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人生の醍醐味 311キング牧師 12

Image by Olia Gozha


キング牧師  (12)


「自分は力不足であると言う考えに踏み潰されそうになった。  このような心配事で、あの貴重な20分の内既に5分間を無駄にしてしまった。」


「あるのは深い信仰だけであった。  人間がもともと持っている脆弱さを補ってあまりあるのは神に対する祈りだった。 神に必死に祈った。」  


「私の言葉は短く単純だった。  神よ、もう15分以下しかありません。  どうか僕の平常心を取り戻して、このような重要な時に、道義的指針を示し、僕と共にいてくださいと祈りを捧げた。」


「僕は演説の概略を準備し始めた。  この準備中、深刻なジレンマに落ちいてしまった。」 


「皆んながバス不乗り運動を続けたくなるような力強いスピーチを考える必要があったが、また、でもその熱心さが統制不可能にならず、キリスト教の精神に反さない範囲に留める必要もあった。」


「多くのアフリカ系アメリカ人は、長年社会の不条理にさらされてきた手前、気を付けないと、手の負えられない暴徒化する可能性も否定できない状況だった。」


「僕のスピーチで、彼らが積極的に社会の悪を是正しようと言う気持ちを削がず、それでいて恨みや憎しみの心を生じさせず、非暴力運動に始終するには、何をどのように言えば良いのだろう、と悩み抜いた。」


「中道中庸的考えと、皆んなの抗議運動を推奨するような内容を一回のスピーチに折り込むことが可能であるだろうかと悩み始めたのだ。」


「二つの矛盾する考え方をうまく織り込んだスピーチ内容をまとめ上げる努力をした。」


「自己を尊重すると言う重要な観点から、このバス不乗り運動が行われている事と、そしてこのような不正義を抗議もせずに野放しにすれば、各人の自尊心が歪められてしまい、しかも、神の御心にも背く事になる。」


「ただ、同時に、このような考え方と本来のキリスト教の根本原理である愛の重要さも織り込むスピーチにまとめ上げた。」 


「心の中で、スピーチの概略を作り上げた段階で、もう時間が来てしまった。  朝から何も食べていない状態で、夕食も抜き、コレッタに行ってくるよと言って車で教会に向かった。」  


「教会から5つ目の通り前辺りから、道路は混雑して身動きが取れないほどであった。  両側の車道が車で、延々と連なっていたのだ。」  


「教会は目の前であったが、15分もかけて車をのろのろと動かし続け、やっと教会内の牧師控室に到着した。」 


「バス不乗り運動に対する皆んなの熱気を十分感じ、不安感は解消していった。」


「まるで大きな津波のように、数千人の人々が教会に向かっていたのだ。」  


「教会は人々で混雑していた。 しばらくして、予定の時間を30分程遅れ、やっと司会者が教会の説教壇に立ち、集会が始まった。」   



「よく皆んなが知っているキリスト教徒よ前進せよと言う讃美歌を全員で歌った。」


「教会の外にも溢れている人々の大合唱は、まるで大きな山彦のように周りに広がった。」


「司会者が僕を紹介した。  僕は立ち上がり、説教台に立った。」


「テレビカメラのフラッシュが一斉にたかれた。群衆は沈黙した。」 


「演説原稿なしで、パーク夫人に起きた出来事を説明した。 そして市バス乗車の際に、長期に渡って黒人市民が受けてきた屈辱、貶めに関しても話た。」




どの社会にも不条理は存在するが、多くの場合「仕方が無い。」と、諦めてしまう場合が多い。


大勢の聴衆を動かす事も難しい。  万が一暴徒化すれば、死者の出る惨状に発展しかねない。  

権力側は軍隊を発動させる事も出来るし、警察官を出動させる事も容易だ。  


何とか平和理に、けれど力強く、社会の間違いを指摘、それを訂正させるために、 大勢の人々を巻き込んで抗議運動をして、徐々により良い社会を作りだす努力を怠らなかったのだ。  


後世の人々にも誇れる態度を維持して、社会悪削減に全力を投下した。 人種を超え、時代を超え誇らしい人間的行為であった。



 参考文献


自伝 マーティン ルター キング、Jr.

編集者 クレイボーン カーソン









 



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