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15/4/24

猫は鎹(かすがい)

Image by Olia Gozha





この写真は、私の実家で飼っていた猫です。


17年前、いつもお世話になっている動物病院から

「可愛い子猫ちゃんがいるんだけど

徳永さんところで飼わない?」とTELがあり


見に行った母が一目ぼれして持って帰ってきた

生後二か月頃の実家の猫です。



昨年秋、その実家の猫(16歳 ゴン)が


天国へ旅立ちました。





私の実家では、40年前に家を建てた時に


以前住んでいた団地の回りにいた野良猫を


父が無理やり車に乗せて


飼いはじめてからというもの


必ず猫がいる家庭でした。





我が家の猫は


代々、雑種


野良猫出身に決まっていました。





初代の猫の名前は「ひょろ」


(キジトラ白猫 雄)




近所でも親分格で


近所の「ピーター」と縄張り争いしている


男性性の強い猫でした。





怒ると、子供に対しても容赦なく


顔を引っかく狂暴な一面も有り




野良猫生活が長かったので


ちょっとハードボイルド


常に身体のどこかにキズを負っていました。





猫は死期が近づくと


飼い主の元を離れると言いますが


ひょろは突然家に帰って来なくなりました。




二代目は、「ていこ」


(キジトラ猫 雌)





元々、中学校のクラスで


飼われている子猫をもらいました。





これが超オテンバ娘で


雪の中でも駆けずり回って


穴を掘って遊んだり




蝉を捕まえる天才で


捕まえては、くわえたまま、網戸に張り付き




「どう?!、アタシまた捕まえたのよー!


すごいでしょ~!」




と、必ず捕まえた蝉をお家に持ち込み


そのたびに、母がパニックになりました。





初代の「ひょろ」が番長だったのに対し


「ていこ」はスケバンって感じ。





ていこは18年の長生きでした。





そして三代目は、「ゴン」





当時、日産の社長に


カルロスゴーン氏が就任して


話題になっていたので、……「ゴン」。





ゴーン氏とは、対称的に「ゴン」は、


非常に穏和で、近所の猫にケンカを売られても知らんぷり。


いつものほほんマイペース。





木登りが下手くそ


高いところから降りる時も


「ドスンっ!」と着地も下手くそ。





運動神経のやや鈍い猫でしたが




歴代の猫の中でも最も平和主義、


誰からも愛されるいいやつでした。





……そんないいやつが大往生を遂げました。


人間で換算すると82歳。(ちよっと早いか)







ちょうど娘の運動会のあった日に


車で母を迎えに行った時でした。




玄関から出てきた母が




「もうダメかもしれない……」




本当は家に上がらずに


すぐ母を乗せて運動会のグランドに


向かうつもりでしたが




一旦車のエンジンを止めて


ゴンの寝ている四角いベッドのある


台所まで、見に行きました。





一年前までは、体重が7kgありましたが


ここ半年で2kgにまで痩せ細った体を


丸くして、よだれを垂らしながら


半分目を開けて寝ていました。






「もう、死んじゃったのかしら……」




と母が言うと、お腹が一瞬膨れて、


息をするのがわかりました。





「大丈夫、今、息したよ」




「ねえ、ちょっとあんた抱っこしてあげてよ」




と言われた私は、


抱いたショックで死んでしまうのではないかと


ちょっと躊躇して、とりあえず


額の辺りと喉を撫でてみました。





すると、もう一度、大きく息をして、


少し伸びをしたような動きになり、


手足が少し痙攣しました。





そして、半分開いていた


目が閉じられました。





その後は、また動かなくなり、


目はまた半開き……。





ゴンの身体に耳をあてて


心臓の音を確認しようと思いましたが




……何も聴こえませんでした。




やっとの思いで、抱き上げてみましたが、


いつもフワフワの身体から


温度が無くなるのがわかりました。





肉球も冷たくなっている……。





私が実家に帰って来るのを


待っていてくれたかのような


最期でした。





「おお~、やっと来たか……


元気そうじゃん……


じゃ、 安心してあっち行くよ……


一緒に遊んでくれてありがとな~


じゃあな……」…………カクッ。




……てな感じだったと思いますが。






「子はかすがい」とは言いますが、




私の両親にとっては、


老夫婦の二人暮らしを送るの中で




「猫はかすがい」だったと思います。





父や母は


ゴンによくグチをこぼしていました。





「なあ~ゴン!聞いてくれよ~」




「ねえゴンちゃん、ひどいと思わない~?」





そんな両親のぐちをゴンは


顔はそっぽを向いてるけど


長いしっぽをフリフリしながら


イチイチ反応していました。





「ま、エサもらってるし、ちよっとは


聞いとかないとな……」




てな感じだったでしょうか。





私にとっても


不毛な独身時代を支えてくれてたのは


ゴンだったかもしれません。





夜中に意味もなくリビングで遊びました。





大好きだったウサギの毛でできた


パンダの腕人形を私が着けて


おいかけっこをするのです。





あまり運動神経の良い猫では


ありませんでしたが、


猫キックだけは秀逸。





パンダの腕人形でゴンの頭を鷲掴みにすると


ゴンは猫キックで応戦!!




「カッカッカッカッカッ!!」





寝るときは、私が寝ている布団の上、


私の首から胸当たりに身体を丸めて


ゴロゴロいいながらドスンと重い。





うちの奥さんに出会う前


私の携帯の待受はもちろんゴン!





携帯内の写真もゴンの写真ばっかり。





母に携帯の写真を見せた時があって




「ちょっとあんた、たまには彼女の写真とか


見せてよねえ~。ゴンしか写ってないじゃないの~」




と言われた記憶があります(汗。





私の独身時代を支えてくれたゴン!




老夫婦の絆を繋いでくれたゴン!




今までありがとう。





天国の「ひょろ」「ていこ」と一緒に


仲良く遊んでくれ!





ああ、もう一度ネコキック


してもらいたかったなあ~……。





今ごろになって




書いていたら涙が出てきました。


紙に書いてなくて良かった。


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