赤ちゃんってどうやって生まれてくるの?
それは、陣痛が始まったら、赤ちゃんが頭をうまく回旋させて、子宮から膣の産道を通って…
助産師の私ならそんな説明をするけれど、精神科の保護室の中で私が見た夢の中ではそれはもっと違っていた。
私はゲームが好き。
この年になっても昔大好きだったドラゴンクエスト(特に3,4,5)を時々やりたくなってしまう。
ファミコンでも、スーパーファミコンでも、プレステでも、最近はアプリでも、新しくリリースされるたびに買っては何度も同じストーリーを大好きなキャラ達と冒険した。
そんな私は、どうやら神様のところにいた時、読書とゲームが大好きでちょっと口の悪い10歳の女の子だった。そして神様は、ドラクエに出てくるマスタードラゴンのような姿をしているみたいだった。というのも、神様の気配を感じるけれど、実際にはなぜか目にしたことはないので、ドラクエの中でも神様っぽい役割のマスタードラゴンがそうってことにしたのだった。
私のまわりにはたくさんの子供たちがいた。みんなそれぞれ好きなおもちゃやゲームで遊んだり、本を読んだりしていた。いろいろな年の子がそれぞれの遊びに集中しているのだった。その部屋の窓は大きく開いていて、外もあるようだったけど、読書とゲームが好きな私は外のほうを見ることはなかった。でも明るい光と暖かい外気を頬に感じることができたし、可愛い遊び声も聞こえてきていた。
時々急にハッと我に返ったように遊びをやめる子供もいた。そういう子は、まるで「目が覚めた」ように一瞬息を止めて、そしてみんな「なーんだ、そんなことだったのか!」と言うのだった。まだ赤ちゃんの姿をした子は、しゃべれないのでそんな表情をするのだった。
赤ちゃんたちはみんな、そんな風に神様の世界では、子供の姿をして遊んでいるのだった。そして時が来ると、(その時は自分で決めていい)自分で廊下を歩いて神様の部屋に行って、大きな声で言うのだった。
「ぼく(またはわたし)はここに生まれたいです!!」
その子供の年齢によって神様への宣言は違っていた。
私は10歳だったので、きちんと「日本っていう国の、神奈川ってところの、住所は、えっと…忘れちゃった。でもお母さんの名前は川本笑香っていうところに生まれたいです。時間は、この時計がピッピッピッって言ったら!」と神様にお願いしたのだった。なぜだか知らないけれど、子供たちはみんな、自分のお母さんがどんな人なのか知っていて、そして神様もちゃんとそのお母さんのところへ連れて行ってくれるとみんな知っているのだった。
神様の顔を見るのはとても勇気が必要だった。神様の部屋へつづく廊下も暗くて一人で行くのはとても怖いので、二人でより添って行く子たちもいた。
大きな声で宣言して、ありったけの勇気を出して一瞬だけ見えた顔は、
お父さんの顔をしていた。
そして気が付くと居心地のいい暖かいお布団に包まれて眠っている。
外から感じる光はあたたかい。そして時折声が聞こえる。
「おーい、おーい」
なにか言葉のようだけれど、意味はわからない。
時々怒っているような声が聞こえると、なんだか少し怖くなってギュッと身体に力が入った。
耳を澄ませてもクリアに聞こえることはなかった。声はいつも何重かの壁の向こうから聞こえてくるのだった。
ある時思い立って、外に出てみようと思い立った。
手や足を思い切り伸ばし、進める方へ進んでみた。出口は思ったよりずっと狭かった。
意を決して頭をギューーーと進めてみる。狭いので思わず息が止まる。
息を止めるのは少しならいいけど、長くなるとすごく怖くなる。
それでも進んで、進んで、進んで……
進んだ先は。
これは、私が精神科の保護室の中で見た夢のなかのひとつ。