社会学博士である上野千鶴子先生は、京都大学卒で、長年東京大学で教鞭を取り、名誉教授を歴任した。 女性活躍ネットワークの理事長でもある。
2012年に出版された「生き延びるための思想」の新版が、2021年に文庫本として出版された。
仙台訪問中、偶然本屋さんで手に入れ、旅行中の読書本として読んでいる。
以前、「お一人様」に関する、先生の著作を始めて読み、それが縁で、本屋に立ち寄った私は、自然と上野千鶴子先生の御本に手が伸びたようだ。
ジェンダーの問題は、私も女性の端くれであり、日本で私が育った1942年から1965年頃の日本社会でも、幾多の女性蔑視が存在していたのを、実際経験したので良く覚えている。
安保闘争中も、 男子学生同様、女子学生も闘争に積極的に参加した当時の学生は、もともと「日米安全保障条約に反対する。」と言う、政治的闘争であったが、政府側が学生運動を弾圧する事で、運動が過激化、中にはゲリラ的様相も呈しはじめた。
闘争手段、闘争目的などの違い等から、学生同士の戦いにまで進展したケースもあった。
男子学生と同等に戦う女子学生は、ジェンダーの問題に正面から対峙する事になった。
本来、生命を守る母性本能と、男女平等を歌い上げた結果、男子と同じように暴力も厭わない新しい女性像を求める運動家も出現、意見の対立が悪化していった。
米国においても、男女差別に対する戦いは長く続いている。 米国の男子の多くは、米国が世界中のあちらこちらで戦争を仕掛けると、愛国心に動かされ、兵役につく男子が多い。
一度兵士になり、何とか無事に任務を終了すると、GI Bill(退役軍人法)に基づき、授業料免除で大学に入れる権利を取得できた。
アメリカのNOW(全米女性組織)は、米国女性の地位向上の一環として、男子同様女子も軍に積極的に入隊する事を薦めた。
実際、NOWは「女子も軍人になれる道を開け」と、全国的抗議運動を展開した。
なぜなら、 運良く生き残れれば、男性軍人は任務終了後、大学の道が開かれ、公務員に積極的に採用される機会が増える。 それは低所得者層から中産階級への道が開かれる事でもあった。
「女性にもその道を広く開放してほしい」と言った、運動が功をなし、軍に志願するアメリカ女性の数が増え始めた。
その結果、新しい問題が浮かび上がった。米軍内での、強姦事件が増え始めた。
上野教授は、家庭内暴力も取り上げている。 特に日本女性は夫と比較して、収入面で格段の差がある場合が多く、離婚しても女性側は経済的自立が難しい分、 妻は例え家庭内暴力に直面しても、つよく自己主張も出来ず、泣き寝入りする場合が多い。
私は、自分の生い立ちから、自然と「女性は経済的自立をする事が重要だ。」と、割と若い頃から信じて、自分なりの努力をしてきた。
流石、学者である上野教授の分析は奥が深い。 フランス革命、アメリカの独立戦争等、歴史的にも過去を振り返り、ヨーロッパでも、アメリカでも女性が置かれていた社会的地位の低さを、文献を紐解きながら指摘している。
男女差問題も、人類が抱えている問題で、一人一人が目を大きく開いて、「知的先駆者の意見を拝聴、未来の世代の為にも、努力の値打ちがある課題だ。」と、思う。


