2011年に親父が死にました。
咽頭癌は回復に向かっていたのに酒飲み過ぎたらしく、玄関開けたらリビングで小便漏らして冷たくなって死んでた。
親父が火葬される時が一番悲しかった。嗚呼もう肌にも触れなくなるんだと。親父が入った棺はどこにでもある普通の棺だった。中国で大量生産されてるやつ。人間が最後に入る「自分の部屋」としてはあまりに無機質で寂しいなと思った。それから僕は、亡くなった人が生前に愛した趣味をモチーフにしたデザインだったり、残された家族の想いをメッセージとして刻み込んだ棺をセミオーダーメイドで作りたいと考えた。日本は高齢化社会で死亡人口が増えていくからビジネスとしても可能性があると思った。
関連業者とも打ち合わせしてすぐに棺を作れる状態だったけど、俺なんかが他人の死を扱う仕事はできないと思って躊躇していた矢先にジュンと亀有で飲んでて、「てっちゃん仕事どう?」と聞かれて「うーんいま考えてることあるけどやるか分からないから落ち着いたら話すよ」と濁した。その3日後にジュンが列車事故で死んだ。僕が最初に作った棺は親友の棺だった。ジュンの家族やキックボクシングの仲間が棺を見て泣いてくれたのを見て、自分はこの仕事をやるべきだと決心した。
それから数多くの棺を作った。遺族が泣いて喜んでくれたことも多々あった。だけど自分の作った棺が燃えて無くなってしまうことにどこか無常感を覚えて、永遠に残せるものを作りたいと思うようになった。
それで色々と調べてるうちに、人間やペットの遺骨にはリン酸カルシウムという成分が豊富に含まれていて、その成分が植物の三大栄養素であることが分かった。
遺骨から育てた花をマテリアルフラワーとして枯れない状態にしてからアクセサリーやフォトフレームなどの形見が作れたら素敵だなと思った。
いつも身近にあるし、墓みたいに継承者が必要とされたり維持管理もかからない。もちろん分骨して墓を持っている人も使える。
ちょっと突飛すぎるアイデアかなと思ったけど、僕自身が父親の葬式を経験して葬式自体に意味があるのかととても違和感があったし、それは死生観や宗教観に基づいて様々な考え方があって然るべきなんだけど、少なくとも現状では「葬式、墓、仏壇」みたいに死後の選択肢があまりに少ないと思ったので、もっと自由でいいんじゃないかと。最近は散骨とか樹木葬みたいに死後の扱い方が多様化してきているし、さらにその選択肢を増やす意味でも、遺骨から花を育てる葬送は実現したいと思った。
そのタイミングで家入一真さんと話す機会があって、その話をしたら一緒にやろうと。彼も現代の葬儀や死後の扱い方に違和感を感じていたから。それでスタートしたのがメメントモリという会社です。
先月の29日にウェブサイトを公開して、予想以上の反響があって驚いてます。問い合わせも数件きている。
僕自身はお坊さんみたいに決して他人に人生を諭せるような立派な人間ではないけど、これから死を迎えていく僕たちを含めた未来の世代に向けて、「死」という必ず訪れる出来事に対して、それぞれが望む形で、家族や親戚に反対されるわけではなく、自由に選択できる時代を作っていく一助になれたらいいなと思ってます。
<メメントモリのウェブサイト>
http://memori.jp
<ツイッターでの反響>
http://togetter.com/li/776075
白鳥哲也