キング牧師 (14)
「ルイジアナ州のバトンルージュで、以前、ジムソン牧師主導で、バス不乗り運動を実施した事があった。」
「その時は、個人所有の車の相乗り計画を実行した事を思い出した。」
「長距離電話をかけて、今回の我々のバス不乗り運動に関して意見を聞いた。」
期待通り、ジムソン牧師はバトンルージュでの経験談を詳しく話してくれた。 その内容は我々の運動にも、とても参考になるものであった。」
「タクシーのサービスが不可能になった場合の混乱を予期して、ジムソン牧師の意見を取り入れ、僕は我々の仲間に、即座に車の相乗り計画を練るように指示した。」
「幸運な事に大集会がその夜開かれた。 自家用車を所有している人々全てに、名前、電話番号と住所並びに運転可能な時間帯を教えてくれるよう懇願した。」
「それに対する反応はとても良かった。 150人以上の人々が、自主的に協力すると必要項目を用紙に記入してくれた。」
「仕事をしていない人は、一日中運転し続けますと言ってくれた。 また、仕事のある人は、仕事前と仕事が終了後の数時間運転しますと言った。」
「ほとんど全てのその場に出席していた牧師達は、一日中運転をする事に同意した。」
「金曜日の午後、僕が予想した通り、州の警察庁長官が、現法によると、タクシー運転手は法律で決められた料金である45セントを、お客から徴収すべきであると念を押した。 これに違反すると法律を犯した事になると公表した。」
「これで、安い値段でのタクシー利用計画は駄目になった。」
「即座に、我々は自家用車保持者の協力を得て、代替案に取り掛かった。自家用車の運転手は町中を走り始めた。」
「土曜日には、翌日の日曜日に、牧師達が全員教会の説教台から、もっと自家用車保持者のバランティアーを募る事を誓った。」
「反応はとても良かった。 車の数は急増して、300台に及んだ。」
「黒人の地域社会に沢山のパンフレットが配布された。 48ヶ所は下車する場所で、42ヶ所を乗車場所と指定した。」
「数日中に、この制度は驚くほど上手く稼働し始めた。 我々の抗議運動に反対する側も、奇跡のように規律正しく、人々の輸送を可能にしている努力に感嘆した。」
「白人の審議会も、貧しい人々がまるで軍隊のように正確に規則正しく行動している事実に驚きを隠せなかったのだ。」
「抗議運動中、例え車に乗れる可能性が生じても、自主的に歩いて行く事を選択した人々も多かった。」
「何故なら歩くと言う行為そのものが、象徴的に自分達の強い決意を表すものであったからだ。」
「ある日、高齢の女性が身体の痛みを我慢して辛そうにゆっくり歩道を歩いていた時、車が近づき、「おばあちゃん、お乗りください。」と言っても、「私は、ただ自分の為に歩いているのではないんだよ。 私の子供達、孫達、曽孫達の為に歩いているのだから、 歩き続けるよ。」 と、その高齢女性は歩き続けた。」
「バス不乗り運動は成功したが、州議会の面々やバス審議会の委員達は「どうせ長続きしないさとたかを括っていた。雨が降り始めれば、全員バスに飛び乗るだろう。」と、予測した。」
「ところが、雨の日が来たが、事態は変わらなかった。 バスは空車のままであった。」
「一方、州政府指導者とバス会社の重役達は交渉の余地があると言い始めた。 緊急特別委員会が開かれ交渉人12人が選出された。」
「僕はその代表者に選出された。 我々側は3つの項目を提案する事で賛成した。 この三つの提案は、あくまで一時的に社会の不条理と人々の不満を取り除くに過ぎなかった。」
「乗った順番に座るだけでは、究極的解決にはならないことも自覚していた。 最終的には、法律そのものを変える必要があったのだ。」
参考文献
自伝 マーティン ルター キング、J r.
編集者 クレイボーン カーソン