ふわりと風が吹き、
花びらがヒラヒラと
舞い落ちてきた
ふと、顔を上げると
青い空がピンクに染められていた
…
「もう春かー」
暖かくなってきた日差しと
少し冷たい風が心地いい
この季節は多くの人にとって
大きな変化がある
卒業、進学、上京、
就職、退職、異動、転勤、転職、
多くの別れを経て
新たな出会いがある
夢と希望を
胸に詰め込み、
書類と筆記用具を
カバンに詰め込み、
スコッティを
両鼻に詰め込んで
鼻水が垂れてくるのを
防いでいた
(この季節は花粉症の人にとっては
とても辛い )
それは私にとっても
例外ではなかった
思い切って上京してきたのが
今から2年前のことだ
…
…
…
私は1つの封筒を胸に潜ませていた
ドックン、ドックン、、ドックン
心臓の音がこんなに大きく聞こえたのは
いつ以来だろう
高校入試の時か、
就職面接の時か、
好きな人と見つめ合っている時か、
いや
好きな人に初めて
自分から告白した時以来だっただろうか
1日のデートを終えて
海が見えるベンチに座っていた
このまま時間が止まって
くれはしないだろうか
そんなベタなことを考えていた
告白するのか、しないのか?
迷っているうちに
別れの時間が近付いてくる
それと、同時に
心臓の鼓動も早まってくる
口から心臓が飛び出そう
という表現があるが
飛び出そうどころではない、
いや
おそらく、3センチほど
飛びだしていたに違いない
そう思ってしまうほど
私は緊張していた
その時と同じくらい
心臓がバクバクいっていた
…
「すみません!こっ、これ
受けっとってください!」
「ん?なにこれ?」
「ぼ、ぼく、会社辞めます!
だから退職届です!」
私はマネージャーに
退職届を差し出していた
「ちょ、ちょっ、ちょっ、
ちょっ、ちょっ、ちょと待て」
(なんともリズミカルな反応だった)
「どういう事か話を
聞かせてもらおうか」
「はい、実は
やりたい事が出来まして…」
…
…
最初は思いとどまるよう説得されたが
私は折れなかった
辞めるということを
決意していたからだ
いや、もちろん
仕事をやめるのは
かなり迷ったし
ドキドキどころか
ドッキンドッキンしたし
「このままの方が絶対楽だよなー」
と、思ったりもした
高校を卒業してすぐに就職した私は
社会というものをそこしか知らなかった
バイトもしたことがなかった
だから、辞めるのは本当に怖かった
5年間この会社で勉強してきたことも
せっかく苦労して取った専門的な資格も
無駄になってしまうし
安定した生活も
安定した収入も
全て捨てることになるからだ
でも、このまま
ここで働いたとしても
どうなるか想像がついてしまったし
給料がいいとか
安定した生活というのは
大事なことなんだと思うが
この時の私には当てはまらなかった
お金には全く困ってなかったし、
むしろ貯金もいっぱいあった
(というよりも
お金を使う趣味も遊びも全くなかったし
友達もほとんどいなかったから
勝手に溜まっていた)
しかし、
私は全く幸せを感じていなかった
楽しいこともない、
やりたいこともない、
友達もいない、
そんな自分にも嫌気がさしていたし
不平不満、陰口、悪口が垂れ流されている
環境にもうんざりしていた
何も変化がなく
毎日が同じことの繰り返し・・・
そう感じていた
そんな状況の時に
本をたくさん読んだり、
セミナーに行ったり
東京にも何度か行ったりして
”世の中には凄い人がたくさんいる”
ということを知ってしまったし、
(日本だけでも)
心から憧れられるような
大人と出会ってしまったのだ
だからこそ、
思い切って変えたいと思った
…
退職届を出す前に
何度か東京に出てきて下見をし、
すでに家を借りていた
これで辞めなかったらバカじゃん
という状況にした
じゃないと、行動できないと
思ったからだ
安定した生活も、
収入もなくなる
そして人脈もゼロ
そんな状況になると分かっていて
会社を辞められるだろうか?
いや、辞められないよ
普通は辞めないよ、笑
だから普通じゃない状況を作った
そして、会社を辞めた
今までなんとなく乗っかっていただけの
敷かれていたレールから
飛び降りた瞬間だった
ただ、上京してきたものの
何から始めればいいのか
分からなかった私は
そこから様々な経験をすることになる、、、
(つづく、、、)