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15/3/26

くま歩きが、脳の管理統制能力を育てる!?、という話 職人パパが、娘と難関私立小受験に挑戦した話 第6話

Image by Olia Gozha

「お受験」の運動能力を測る、基本項目に「くま歩き」

と呼ばれるものがある。

文字通り、くまのように、四足で歩くもの。


だけど、「ハイハイ」では、ない。

ひざをつくのではなく、足で歩く。


なので、やや、前のめりの体勢になる。

この、なかなか普段しない「くま歩き」。

これが、「お受験」の世界では、とても重要視されているらしい。





ある日の教室。

体操の時間。


いつもなら、

「スタートの場所で、ボールのドリブルを10回続けましょう。

それから、ボールを持って、ケンケンで、赤いコーンを右からまわって、

帰り道は、スキップでもどりましょう。」

というような指示を聞いて、

それを、ひとりづつ行う、サーキットトレーニングが多いのだが、

この日は、ちがった。



「この白い線にそって、横に並んでください。」

の声とともに、子どもたち10人くらいが、並ぶ。

補助の先生が、「間隔を開けましょうね」と

やさしく声をかけながら、1メートルくらいづつの間隔をとる。


「それでは、これから、くま歩きの競争をしますよ!

くま歩きは、こういう風に、足と手で、歩きます。

競争なので、できるだけ、速く、進んでいけるように

がんばってくださいね」

補助の先生は、「くま歩き」をやってみせる。



教室の後ろで、見ているママたちは、

「やったことある?」

「うちは、お兄ちゃんのときに、さんざんやったらから、

あの子も見ていて、いっしょにやっていたから、できると思うわ」

「そうなんだ。やったことないけど、まあ、だいじょうぶかしらね」

なんて、小さな声で、話している。




「それでは、よ~い、ドン!」


子どもたちは、一斉にスタート。

上手な子は、「歩く」というよりも、「走る」ように進む。

勢いあまって、顔から床につんのめる子もいる。


ちょっと不器用な子は、床ばかり見ている、曲がって進んでいることに気がつかず、

お隣の子に突進してぶつかり、泣いてしまったり。


あまり、やったことのない子は、前に進めず、

途中で、座り込んで、まわりをキョロキョロ。


ストップウォッチを見ながら先生が、やや曇った表情で話し始めた。

「くま歩きは、小学校受験での、

運動能力をみる基本です。


くま歩きが速い子は、

全身の筋力もバランスよく発達していて、
その動きもよいのです。


脳の管理統制能力を育てる、とも言われています。

そのため、小学校入学後の体育の時間にも、動きよく、学習ができると

言われています。


これは、練習をすれば、かなり速くなりますので、

ぜひ、おうちで、練習なさってください。


今回の、1等賞の○○君でも、25秒でした。

昨年、筑波に合格の男の子は、16秒でした。

慶應幼稚舎、早稲田実業合格の女の子は、14秒です。

まだまだ、練習の余地がありますので、

そのつもりで、毎日少しでも、

練習させてあげてください。」


後ろで見学中のママたちが
一斉に、「筑波男子、16秒」

「慶應幼稚舎、早稲田実業女子、14秒」と
メモをとる。


我が家のあ~ちゃんは、といえば、いちおうゴールまでは行ったが、

「合格!」のラインには、まだまだだ。

10秒以上、タイムを縮めなければならない。



その日の夕食で、「くま歩き」の話をパパにすると、

「明日から、毎朝、ろうかを、くま歩きで競争だ」と、はりきった。


翌朝から、ドタドタと、親子ぐまが歩く日々が始まった。

バランスがよいのか、パパは、顔からどさっと転ぶことが、

日に2度くらいあるが、あ~ちゃんは、転ぶことはない。

ただ、圧倒的に、体が大きく、勢いがあるので、

パパが勝つ。

大人げないくらいに、勝って喜ぶ。


寒い朝は、手も足も赤くなる。

暑い朝は、汗で手や足がすべる。


あ~ちゃんは、負けてムッとしながらも、

明日こそ!と、パパと競争を止めなかった。


受験本番まで、残すところ1週間。


とうとう、あ~ちゃんは、僅差で、パパに勝った。

喜びで、ぴょんぴょんと跳びはねるあ~ちゃんを

「よかったね~」と拍手しながら称えていたら、

隣で、

親ぐまは、四つんばいのまま、動かない。


「パパ~。負けたからって、泣いちゃ、ダメなんだよぉ」と、あ~ちゃん。

「ばか、ちがうんだ。うれしいんだよ」とパパ。

「負けたのに、うれしいの~?

・・・あ、わたしが速くなったのが、うれしいの?」



その後、教室での「くま歩き」競争で、

あ~ちゃんは、ぶっちぎりで1等賞をゲット。

「13秒! すごいわ。くま歩きは、合格ですよ」と先生。


教室からの帰り道、

あ~ちゃんは、「パパが、合格なんだよね~」と、ひと言。


「何かに情熱を注ぐこと自体が目的。

結果は、おまけみたいなもんだ」

というのが

15歳で中学を卒業、その道の師匠に弟子入り、

自分の腕一本で生きてきた、職人パパの口癖。


しかし、受験というのは、

結果こそが、すべての世界。

どんなに頑張ったとしても、運が悪く結果が出なかったら、

その努力に対して、肯定的になりにくいはず。

努力は、身についているものでは、あるけれど。


「ダメだったら」というネガティブな不安な気持ちを

つぶしていくには、圧倒的な努力しかないけれど、

受験する、小さな子どもには、そんな自覚もあるわけではない。


楽しい競争を、本人が楽しめるような状態につくっていくしかなくて、

それは、日々の「くま歩き競争@ろうか」という、地道な努力しかない。


本番前ということで、

いろんなことが、できるようになって喜んだり、

まだできないことに悩んだり、

一喜一憂の乱気流の中を飛んでいるような日々だった。















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