top of page

13/3/21

「ハジキ」

Image by Olia Gozha

昔、バイク便の仕事をしたことがある。

呼んだらすぐに来てくれて、都心の渋滞をすり抜け、すぐに配達してくれるというものだ。

バイクに積めれば何でも運ぶ。

おおかたはテレビ局の製作部門や広告代理店、大手出版社などの仕事が多い。

なかには芸能人から直接依頼がある場合もあり、素の姿を見ることも多々あった。

その日は夜12 時ころから雨が降り出してきて、もう仕事をあがって家にかえろうかな、と思っていた時。

「ピー、ピー、ピー」胸のポケベルが鳴る。

配車センターから依頼が入った知らせだ。

断ってもよいのだが、この一本の仕事を終えて帰ろうと思った私は、配車センターに電話して(携帯、ポケベル両方装備)顧客からの依頼内容を聞こうとした。

すると配車センターの社員が開口一番、「佐藤さん、ちょっと危なそうな仕事なんで断ってもいいですよ」。

私は、「夜間割り増し加算なんで多少危なくてもやりますよ」と言った。

(どうせ歌舞伎町あたりの裏ビデオでも運ぶ仕事なんだろうとたかをくくっていた)

依頼内容は…東京駅八重洲口新幹線改札の向こう側に立っている、ベージュのベストを着た30代の男性から荷物を受け取り、六本木通り首都高高樹町入口の下に停車してある黒のベンツS600 の後部座席の人に渡す。

というものだった。料金はベンツの人が支払う。

やるといった以上、やるしかない。

八重洲口改札に到着。バイクを止める場所に苦労した。

改札の向こうに見えるのは金正日の長男にそっくりな、ベストを着た男性。

おもむろに近づいていくと手招きをしてきた。

配送伝票を書こうとしたが、何も喋らない。日本語もわからないっぽいので、空欄のまま荷物に張

ることに。

荷物を受け取った瞬間、重っ。

25cm 四方くらいで新聞紙で何十にもぐるぐる巻きにしてある。その上からガムテープで何本か固めてある荷物だ。

重さからいって、中身は金属と思われる。

ふと気づくと、さっきの男性が"早く行け"と手で合図している。

雨の夜、バイクで都心を走るには安全第一が必須だが、状況はそうも言ってられないっぽいな。

度重なるタクシーの攻撃をかわし、予定時間よりも早く高樹町入口へ到着。

バイクを路肩に停め、雨にぬれないように荷物を抱いてベンツのもとへ。

ゆっくりとパワーウインドウが下がり、「ご苦労さん。いくら?」

初老の男性が答える。

3950 円です。

「じゃ、はい4000 円。おつりも伝票も要らないから」

そういい残して、すごいスピードで首都高に乗っていった。

おつりいらないって、50 円じゃねーか…。どんな気持ちでここまで来たと思ってんだよ。

配車センターにねぎらいの言葉をもらい、安全運転で帰路についた。

←前の物語
つづきの物語→

PODCAST

​あなたも物語を
話してみませんか?

Image by Jukka Aalho

フリークアウトのミッション「人に人らしい仕事を」

情報革命の「仕事の収奪」という側面が、ここ最近、大きく取り上げられています。実際、テクノロジーによる「仕事」の自動化は、工場だけでなく、一般...

大嫌いで顔も見たくなかった父にどうしても今伝えたいこと。

今日は父の日です。この、STORYS.JPさんの場をお借りして、私から父にプレゼントをしたいと思います。その前に、少し私たち家族をご紹介させ...

受験に失敗した引きこもりが、ケンブリッジ大学合格に至った話 パート1

僕は、ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ、政治社会科学部(Social and Political Sciences) 出身です。18歳で...

あいりん地区で元ヤクザ幹部に教わった、「○○がない仕事だけはしたらあかん」という話。

「どんな仕事を選んでもええ。ただ、○○がない仕事だけはしたらあかんで!」こんにちは!個人でWEBサイトをつくりながら世界を旅している、阪口と...

あのとき、伝えられなかったけど。

受託Web制作会社でWebディレクターとして毎日働いている僕ですが、ほんの一瞬、数年前に1~2年ほど、学校の先生をやっていたことがある。自分...

ピクシブでの開発 - 金髪の神エンジニア、kamipoさんに開発の全てを教わった話

爆速で成長していた、ベンチャー企業ピクシブ面接の時の話はこちら=>ピクシブに入るときの話そんな訳で、ピクシブでアルバイトとして働くこと...

bottom of page