、次は国立を目指した勉強が始まりました。
旧帝国大学系の国立大学は、一般入試と同じ
次に国立ですが、早い大学ですと11月から始まります。
旧帝国大学系は、2月から始まる一般試験の2次試験と同じ日になります。
科目は一般試験と同じ。それに面接が加わります。
センター試験は受ける必要がありません。
息子は、やりたい研究が九州大学にありましたので、東京から飛行機に乗って
福岡まで試験を受けに行きました。試験は3日間でしたが、当然自分で飛行機、
ホテルの予約をして、一人で下見をして受験しています。
また受験前に慶應への入学金、授業料の振り込みも自分で行っています。
全部自分でやるしかないです。
大学の情報入手はインターネットとオープンキャンパス
大学の情報はインターネットで取得するしかありません。
受験要領も毎年かわりますので、チェックをこまめにしないと間違えてしまいます。
帰国子女入試の廃止、教科の追加、多々あります。
オープンキャンパスも行った方がいいですが、外国からそれに合わせて行けるか
実際は夏休みにある大学しか行けませんし、移動、宿泊にお金が必要です。
海外で真面目に勉強してきた高校生に、これだけの負担が必要ですか?
息子は希望の九州大学に合格できましたが
5月からIBの試験、6月に帰国して一人暮らし、9月から2月末まで入試と勉強。
精神的にはかなり辛かったと話していました。
IBの試験から気が抜けないからですね。
海外から見ると、日本特有の入試は教育障壁です。
日本人として認められていないような気分になります。
帰国子女には、現地教育システムを尊重して、その結果と面接で入試を代用。
合格後には、半年ありますから大学特有の課題を与えれば良いと思います。
帰国生が日本の大学を受けたいと思う理由の一つに、
母国語で勉強したいという強い欲求があります。
どれだけ自由に英語を使えても、何か越えられない壁を感じるようです。
英語が上達すればするほど、その思いは強くなると言っておりました。
きっとその国の文化背景から来る思考に関わる領域でしょう。
技術の分野において、異文化(外国の技術)を認め受け入れ、
日本流に改良できるのに、教育になると、
どうしてそれができないのでしょうか。
違いがあるから面白いし、異文化と交わるから化学反応が起こり、
視点が広がったり、相手を理解できるようになる。
日本の教育現場に足りない視点です。ですから日本が内向きになるのもわかります。
さて、長くなりました。
娘のパターンは次に書くことにします。