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15/5/6

【1】オチも面白さも無いけど、ただひたすら秋田までチャリンコの話。そして、本当に沢山の人に迷惑をかけた。

Image by Olia Gozha

2011年3月

震災から一週間頃、私は大学生として岩手県盛岡市で一人暮らしをしていました。

この時、大学は春休みであり、私はとても暇を持て余しておりました。それに加え、震災発生からさほど日も経っていないということもあり、店もほとんどやってない。私は本当に暇を極めておりました。

その日もやることは無く、いつもどおりジャージにきったなーい上着で大学の食堂へ。事情が事情なので、殆ど選択肢の無いメニューの中からカレーを二杯ほど注文し、いただきますごちそうさま。

上月彬「。。。o(さぁ、帰ろう。)」

そんな思いで自転車をこぎ始めると、ふと頭に浮かびました。

「。。。o(イオンのスーパー部門は再開してたっけ。)」

大学から部屋までの道を少し変え、イオンへ。その帰り、ふと道を見上げると「田沢湖 35km 秋田市 115km」の看板。そんな看板を横目に秋田街道についた時、またもやふと思いました。

「。。。o(そういえば、この道の向こうっかわっていったことないなぁ。)」

このとき凡そ二時。時間もあるし、暇を極めてるし、思い切って秋田街道を進んでみることにしました。このときぼんやりと適当に飽きたら引き返せばいいやと思いながら。

さて、実際にこぎ出してみると気持ちのよいほどにチャリは進みます。1km、3km、5km。気付けば、盛岡の出発地点から凡そ10kmまできていました。このときは、ぼんやりと

「。。。o(小岩井農場まで来たら引き返そう。後5kmだな。)」

と思っていました。しかし、同時に帰るのが面倒だとも感じていました。

じゃぁ、出発から19kmの雫石に行ってみて決めればいいやと考えながら、とりあえず進みます。

そんな中、雫石までくると急に坂が多く、しかも急勾配になり、なんだか山の中に進んでいるようです。そこで、滅多に会わなかった通行人の方に聞いてみると、

「あのー。こっちの山の方の道を先に進んだら何があるんですか?」

通行人ばぁちゃん「ん?にいちゃんどこ行きたいの?この先は山を抜けるともう秋田県だよ。」

「「」」

この時、正直、初めての秋田県行ってみたい!という気持ちがあったのと、インターネットの情報で、日本海側は震災の被害はそれほど大きくないと聞いていたので、秋田市は県庁所在地ということもあり、なんか楽しそうということで、進むことにしました。それに加え、この時点では、今まで来た道を戻るのしんどいということで、戻るという選択肢はかなり下位にありました。


ここらあたりから出発から35km付近の田沢湖を目標にちゃりんこをこぎ続けました。東北地方の3月で山となると所々雪があったり、地面はぬれている。下り坂は恐ろしくスピード出るし、ぐねぐね坂。まれに後ろから大型車に追いかけられる。極めつけは道路の隣が恐ろしく深い谷みたいな落差。とにかく恐怖と戦いながら山を越えました。そこで気付いたのは、さすが秋田。地面にもそこそこ雪が積もっていました。

もう、ここら辺になると戻るなんて選択肢は一切ありませんでした。日もだいぶ落ちてきていましたが、それでも秋田市まで80kmはあったでしょうか。とにかくどんどん進みます。

この時、私には一つの問題がありました。携帯電話です。この日、ふらっと食堂に行くだけだった私の携帯の電池は二つ程度しか残っておらず、道中ちょこちょこ使っていたので、秋田県仙北市あたりで電池切れになっていたのです。これで本当に誰の助けも借りられません。道中で行き場を失えばそれで飢え死にでしょう。

これに加え、とにかく秋田市までは山をいくつも越えなければなりませんでした。特に秋田県大仙市で山を自転車をおしながら先も見えずに暗闇の中を進むのは本当に怖かったです。


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Image by Jukka Aalho

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