僕は父親が苦手だ。
嫌いなんじゃない、むしろ尊敬している。
だけど、父は僕が中学の時から単身赴任で
一緒に暮らしていなかったせいか、
ふたりきりの時に何を話せばいいのかわからなくなる。
父親が一生懸命家族の為に働いてくれたおかげで、
僕は何不自由なく生活し、大学にいき、
大手の会社にも就職することができた。
このまま父のようにサラリーマンとして
結婚して子どもを作り育てていくんだと
23歳の時にふと虚しくなったのを覚えている。
就職して2年、
25歳の時、本当にこのままでいいのか?
毎日考えるようになっていた。
父は本当に凄いと思っている。
家族の為に
【一緒に暮らす】
という大事な時間を捨てて、
僕達の為に頑張ってくれた。
でも、それを見てきたからこそ
そうはなりたくない。
感謝はしているけど、
やっぱり寂しかった。
近くにいて欲しかったし、
成人したらふたりでお酒を飲んだり
気さくに話せる仲でいたかった。
もし自分に子どもが出来て、
会社の都合で転勤があった時に
きっと僕は父と同じ選択をするだろう。
実際に自分が就職して雇われになり
父が悪いんじゃなく、
会社に雇用され続けるということ
雇われは自由が効かないことを知り
徐々に就職していることに疑問を感じ始めた。
3年目で退職しフリーランスに
入社して3年目の夏、
僕は会社を辞めた。
転職ではなくフリーランスとして生きる為に。
しかも両親には内緒で。
言うと絶対反対されると思ったからだ。
今考えたら親を信じて相談すればよかったと後悔している。
ここから数年間で
僕の人生は大きく変わることになる。
IT系の会社にいたこともあって、
手に職はあった為
なんとか生活できるくらいの毎日を送っていた。
ただ、正直就職していた方が
金銭的には楽だっただろう。
ただただ、不安になる夜が続いた。
数年後、さすがに親に
会社をやめたことがバレた・・・。
当然っちゃ当然だ。
良くあるドラマみたいな話で
会社に確認したら
『すでに退職されてます』
と人事の人に言われてという
典型的なパターン。
何の為に大学まで行かせたと思ってるんだ!?
これまたドラマであるような
よくあるセリフを言われてしまった。
ここからまた父との溝が深まった。
結婚して・・・
結局そのままぱっとしない日々が続く。
会社を辞めたものの本当によかったのかと
不安になることもあった。
心境の変化があったのは結婚してからだ。
自分一人の人生じゃないんだ。
そういう想いが徐々に出てきた。
ちょうどその時、
久々に父と会話する機会があって
こんなことを言われた。
『お前はまだ若いんだ。
いい加減に諦めて
就職したらどうだ?』
『嫁さんを本気で幸せにしてやろうと思っているのか!?』
正直、堪えた。
25歳で脱サラし、
7年間頑張ってきたけど
大した結果も出ていない。
むしろ金銭的にはサラリーマンを
やっていたほうがよかったのかもしれない。
ここで無難に就職して
なりたくなかったサラリーマンに戻るか
踏ん張って経営者でいつづけるのか?
人生のターニングポイントだった。
インターネット上で稼ぐ10歳年下の青年との出会い
人生を本気で変えたい。
そう思った時にネット上で
ある一人の青年と出会う。
彼はGoogleのアドセンスというサービスで
お金を稼いでいるというのだ。
正直怪しいと思った。
ただ、僕にはそんな余裕はなく
藁をもつかむ思いで彼に
教えて欲しいとコンサルを依頼する。
アドセンスで稼ぐ手法を日々教わり、
1ヶ月目から8万円、
3ヶ月で13万円、
半年後には62万円を稼ぐことになる。
その実績を使い、
2014年1月には月収100万円、
6月には1200万円を稼ぎ、
会社を設立することになった。
青年と出会って、僅か1年半の出来事だった。
父が・・・
会社を作ってオフィスを構える時
父親に保証人をお願いした。
その時に父に言われたことが
『今からがスタートだから、がんばれよ』
と、今まで言われなかった温かい言葉だった。
正直うれしかった。
法人化するのはある程度のお金と紙切れを提出するだけだが、
僕にとっては会社をつくることは
父から認められることだった。
今まで自分がやってきたことを
否定されたくない。
父に認められたい。
1つ誇れる実績が出来た。
お金を稼いだことよりも
何よりも父に認められたい自分がいることを知った。
自分より大きいと思っていた父が
気がつけば、白髪だらけで
ほっそりとした腕になっていることも最近気づいた。
今でもまだふたりきりだと
何を話していいのかわからなくなる時もあるけど、
今度、父とふたりでお酒を飲もう。
今まで話したかったけど
話せなかったことがたくさんあるから。


