キング牧師 (11)
「パーク夫人の逮捕には二つの意味合いがあった。」
「一つは黒人達に、積極的に行動しようと言う理由付けを与えた事で、二つ目は差別分離政策が正しいかどうかと言う問いでもあった。」
「一方、黒人社会のリーダー達は抗議の方向づけに関し色々と話し合った。」
「今までのところ、何とか自然に運動が盛り上がり始めてはいたが、リーダー達はここからはもっとはっきりした目的と方向性を示唆する必要があると考えた。」
「一方、リーダーの一人は午後3時頃、夜の大集会に関して話し合った。 リーダー同士の会合では、多数の人々がバス不乗り運動に参加した事実を前に、出席者全員がとても興奮して喜びに満ちていた。」
「でも、同時にリーダー達は、これからどの方向に我々は進むべきかを真剣に考慮する必要があった。」
「その場で、新しい委員会の組織を作る必要があるとあるリーダーが提案すると、みんなが一斉にその意見に賛同した。」
「ある人はニグロ市民審議会はどうかと提案したが、即座にその意見は、あまりにも白人市民審議会と名称が似ていると言う事で拒否された。」
「幾つかの意見が続いて出されたが、どれも否定されてしまった。」
「最後に、ラルフ アバナッティ氏が、モントゴメリー改善委員会(MIA. - Montgomery Improvement Association)と言う提案をしたところ、全員が賛同した。」
「次は委員選出であった。 即座にキング牧師が全員一致で委員長に選出された。」
「あまりにも早く決定がなされて、僕の心の準備もできていなかった。」
「万が一、十分考える時間を与えられていれば、 候補者になった段階で、候補を降りていたかもしれない。」
「全員が僕を委員に選出した主な理由は、多分僕は他所から越してきたある意味で新人で、まだこの地域で、どのグループとも深く関わっていなかったからかもしれない。」
「その日の朝7時以来、初めて自宅に帰った。 コッレタも、電話の応対等で忙しかった長い一日が終わり、自宅で寛いでいた。」
「お互いに、その日の出来事を話し合った後で、僕はちょっと躊躇しながら、コッレタがどんな反応を示すか予測も出来ず、実は僕は新しくできたモントゴメリー改善委員会の委員長に選出されたと話した。」
「僕は心配する必要はなかった。 当然であるが、コッレタはびっくりはしたようであったが、責任が僕の肩にたまたま降りかかったのだから、しっかりそれを受け止めるべきだと妻は言った。」
「これからは、家族内で二人で過ごす時間が今まで以上に少なくなる事に関しても、改めて指摘する必要はなかった。」
「その上、僕の新しい委員長という役割が、我々の家族に降りかかるであろう危険に関しても、コッレタは気にかけなかった。」
「知ってるでしょ。あなたがどんな事をするにせよ、私は支持していますよとコッレタは静かに言った。」
「書斎に入りドアを閉めた。 時間はどんどん過ぎた。 後20分で、僕にとって決定的に大事な演説をするための内容について心を巡らした。」
「急に僕は恐怖感に見舞われた。 時間はほとんどないのに、抗議運動の方向性と目的を明瞭にするような演説内容の準備をしなければならなかったのだ。」
「我々の仲間は、今までにないほど熱烈に不正に憤りを感じ、正義を実現したい気持ちになっていた。」
「また、新聞記者達やテレビカメラも来て、今回の抗議運動の新しい指導委員会の動向に注目している事実も知っていた。」
「僕の演説内容は録音され、記録され全国に発信される事も分かっていた。」
さぞかし、キング牧師はプレッシャーを感じた事だろう。 キング牧師の柔和な人柄、教育程度の高さ、人を惹きつける魅力等が、このような難題の指導者として、皆から推挙され、真剣に重要な演説の内容について熟慮した。
人類の多種多様な問題の解決の糸口を見つけるには、団結、適切な指導者を得て、弛まぬ努力をする事だろうが、これは言うに易く、実際に行動に移すのは容易ではない。
参考文献 マーティン ルター キング、Jr.
編集者 クレイボーン カーソン


